栃木県幼稚園連合会 青年部さま オンライン園庭研修 ご質問と回答1 | 心と体と学びをはぐくむ園庭を

心と体と学びをはぐくむ園庭を

幼稚園 保育所 認定こども園の園庭を、子どもが伸びやかに豊かな育つ場所にしませんか?

こんにちは、園庭研究所の石田です。

 

栃木県幼稚園連合会 青年部さんでのオンライン園庭研修の続きです。

 

先生方からは、園庭を考える際に大切な視点となりご質問を頂きましたので、ご紹介したいと思います。

 

  • 私がうれしかったのは、グループ内で子どもの頃の外での思い出が、年代も近いこともあり、共通の体験をしていたことが多かったこと。

     

  • 昔と今では外の環境が大きく変わっていて、今は昔のような体験がしづらくなっていること。課題としては、そういった体験ができるような環境を整えていくこと。

 

(お返事) 今回お話し切れていなかったかもしれないのですが、子どもの屋外環境(園庭や地域環境)を考える際に最も重要なことの一つが、大人が自身の子どもの頃をその時の気持ちと共に思い出すことだと私は考えています。合わせて、その体験が自分の育ちにとってどういった意味があったのかを考えることも。

 

残念なことに大人は、子どもの頃の経験やその時の思いを忘れて、大人の視点からの規範等に意識が向きがちになり、時には子どもの経験や育ちを阻害してしまうこともあります。そのため、まずは大人自身が、自分の子どもの頃を思い出すことがとても大切になって来ます。

 

子どもの頃の外での体験は、年代によっても地域によっても様々です。世代を超えて共通している遊びもあれば、異なるものもあるでしょう。そうした中で、園内や、今回のように地域の中で子どもの頃の外での思い出を共有していくことで、遊びや環境のアイディアの宝庫になります。是非、園の先生方とや保護者の方と「子どもの頃の外での思い出インタビューゲーム」をして頂ければと思います。

 

そしてお話したかもしれませんが、園庭など子どもの屋外環境を考える際には、目新しい/凝ったデザインをする必要はなく、私たちがずーっと昔から遊んで来た遊びや環境を受け継いでいくことが、子どもの育ちにとって何より大切なのだと私は思います。(目新しい/凝ったデザインはお好みで。)

 

 

  • 園庭と室内とのつなぎについて。室内だけ外だけではない保育の展開についての工夫。

 

(お返事)園庭と室内のつながりも、子どもたちが外に関心を持ったり、五感をはぐくむ上でぜひ考慮したい環境です。

 

特に3歳未満児においては、窓からの眺めや室内にいながら外の様子を感じられる設え(未満児さんが見える高さの窓、光や風を活かした窓際の飾りや玩具、ベランダに植物など)が園庭環境での工夫として全国調査で多く挙げられていました。

 

また、年齢にかかわらずデッキやテラスといった室内外の中間領域があると、室内履きのまま外を楽しめたり、内と外の交流地点となります。できれば、おやつを食べたり室内遊びもできるくらいのゆったりした広さがあるデッキやテラス、縁側があると良いかと思います。

 

また保育室からの眺めも配慮して、園庭の植栽(位置や種類)を考えられると良いかと思います。四季折々に変化する植物や風になびいたり光をキラキラ反射させる植物が室内から見えるだけでも子どもも大人も五感で楽しめ、おすすめです。

 

写真は、東京都なおび幼稚園さん。室内からの景色はとても美しく、四季折々に楽しめます。

 

  • 発達の遅れが見られる自園の園児のなかに、水や土(砂)などに一切触れたくない(汚れなどをとても気にする。皮膚感覚が過敏な子がいます。そういった子にも自然と触れ合っていってほしいと思うのですが、面白さや楽しさに気づかせていくようなアプローチ等の方法(手段)がもしあれば教えていただきたく思います。

 

(お返事) 感覚の敏感さがあるお子さんの場合は無理強いせずに、その子が好む環境で十分に遊ぶことを大切にして頂ければと思います。

 

もしかしたら水や砂に触れることは嫌(触覚の敏感さ)でも、水の波紋を眺めたり、雨の音や葉が風に擦れ合う音を聞くことは好きかもしれません。

 

自然については、見る・触れる・味わう・聴く・嗅ぐと様々な方法で楽しむことができるので、是非その子が楽しめる方法を、その子の様子をじっくり見ながら、また先生自身も五感を研ぎ澄ましながら、一緒に探して頂ければと思います。

 

 

  • 理想としては園庭を「森」のようにしたいと考えているが、やはり一年にたった1日数時間のためとはいえ、運動会やそれに向けた練習、サッカー教室などにはある程度のスペースが必要であり、既存の園庭の形を変えるには時間と労力が掛かると感じた。

 

(お返事)園庭研修をこれまで多くさせて頂いて来ましたが、結果として「やはり日々よりも園行事を優先して」となった先生にも園にも出会ったことがありません。逆に、日々子どもたちに接している保育者の先生方は、行事よりも日々を大切にしたいと願われているのに、園長・理事長など園のリーダーが「行事優先」としてしまい、先生方が悩むという状況には出会います。

 

これは裏返すと、園長・理事長など園のリーダーの方が「行事は園外(地域の運動施設や公園など)で行い、園庭は日々楽しめる環境にしよう」と決断されると園庭環境や園庭での保育が変わっていくことが多いです。(園庭調査でも、リーダーが園庭環境改善を決断したことから、園庭環境や園庭での保育がより良い方向へ動き出す傾向が見られました。)

 

また、ぜひ園内で先生方や保護者の方と「子どもの頃の外での思い出インタビューゲーム」をして頂ければと思います。子どもの頃の経験とその時の気持ちを思い出しながら、今目の前の子ども達のためにどんな環境が大切なのかを皆さんで一緒に話し合っていただければと思います。

 

合わせて、運動会やその練習、サッカー教室についても、代替の方法を考えて行かれると良いかと思います。地域の中の別の場所を利用する、園庭環境を生かした行事内容を工夫する、など。森の中での運動会も、サッカー練習も良いかもしれません。

 

(続きます。^^)

 

園庭研究所 代表 石田佳織

お問い合わせ: 電話:080-2381-8611  /  メールを送る

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【園庭や幼児と自然のについての著書】

『園庭を豊かな育ちの場に:質向上のためのヒントと事例』

園庭園庭全国調査に基づいて、園庭での保育・教育の質をより高めるための視点や工夫をご紹介しています。面積が小さな園や制約がある園での工夫や、地域活用の工夫もご覧いただけます。

* 2019こども環境学会賞【論文・著作賞】を頂きました。

 

『森と自然を活用した保育・幼児教育ガイドブック』

石田は以下を担当させていただきました。→第1章5「幼稚園施設整備指針と園庭調査を踏まえた屋外環境のあり方と自然」東京大学Cedep園庭調査研究グループ/第1章8「幼稚園教育要領等の5領域に合わせた先行研究」北澤明子, 木戸啓絵, 山口美和, 石田佳織

 

『保育内容 環境 第3版』

石田は第6章4節「自然環境と持続可能な社会」を担当させていただきました。