立つ鳥跡を濁しきる | 経済あらかると

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 黒田日銀執行部最後の決定会合が終わりました。アベノミクスのもとで10年間、ひたすら大規模緩和を続け、580兆円もの国債を保有し、730兆円余りに資産を拡大して身動き取れない形にしました。その後始末をしないまま、悪性の輸入インフレを将来してもまだ不十分としてこれも放置しました。

 

 日銀は植田新体制が決まりました。この巨大な負の遺産を受け継いで、インフレに対処しなければならなくなりました。自ら巨大なリスク資産を抱える日銀は、わずかな市場金利上昇(国債価格下落)でも巨大な含み損を抱え、政策金利を引き上げれば0.25%の利上げごとに1兆円以上の付利コストを余儀なくされます。

 

 流動性を吸収するために国債やETFを売却すれば、市場を不安定にし、自ら損失を抱えます。3兆数千億円の自己資本しかない中で、兆円単位の金利コスト、売却損の懸念があります。

 

 大規模緩和を進めていた当時、リフレ派の幹部は、異次元緩和が将来悪いインフレをもたらすとの声に対して、インフレになれば対処する手段はいくらでもあるので、インフレを心配する必要は全くないと言い切りました。しかし今日の日銀はリスク資産が大きくなりすぎて、金融引き締めが自らの首を絞めることになり、利上げにも躊躇する事態に追い込まれています。甘すぎる認識に反省はあるのでしょうか。

 

 市場もこの異常な緩和がしみ込んでいて、大規模緩和を前提とした相場維持に頼り切っています。これも日銀の緩和修正、引き締め転換を躊躇させる要因になっています。

 

 プールの中に巨大なクジラが入り込んで、水(流動性)があふれ出てしまい、市場が事実上枯渇し、死んでしまいました。それを次の執行部に投げ出すのはあまりに無責任です。金融政策の限界を無視した傲慢な姿勢が、日銀を恐竜症にし、市場の信認も失うことになりました。この10年の失敗を無駄にしてはいけません。