生物に対する受容性の高い人ほど、幼少期の自然体験量が多い傾向がある | 心と体と学びをはぐくむ園庭を

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こんにちは。園庭研究所の石田です。

 

沼田真也さんら(首都大学東京)のご研究『Effects of childhood experience with nature on tolerance of urban residents toward hornets and wild boars in Japan(幼児期の自然体験と、スズメバチとイノシシに対する都市住民の受容性との関係性)』をご紹介します。

<以下、首都大学東京リリースより抜粋(文章の流れを考慮し、一部調整して書いています。)>

 

沼田さんらは、20-69歳の首都圏在住の男女1,030人に対して、

・スズメバチやイノシシによる深刻度が異なる被害シナリオを複数設定し、それに対して容認できる行政の介入の度合い

・幼少期の自然環境の利用頻度や自然遊びの頻度など、幼少期の自然体験量

についてアンケート調査を行われました。

 

その結果、

・これらの生物に対する都市住民の受容性の低さと行政依存度の高さ。(「公園や緑地に生息するスズメバチやイノシシを行政が駆除しない(状況観察や注意喚起のみ行う)」ことは70%以上の住民が「受け容れられない」と回答、など)

・幼少期の自然体験量は直接的・間接的(好感度を介して)に、生物に対する受容性を増大させる。

・男性よりも女性において、受容性が低い傾向がある。

・年齢が高い人ほど、受容性が低い傾向がある。

・被害の深刻度が増すほど、受容性に対する自然体験量の影響は弱くなり、性別や年齢の影響がより強くなる。


(図は首都大学東京リリースより)


こうした結果を受けて沼田さんらは、以下のようにまとめられています。

・都市住民が自然や生物と触れ合う機会を増やすことにより、生物に対する住民の受容性の増大につながる可能性を示唆している。

・都市の生物多様性保全には住民の支持が不可欠であるため、今後の保全プログラムにおいては、都市住民の幼少期の自然体験の回復を目指す取り組みを加えることが必要と考えらる。

・生物に対する好感度はその受容性に強く影響するため、保全プログラムにおいては、美的で好まれる生物だけでなく、嫌われがちな生物に関しても普及啓発を行い、人々の認識を変えていくことが望まれる。

 

*** 石田より ***

多様な生物が暮らす状況を維持していくことは、私たち人がこの地球上で末長く豊かに暮らしていく上では欠かすことができません。(これについては、こちらの記事でも書いています。→「私」もつながりの中の、大切な存在

沼田さんらのご研究は、こうした社会を築いていくために大きなヒントを示してくれているように思います。

そして保育においても、園庭や周辺地域の環境やそこでの活動を考える際に私たちができることがあるのではないでしょうか?

 

園庭研究所 代表 石田佳織

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