品格さまざま(56) | 俳句の里だより2

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国会議員の品格(9)

 

この「国会議員の品格」シリーズも先月(1月22日付ブログ)に続いて今回で9回目となる。それほどに国会議員の品格の悪さと言うか、品格の無さが世間を賑わしているが、最近特に目立ってきており、いい加減にして欲しいものだ。しかも、毎回取り上げているように、そのほとんどすべてが与党の自民党議員である。前回では、昨年末に発覚した自民党の5派閥による政治資金規正法違反(不記載・虚偽記入)疑惑、特に最大派閥である安倍派(清和会)や二階派(志師会)などによる巨額の裏金づくり疑惑について取り上げた。裏金づくり(政治資金規正法違反)というか、もはや巨額の脱税疑惑であり、東京地検特捜部は「証拠不十分」として彼ら全員を不起訴処分にしたが、それ以上に脱税疑惑が濃厚であり、こちらの容疑で立件し、起訴するように願っている。

 

ところで、今回の「裏金事件」と言えば、若い人の多くは知らないであろうが、我々古い世代の人間は約30年前に起こった「金丸事件」を思い出す。1992年8月の「朝日新聞」報道により、自民党の金丸信氏が東京佐川急便から5億円の闇献金を受け取っていたことが発覚したため、東京地検特捜部は金丸氏を政治資金規正法違反で略式起訴したが、金丸氏は事情聴取も逮捕もされず、東京簡易裁判所からの罰金20万円の略式命令を受けただけだった。何と「5億円の闇献金に対する刑罰がわずか罰金20万円」という決着に、東京地検は国民から凄まじい批判を受け、検察庁の表札に黄色いペンキがかけられた。それほど国民は検察に対して怒り心頭だったが、今回の東京地検の不起訴処分に対しても、多くの国民は怒り心頭であろうし、ペンキでは済まず、表札が破壊されるかもしれない。

 

それはともかくも、金丸氏は一方で、1987年から1989年にかけて約18億円余りの所得を隠し、約10億4千万円を脱税したことが発覚し、東京地検に脱税容疑で逮捕された。その途中の家宅捜査では、時価1千万円相当の「金の延べ棒」も発見され話題となった。東京地検では、これらは建設会社からの闇献金を金丸氏が個人的に蓄財したものが原資になっていると判断した。金丸氏は捜査段階では罪を認めていたが、保釈後は「政界再編のための資金」として無罪を主張し、刑事裁判を続けたが、体調が悪化したため公判を停止、その1週間後に金丸氏は死去したため公訴棄却となった。なお、東京国税局は、金丸氏の相続人に対して、1986年の約15億円の所得隠しと併せて総額33億円の所得隠しについて重加算税を含む約27億円を追徴課税した。5億円の闇献金では罰金20万円だったが、総額33億円の所得隠し(脱税)に対しては、27億円を追徴課税されたのである。

 

以上、長々と「金丸事件」について述べてきたが、約30年前にも今回と同様の自民党議員の「裏金事件」が起きており、検察(東京地検特捜部)は金丸氏が政治資金規正法違反を認めた(上申書の提出のみ)が事情聴取を行わなかったたため、国民の反発や怒りを招いた。今回の多くの自民党議員による派閥(組織ぐるみ)の「裏金づくり」に対して、検察は特に安倍派幹部などについては「証拠不十分」として逮捕や立件もせず不起訴処分にしたのである。ただ、金丸氏の場合には、その後東京国税局が金丸氏の妻が死亡した際に受け取った遺産が確定申告されていないという事実を突き止め、それをきっかけにして、東京地検特捜部が金丸氏と秘書を任意に呼び出して事情聴取を行い、脱税容疑での逮捕に結びついた。

 

今回の自民党議員による組織ぐるみの「裏金事件」についても、野党や国民からの非難を受けて、現在岸田首相を中心にした同じ仲間(自民党議員)による裏金調査(聞き取り調査、アンケート調査)が行われており、どの議員が裏金を行ったか、その裏金額がどれだけか、など調べているが、同じ穴の狢の「調査」であり、何の成果も得られないことは明白だ。単に形式的な「アリバイ作り」を行っているだけであり、従来通りの「虚偽報告」に終わり、全くの無駄な作業(証拠隠滅のための時間稼ぎ)である。そもそも、一番肝心な「裏金」の使途が全く調査されておらず、何の意味もない。また、その使途を話しても、ほとんどの場合は「虚偽報告(申告)」であり、馬鹿正直に「違法行為をした」など告白する者などいないのが目に見えている。

 

この自民党による調査と並行して、「裏金議員」の収支報告書の訂正が行われているが、「目的」「日付」「金額」「支出総額」などの記載欄に「不明」と訂正したまま総務省へ提出し、それを総務省が受理していることには呆れると同時に驚いた。しかも、これが萩生田前政調会長、高木前国対委員長など、いわゆる幹部と言われる議員だった。本来なら、訂正するのは、「不明」だったところを、明らかにして「正確に記述する」ことだが、彼らは脱税を恐れて「やばい記述」だったものをもみ消そうと「不明」に改悪したものであり、品格も品位も何もあったものじゃない。こんな人物が国会議員をやっているなどふざけた話であり、国民の風上にも置けない。即刻に辞職すべきであり、日本国民の恥である。

 

そもそも、収支報告書に「不明」など記載すれば、金銭の収支など誰にも分からない。また、使途や金額など分からなければ「脱税」かどうかも分からず、検察も逮捕・立件していいかどうか、それこそ「不明」である。まずは国税庁がこれらの「裏金議員」の事情聴取を行い、検察と協力して脱税かどうかを調査・捜査すべきであり、一般国民がこんなことをすれば即刻税務署に厳しく追及されることは必至である。こんな悪徳議員を絶対に許すべきではないし、むしろ国民の代表である国会議員が率先して正確に記述するのが当たり前である。もうすぐ「確定申告」が始まるが、だれもが真面目に申告することは無いであろうし、まさに「正直者は馬鹿を見る」だけだ。

 

この裏金事件に関しては、他にも、自民党の二階元幹事長が、在任期間の約5年間で50億円の政策活動費を受け取っていた(2020、21年の2年間では計10億7千万円)。国会で野党からその使途や残高など脱税ではないか、二階氏には確認したのかなどを追及されると、岸田首相は「法令に従って適切に使用されているものと認識している」と、電話でも何の確認もせず居直った。「二階氏はそんな違法なことをする人物ではなく、きっちりと法令を守る真面目人間だ」と信じているようだ。そんな「二階さんは仏様」のような話など、信じる者は岸田首相だけかもしれないが、もちろん岸田首相も本心は信じておらず、虚偽答弁であることは明白だ。二階派も裏金派閥であり、岸田氏もそんなこと分かり切っているが、それでも二階氏に聞いたり悪口を言えば、自分の首相の地位が危なくなるので言えない辛さが見え見えだ。二階氏も品格も何も無いが、それを擁護する岸田氏もそれ以上に品格に欠けた人物である。

 

それにしても、5年間で50億円の政策活動費の支出(消費)と言えば、1時間当たりに換算すると約10万円の消費になるという。それも毎日寝ることもせず、一日中1時間に10万円を政治・政策の活動費に使い、それも5年間1日も休まずに使い続けるというから、誰に何のためにすべて50億円を使ったのだろうかと非常に興味深い。ぜひとも二階氏に聞いてみたいが、どうも二階氏は人に話すことは無さそうだ。新築の家を購入すると目立ってしまい貴金属・宝石も、絵画なども目立ちそうだ。それとも他の議員や地元の支援者・有権者にカネをばらまくのもバレると怖いのでやりそうもない。会食なども朝から晩まで毎日240万円消費するのも健康のために良くないようだ。ということは、相当の大金が金庫の中に眠っている可能性が一番高そうだ。すると先に述べた「金丸事件」になってしまうが、大丈夫だろうか。

 

この二階氏について、面白いことに代表を務める政治団体が3年間で約3500万円の書籍代を支出していることが収支報告書で分かった。これに対して「図書館を丸々買ったのか」「図書館の図書購入費くらいですね。その読書家ぶりに驚きを禁じ得ません」「自分の本代は一生で3500円くらいだ」「どんな読書家が一生かけても読み切らない」などのコメントがSNSで飛び交っており、国会では野党が「家一軒建つくらいの書籍代が支出された。いったい何万冊が購入されたのか」と説明を求めた。これを聞いて二階氏は今頃必至で購入した図書を寝る間も惜しんで読んでいるのであろうか。また、どのような図書を購入したか非常に興味深いものがあるが、亡くなるまでにどこまで読み尽すことが出来るのであろうか。

 

ともかくも、これだけ「裏金議員」がはびこっているのは、今の政治資金規正法などが「ザル法」であり、かつ目的がウソでもいいから「政治・政策のため」と言えば、私用であろうが私物であろうが、何にでも使えるという「便利なカネ」であり(岸田首相に言わせば「政治活動の自由」)、それを使う国会議員は真面目で私用・私物には絶対に使用しないという「性善説」に立っているからである。そんなことがあり得ないことは、これまでの歴史を見ても明らかであるにもかかわらず、特に政権与党の自民党議員は現在の「ザル法」を頑固に死守し、議員の首を絞める法令改正に反対しているのである。こんなことが続けば、永久にこの裏金議員は存在し続け、裏金問題(政治とカネ問題)は無くならないであろう。

 

政治資金パーティー、政策活動費、官房機密費、旧文通費など、政治家が領収書無しで何にでも使える「使途不明金」「闇金」を完全に廃止するか、もしくは残すとしてもすべて領収書を必須とし、金を収支を国民に明らかにすることである。人間は、特に政治家は「性善(説)」などあり得ないし、悲しいかな、むしろ必ず悪いことをする「性悪(説)」として法律を厳しくするしかない。