第93回ネット句会は、42名の参加となり、205句の投句を頂きました。

 



【講師選】
【永田満徳】
【特選】1句
36 よりによつてけふの告白万愚説   秋子1
 ※「万愚説」はおもしろい季語で、4月1日は嘘をついても許される日という。差し障りがない嘘はいくらついてもいいという考えである。
「告白」が「万愚説」であったために、その「告白」がほんとうなのかどうかを疑っているのである。「よりによつて」という言葉が実におもしろくおかしく使われている。

【並選】4句
3 あたたかやひと匙づつの介護食   ちはる5
62 春雨や舞妓はぽんと蛇の目傘    龍野ひ4
112 三四度ふるふると鷹鳩に化す   かつじ4
162 春野菜百円ぽんと缶の中     しどみ4


【歌代美遥】
【特選】1句
148 小流れの伸び縮みせり花筏    滿5

 ※ 川は流れる。流れゆく水はもう戻らない。その川の流れに、散った花びらを連ねて筏の様にゆったりと流れていく。伸び縮みとあるので、せめて花屑の運命でも、艶やかにむしろ妖しいほどの華やぎを、風雨に散らされ光を失うことなど打ち消し、精一杯の桃色を匂うばかりに桃色を演じていく作者の自由な生き方を、垣間見た思いの句である。

【並選】4句
1 「送迎」の灯ばかり過ぎる春の雨    慢鱚3
36 よりによつてけふの告白万愚説   秋子1
64   海に出て貝となりたる花筏       房子2
141  春雨や気の向くままの途中下車     しどみ1

 

【互選三賞】
(天賞)  該当なし

地賞  10点  2句)
3    あたたかやひと匙づつの介護食    ちはる5
 *暖かくなって介護する側にもされる側にも、穏やかであたたかな時間なのだろう~と思えました。(とも子)

36    よりによつてけふの告白万愚説    秋子1
 *「よりによつて」が良い。四月一日に受けた愛の告白が本気なのかどうか、戸惑っているというドラマが読み取れる。(直)

人賞  9点  1句)
62    春雨や舞妓はぽんと蛇の目傘    龍野ひ4
 *美しく情景が絵のように浮かびます。ぽん、という表現がアクセントに感じました。(やすこ)
 *情緒豊かなおしゃれな句です。(秋穂)


(8点句  1句)
75    見返りを求めぬ和平四月馬鹿    慢鱚2
 *和平を四月馬鹿と言わざるを得ない状況が切ない(寒太郎)
 *利他の精神はどこへ?(らら)
 *国益のない条約は結ばないものです。(良月)
(7点句  
160    川の名を変へて海へと花筏    龍野ひ2
 *物語り性があって良いと思いました。(寛昭)
 * 支流が本流に合流する光景が花筏を介して表現されている(音思)


(6点句  2句)
13    さよならは言はぬ約束花筏    一葉5
 *花筏に委ねた詠み手の切ない心情。共感せざるを得ない。(浮游子)


56    花筏惜しまれながら去る職場    良月4
 *惜しまれながら職場を去り次の人生の旅と、   花が惜しまれながら流れていく旅が響き合う。(みちを)
 *桜の花が散る時期、転勤の辞令が出たのか。人望厚かったのでしょう。惜しまれるうちが花。(正則)

64    海に出て貝となりたる花筏    房子2
 *メルヘンである。花筏の花びらがなる貝は、さくら貝だろうか。花筏が海に出たら貝になるという発想は、季語の「菜の花蝶に化す」を彷彿させ、春という季節をとても良く表していると思う。(昼顔)

76    丸文字のかしこの結び花の雨     雅美1
 *現代的な丸文字と古風なかしこの対比が面白い(龍野ひ)
136    缶蹴りの鬼の消えたる春の宵     祐4

(5点句  3句)
46    春雨や真空管のほのあかり      寛昭5
106    菜の花やスプーンの月に皿の雲    音思5
 *スプーンのような月と皿のような雲に見立てた駘蕩な春の雰囲気が良いです。(慢鱚)
148    小流れの伸び縮みせり花筏      滿5


(4点句  7句)
9    およぎ来て鯉の吸い込む花筏      栄太郎3
115    四月馬鹿マトリョーシカは多産系    一葉3
123    四月馬鹿雨に剥がれし付け睫毛    龍野ひ1
 *雨に?がれる付け睫毛。四月馬鹿と言う季語との相性がいいと思いました。(順一)

141    春雨や気の向くままの途中下車    しどみ1
 *目的もなくなんとなくついたところで降りるのもいいと思います(梢楓)
162    春野菜百円ぽんと缶の中       しどみ4
 *田舎の無人販売所。音であり、いい買い物をした明るい気持ちのオノマトペがいい。(夜亜舎)

170    大正の玻璃の歪みや春の雨      昼顔2
 *春雨に煙る大正時代の洋館が浮かびます。(正人)
188    風吹けば銀河の如く花筏        一路2

(3点句  13句)
16    スプーンに映りて瞑き朧月      直5
25    ピクニックドロップ缶の固き蓋    長谷川ひ4
42    河原では薬缶で回す花見酒      祐2
 *気取らない昭和の景が浮かびました。
ご近所さんが集い和気藹々とお花見をしているのでしょうか..(ちはる)
78    泣き顔のやうなかたちに花筏     秋子4
 *形を変えながら流れる花筏の写生が素晴らしい(満)
114    四月馬鹿ピアノの中に猫住まふ    明寿2
 *「ピアノの中に猫住まふ」という基底部は、実際にはあり得ない事が詠まれて、誇張的で、俳諧的です。
この基底部と「四月馬鹿」という季語の取り合わせが面白く、読者の注意を引っ掛けるわけですね。お句全体はユーモラスが溢れて、読者を笑わせるわけですね。(亜仁子)
138    春雨に烟る神島熊楠よ        らら1
 *個人的にも熊楠ファンであるが、「熊楠よ」の呼びかけが上手い(房子)
149    新札を受けぬ自販機四月馬鹿      寛昭3

154    春雨にけぶる遠山夕烏        正人1
 *「春の雨」の句も多く見られたが、季語「春雨」の芽吹き時にやさしくふる雨の情緒を上手く表した句。春雨にけぶる山々に聞こえる夕烏に哀愁を感じた。(祐()
181    濡れて行く古都の旅人春の雨      一路5
 *作者はきつと雨模様でも古都の風情美しさ等感じたのでしようか(孝人)
186    鰭立てて鯉の切り行く花筏       ちはる4
195    幼児が缶に入れんと春夕焼      寒太郎4
 *自然と一体化している詩的な風景。(姫)
201    儚きはひとの生き死に花筏      秋子2


(2点句  28句)
1    「送迎」の灯ばかり過ぎる春の雨    慢鱚3
4    あちこちに色んな仕事春の雨      良月3
 *雨の中求人チラシが掲示板や電柱に貼られている景が浮かぶ。遠景にはスーツや店の売り子などもいる。(明寿)
5    イヤフォーンを外す軒下春の雨    浮游子1
8    エイプリルフールっていつ四月馬鹿    杳杳2
17    たひらにと鈴緒ふるふる仏生会    みちを5
 *ふるふると言う難しい兼題を上手く詠み込み、時勢句としても素晴らしい句になったと思います。(一路)

18    ドコモドア開け方知らぬ四月馬鹿    かつじ1
22    トランプはジョーカーばかり四月馬鹿    栄太郎2
31    花筏いく千人の小人乗せ        和3
47    春雨や店の明かりの石畳        隆司1
65    海までの急がぬ旅よ花筏        龍野ひ3

83    空缶に五円を貯めて遍路かな      杳杳5
86    空缶の転がる音や別れ霜        隆司4
96    缶ふれば春の音するドロツプス    祐5
97    月面の空気の缶や四月馬鹿      慢鱚5
99    警察官名乗る電話や四月馬鹿      正則2
 *警察官は取り調べや犯罪関係の問い合わせを、電話で行う事はなく、今や詐欺電話であると世の中に浸透して来ている。
それでも、警察を名乗って電話を行う輩がおります。(栄太郎)

111    春雨や女の耳朶の艶めく夜      祐1
112    三四度ふるふると鷹鳩に化す      かつじ4
118    缶蹴りのあそびキリなき遅日かな    栄太郎4
119    春雨の染みて退職辞令かな      無弦奏1
130    自販機に銭をせかされ四月馬鹿    無弦奏2

133    春の雨スプーンで刮ぐ鍋の焦げ    正人5
 *地味ですが景がしっかり書けていて、実感のある句です。(雅美)
137    春雨に無人の隣家庭広く        とも子5
 *春は異動のシーズン。それに伴い空き家になった隣の家。(長谷川ひ)
飾っていたものがなくなった庭は広く感じてむなしい。
153    清流の流れに乗れぬ花筏        しどみ3
 *現実の社会、会社もそうですね。厳しい。(かつじ)
そんな思いをより一層感じさせる冷たい春の雨である。(
158    青天を映す疎水や花筏        音思3
 *疎水であればの情景がしっかりと描かれている。(隆司)
173    遅れじと歩を合はす傘春の雨      一葉1
175    鳥曇缶蹴りの鬼鼻拭いて        明寿4
 *一気にノスタルジックな世界に浸れました。鼻拭いてるけど、すごくカッコいい男子。鳥曇という季語も効いていると思います。(秋子)

187    大小の計量スプーンうららけし    雅美5
 *親子で料理、楽しい時間を想像できました。(杳杳)
197    里山に次の装ひ春の雨        ちはる2
202    灌仏の朝スプーンの端曇る      明寿5
 *仏生会の朝、スプーンの端が曇った。作者は何らかの予兆を感じたのである。これは、4月8日だったからなのである。「灌仏の朝(あした)」と「スプーンの端曇る」の二物衝突。明と暗のうまい対比である。また、スプーンと灌仏の取り合わせも成功していると思います。(無弦奏)


(1点句  44句)
6    うららかや猫の顔なる缶バッチ    正則4
12    かけちがふジョークのボタン万愚節    みちを2
19    ドラム缶風呂が沸いている春銀河    梢楓5
21    四月馬鹿私はタイムトラベラー    和2
23    はちみつを垂らすスプーン朧の夜    昼顔5

26    ひょうきんな父の仕草や四月馬鹿    秋穂3
28    ふるふるとタピオカの食感桜花降る    姫5
30    ふるふると水風船で遊びけり      倫5
33    スプーンに歪む吾が顔四月馬鹿    正則5
38    嘘替へと鷽替へ神事四月馬鹿      正人2

39    黄沙ふるフルスペックの高級車    一路4
44    花筏下流へ向かう開拓道         梢楓4
50    スプ―ンの曲がりしあの日花の冷え 栄太郎5
52    スプーンの先まで春の日曜日      杳杳4
53    花筏行き着く先は彼岸かな      姫1

57    ふるふると夢の苦みへ蝿生まる    夜亜舎1
66    缶コーヒーサンドイッチの花見旅    らら4
68    缶に入れオタマジャクシのうごめきや    倫3
70    ふわふわの子猫を胸に抱かさるる    房子5
91    春雨や傘無しが粋と南国人      姫3

92    春雨や枝垂れて伝ふ色しづく     祐3
101    行く舟の水脈に裂かるる花筏      正人3
103    空缶を蹴りつつ下校花菜道      一路3
104    行先はあなたまかせよ花筏      かつじ2
105    降りさうで降らぬぞ四月馬鹿の空    無弦奏3

107    桜散るまへの花びらふるふると    満徳3
108    桜蕊ふるふる花嫁花婿に        ちはる3
113    四月馬鹿いまだ変わらぬお人好    しどみ2
125    四月馬鹿明日こそNOと言ふつもり    ちはる1
127    花筏流れぬ水路に落ちて居る      順一3

129    四月馬鹿自分の嘘に傷つきぬ     夜亜舎2
134    春の宵灯すスプーンのブランデー    長谷川ひ5
135    春の風邪ももの缶詰添へらるる    房子
144    春満月ふるふるふると昇り来る    直4
145    春夕焼けふわふわの雲染めながら    房子1

146    春落ち葉ふるふるふるふる文庫本    梢楓1
151    神様の恵みに休む花筏        亜仁子4
157    青空が広がっている四月馬鹿      梢楓3
165    川底に翳り率ゐて花筏        昼顔1
166    全粥をスプーンですする春霞      良月2

171    短針と長針揃う四月馬鹿        雅美2
178    南国でダウン買い足す四月馬鹿    姫4
194    野遊びやドロップ缶振る小さき手    一葉4
198    流れ読みすり寄るやうに花筏      みちを3

(以上)

【個人別 高得点者】(合計点ーー入選句数)

龍野ひ1    22点  4句
ちはる1    17点  5句
秋子1     16点  3句
祐1      14点  5句
一葉1     13点  4句
慢鱚1      12点  3句

しどみ1    10点  4句
一路1     9点  4句
栄太郎1    9点  4句
雅美1     9点  3句
房子      9点  4句
良月1     9点  3句

(以上)


ご健吟の皆さん、おめでとうございます。


(今回の参加者42名)(順不同、敬称略)

永田満徳、歌代美遥(講師選)、石川順一、、遠藤千代子/倫、浮游子、
姫(三高 邦子)、とばやまちはる、小倉正人、江口秋子、上野梢楓、
熊谷房子、寺嶋法子/杳杳、祐(牧内登志雄)、佐竹康志(夜亜舎)、桑本栄太郎
小保方国秀(無弦奏)、立野音思、高山やすこ、本田しどみ、野島正則、長谷川ひろし、中村秋穂、岩永靜代(昼顔)、岩根泰彦(寒太郎)、今村とも子、
武藤隆司、藤澤迪夫(みちを)、山下明寿、美空らら、大津留 直
辻井市郎(一路)、いわきりかつじ、森川雅美、龍野ひろし、滿/杉山満、慢鱚、ささき良月、亜仁子、古閑寛昭、有村孝人、
遠藤千代子(倫)、北野和良