4歳のあっちゃんは、お母さんのことが大好き。
ごはんも、お風呂も、おふとんも、いつも一緒です。
でも、あっちゃんは、お母さんの秘密を知っています。
一緒にお風呂に入るとき、いつも見ていたお母さんのおなか。
そこには、おへその下から縦に伸びた赤い傷がありました。
4歳のあっちゃんは、知っています。
赤ずきんちゃんや、七ひきの子ヤギ。
物語に出てくる悪いオオカミは、
お腹をチョキチョキして、石を詰められて、
最後は溺れて死んでしまうことを。
お母さんは、一体だれを食べたんだろう。
あっちゃんは、急に心臓がどきどきしてきました。
あっちゃんは、お母さんのおなかを調べることにしました。
おなかに向かって「おーい」と呼んでみました。
でも返事はありません。
耳をくっつけて、様子をうかがってみました。
お母さんのおなかが、小さくぐぅとなりました。
あっちゃんは、すごく心配になってきました。
「ねぇ おかあさんは ぶたさん たべたこと ある?」
「豚肉?食べるよ」
「とりさんは?」
「食べるよ」
「うしさんは?」
「食べるよ」
それを聞いて、あっちゃんは、とうとう泣き出してしまいました。
ぶたさんも、とりさんも、うしさんも、みんな食べちゃうなんて、
どの絵本のオオカミよりも、食いしん坊の悪いお母さんです。
お母さんは、あっちゃんが泣いたので、とてもびっくりしました。
でも、理由を聞くと、優しくこう言いました。
「あのね、ここには、昔、あっちゃんが入ってたの。
これは、あっちゃんが、おなかから出てきたときの傷だよ」
何ということでしょう。
お母さんは、あっちゃんまで食べていたのでした。
「いつ、あっちゃんを たべちゃったの!
ちゃんと ごめんなさい しなさい!」
あっちゃんはそう言って、お母さんをさらに困らせるのでした。
娘との昔のやり取りを思い出しながら、絵本風に書きました。
娘に「お母さん、新作書いたから聞いてよ」と読み聞かせたところ、
ゲラゲラ笑って聞いてくれたのですが、
この話に出てくる「あっちゃん」が娘のことだとは
本人は気が付いていなかった様子…
↑暑くなってきたので、娘用にこんなの買いました!