316)御嶽山は中央分水嶺の南という不思議 | 峠を越えたい

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 赤石山脈(南アルプス)、木曽山脈(中央アルプス)、飛騨山脈(北アルプス)という3000m級の険しい山々が南北に並行している、その間あいだの地域で、ボールを2コ落としたらそれぞれ反対方向に転がっていくような境目は何処なんでしょう。長野県、山梨県、静岡県、富山県、岐阜県辺りを考えています。飛騨山脈の西に当たる岐阜県については、高山本線の富山・岐阜県境を南北に走り抜ける近辺で各駅の標高を求めて知りました(190)。高山駅は日本海側にあって意外でした。中央本線(西線)で岐阜県から長野県に向かったらどうかというと、奈良井駅の標高が一番高く、塩尻駅や、また松本駅はやや下りました(159)。中央本線の東線の側は最も高いのは富士見駅で、茅野駅、上諏訪駅、岡谷駅、辰野駅、塩尻駅と緩やかに下っています(159)。飯田線では、飯田駅、駒ヶ根駅、伊那市駅と登ってきて、終点辰野駅の標高が最高です。すると、富士見駅、辰野駅、奈良井駅を結んだ線が凡その南北の分水嶺でしょうか。

 天竜川水系は太平洋側に流れ下ります。辰野駅が一番高所なら諏訪湖から天竜川が流れ出せないのではと心配すると、そんな馬鹿なことはない。富士見駅からは下って諏訪湖ですが、辰野からは登って諏訪湖です。辰野駅:723m、岡谷駅:766m。だから辰野駅辺りに分水嶺が通るというのは訂正です。諏訪湖は中央分水嶺の南側に位置し、この湖から北に向かって流れ下る川はありません。勿論北側から流れ込む細い川はありますが。

 木曽川は奈良井宿北西の鉢盛山が源流で南に流れ出します。分水嶺は多分乗鞍岳を西に過ぎて高山駅の南側を通ります。乗鞍岳南麓を水源とする飛騨川は木曽川に合流します。

 ここまで判明したところで、『日本の主要な分水嶺分水界のマップ』(japonyol.net)の素晴らしい地図を借ります。

 地名も分かるように、

 駒ヶ岳を南に見ながら、分水嶺は不可解に入り組んでいますが、信濃川(=千曲川)にゆくゆくは流れ込む奈良井川(梓川、犀川)の源流があるからです。中央分水嶺が更に西に向かい、福井・岐阜県境にある大日ヶ岳に突き当たると両県境が中央分水嶺になります。

 さて乗鞍岳よりも高い御嶽山が中央分水嶺の南側にぽつんとあるということは、この山は飛騨山脈の続きではないのでしょうか。『御嶽山』(Wiki.)にはこう記されています。

 “御嶽山[6](おんたけさん)は、長野県木曽郡木曽町王滝村岐阜県下呂市高山市にまたがり、東日本火山帯の西端に位置する標高3,067 mの複合成層火山である[5][7]。大きな裾野を広げる独立峰である[8][9]日本の山では14番目に標高が高く、独立峰としては富士山に次いで2番目に高い”。

 「独立峰」とは期待が持てます。その期待に答えてくれて、上記文章のずっと先に、「御嶽山は飛騨山脈に含まれるのか」なる項目を見付けました。

 “御嶽山は北アルプス(飛騨山脈)の延長線上にあり、北アルプスに含めるという説もあるが、北側の乗鞍岳との間には稜線らしき峰々はほとんどないため、一般的には御嶽山は飛騨山脈には含まれないというのが定説である(ただし、旧乗鞍火山帯には含まれる)。しかし、間を横切る河川は1本もないのも事実であり、明確な結論は出ていない。………”。

 乗鞍岳より南に向かい御嶽山までの半分くらいまでは稜線がありそうですが、御嶽山にもっと近づいた標高1400mくらいの辺りは稜線とは言えないのかどうか。国土地理院地図で、御嶽山頂上―野麦峠―乗鞍岳頂上の断面を作りました。

 逆「く」の字形直線で切り、左端が御嶽山、右端が乗鞍岳、「21」の直上辺りが野麦峠(標高1672m)と思われます。

 岐阜駅から高山線を登って行くと、意外と高山駅が山の向こうであったという新たな感覚でしたが、分水嶺(分水界)を越える南北の地形を国土地理院地図の3D表示に求めます。

 久々野駅前後が高山本線の最高点です。分水嶺というと稜線とか峠越えを思い浮かべるので、長いトンネルを穿ったり、ループ線とかスイッチバックを設けたりか、というと、高低差がそれ程なくて高山盆地に入って行きます。こんな所もあるんでしょう。