自由とルール:イギリス サマーヒルスクールより | 心と体と学びをはぐくむ園庭を

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幼稚園 保育所 認定こども園の園庭を、子どもが伸びやかに豊かな育つ場所にしませんか?

こんにちは。園庭研究所の石田です。

先月、アジア太平洋フリースクール大会(「デモクラティック教育」について)に参加しました。

様々な国のデモクラティックスクールが講演をしてくださったのですが、その中では、決して幼児期だけでなく学童期以上の子どもにとっても、自由な遊びや自然の中で過ごすことの大切さが語られていました。^^

どの国のお話もとても興味深かったのですが、中でも、自由で民主的な学校づくりに取り組まれてきたイギリスの「サマーヒルスクール」のお話が、園庭での活動にも参考になるものでした。
(サマーヒルスクールは、12才以上の子どもの学校で、世界中のオルタナティヴスクールやデモクラティックスクールに影響を与えたと言われています。日本では、こどもの村小中学校などがその代表です。)

サマーヒルでは、他の人の自由に危害を与えることがない限り、その子に最大限の自由が保証されています。
この「他者の自由に危害を与えない」というのが重要で、「ライセンス付きの自由、つまり統制された自由」だと表現されていました。

そして、子どもが自分自身の問題を、その場で自分たちで解決できることについても大切にされています。
このため、学校でのルール(法律)は、子どもたち自身が作ります。

ルールについては次のようにおっしゃっていました。
・コミュニティ内(クラスや施設内)でルールを作ることによって、子ども自身の自由を守る。
・子ども自身がルールを作ることによって、子どもが「自分たちのルールである」と思うことができる。
・ルールはシンプル、論理的、フェアな内容であること。
(例えば、皆が好きな遊具であるトランポリンを使う場合は、他に使いたい子どもがいたら10分以内に譲る、など。)

また、何か子どもに問題が起きた際には、次のように対応されるそうです。
1)オンブズマン*(主にコミュニティの中の年長の子ども)に相談。
(*オンブズマンとは、「代理人」という意味合いで、元々は行政機関に対する市民監視員を指し、国民に変わって行政活動を監視し、国民からの行政機関に対する苦情を処理する者です。)
こうしたオンブズマンをサマーヒルでは学校運営に取り入れ、何か問題が生じた時には、先生が子どもに注意するのではなく、子ども自身が(先生も)オンブズマンに相談し、オンブズマンからその人に話してもらいます。
オンブズマンから話すだけでは解決しなければ、子どもたち皆で開催するミーティングで取り上げられます。
2)皆で決めたルールが破られた場合は、ペナルティを課す。
(1)による話し合いを経てもなお、ルールを破る場合はペナルティが課されます。

ペナルティは例えば、24時間トランポリンを使えない、などです。
その子が「分かったよ」となるまでペナルティを課し続けられるそうです。

***石田より***
園庭を使う際も、子ども達同士で色々な思いが錯誤したり、危険回避のためにルールが必要になることが多々あると思います。
そんな時も、できるだけ子どもと一緒に、何が困るのか、どうしたら気持ちよく過ごせるのかを考えていきたいものです。
年長さんくらいになると、子どもオンブズマンも取り入れられそうですね。^^

日本でも、幼稚園教育要領、保育所保育指針、認定こども園教育保育要領が改訂され、育みたい資質・能力として「道徳性・規範意識の芽生え」が挙げられていますね。

その中では、「きまりを守る必要性が分かり、自分の気持ちを調整し、友達と折り合いを付けながら、きまりをつくったり、守ったりするようになる」と述べられています。

生きていく上でとても大切な視点だなぁと思います。

 

園庭も、こうした力を子どもたちがはぐくんでいける場所でありますように。

そして、ルールが行動を制限するものではなく、「子どもの自由を守るためのもの」でありますように。^^

 

写真は、ドイツベルリン州にある、保育所・幼稚園Kindertagesstätte am Wald 'Anne Frank'のエントランスホールに掲示されていたもの。子どもたちが理由も含めて話し合った「危ないこと・やってはいけないこと」が貼り出されています。(日本生態系協会 ドイツの園づくりツアーより)

 

園庭研究所 代表 石田佳織

お問い合わせ: 電話:080-2381-8611  /  メールを送る

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