決定力に欠ける欧米の対ロシア制裁 | 経済あらかると

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 ロシアが昨日ウクライナ東部のドネツク、ルガンスクの2つの独立を承認し、当地に平和維持のためにロシア軍を派遣することを決めたことに対し、欧米が協議の上、それぞれに対ロシア経済制裁策を提示しました。

 

 市場はバイデン大統領が制裁措置の第一弾を発表した後、株式市場が約1%下落しましたが、当初指摘されていたロシアの銀行を決済システム(SWIFT)から全面排除することは避け、政府系銀行など2行にとどめ、あとはロシアが西側諸国でのソブリン調達ができないようにしました。

 

 欧州もドイツはロシアからの天然ガスを送るパイプライン、ノルドストリーム2の承認を停止し、英国はロシアの5銀行ならびにプーチン大統領に近い特権階級3人に制裁を科すといい、EUもロシアの27の個人、団体や、銀行や国防セクターに制裁を科すと述べました。

 

 これらはロシア経済に決定的な打撃を与えるものではなく、実際ロシアのラブロフ外相もこれらは全く影響ないと無視しました。

 

 バイデン大統領は今後ロシアがさらに軍事侵攻を広める場合には追加制裁を科すといい、まだカードが残されていることを示唆しましたが、いきなり金融市場での「原爆実験」を行うにはリスクが大きいと判断し、今回はそれをちらつかせるだけで様子を見ましたが、ロシアにどれだけ制裁効果があるのか、市場には懐疑的な見方も少なくありません。

 

 ロシアには原油高が追い風になり、外貨準備もドルからユーロにシフトし、対外債務も減らしているので、欧州の制裁が限定的なら、今回の制裁は致命傷にはならないようです。あとは、2008年のように国際資本が動いて原油価格が急落するような事態が再現されるのかにも注目されます。天然ガスの販路を失い、原油価格が暴落すれば、ロシア経済はより大きな打撃を受けます。