日銀は資源高の景気圧迫を懸念 | 経済あらかると

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 日銀は本日、今月17,18日開催の決定会合について、その「主な意見」を公開しました。これによると、ウクライナ戦争がもたらす資源高が消費を圧迫する点を重視、企業がコストを転嫁できるよう、緩和持続で内需拡大を図る必要性を強調していました。

 

 景気についてはコロナ感染の改善による回復効果を期待する一方、ウクライナ戦争が資源高をもたらし、不確実性をもたらしているとしています。その中で、資源高により交易利得が2008年並みに悪化する可能性を指摘する声がありました。それでも、これまでの「強制貯蓄」が今後消費を下支えするので、2008年より状況はよいと見ています。

 

 そして資源高、FRBなど中銀の引き締め、ウクライナ戦争などは景気の下振れ圧力とみています。そして年金基金が低金利の中で債券から株などリスク資産に振り向けている中で、ウクライナ戦争で資産価格が大きく下落すれば、年金への影響は避けられないとの懸念も提示されました。

 

 物価はエネルギーを主因に、4月以降当面は2%程度に高まるとしても、年後半には資源価格が下落すると、物価にも下振れ要因となるとの懸念が見られました。また企業のコスト高を価格転嫁する動きが広がっているとの指摘がある一方、コスト高を製品価格に十分転嫁できない面もあり、それは内需の回復が不十分で、価格転嫁を困難にするマクロ経済が続いていることを示している、とし、価格転嫁が進むような経済の拡大を目指すべき、としています。

 持続的な価格上昇には、賃上げによる購買力の上昇が不可欠とし、賃上げできるような経済を目指すべきとしています。

 

 これらを見ると、資源高(物価高)と景気圧迫が同時進行するスタグフレーションについては、景気を優先し、物価を上げることを重視しています。かつての石油ショック時に、日本はインフレ抑制を優先したのと大きく異なります。そして景気支援のための緩和が円安を通じて輸入物価(コスト)を押し上げるとの発想がどこにも見られません。そもそも資源価格上昇の要因が中銀による大規模な流動性供給にある、との認識も欠如しています。日銀にはもっと広い視野から分析してほしいと思います。