289)鉄路で繋げたかった徳島と高知 | 峠を越えたい

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 起点が徳島駅の牟岐線は南西に辿って高知県に入ったら室戸のほうまで延びて行く予定だったようですが、やがては土讃線と繋がる積もりだったでしょうか。この路線が延伸していく過程を見たいと思います。1925年4月号『汽車時間表』(日本旅行文化協会)の時刻表を掲げます。

 「中田・古庄間(阿南鉄道線)」と名乗っていることは少なくとも阿南までは延びるつもりです。同じ4月号の時刻表もう一つを。

 徳島~中田~小松島間は小松島線と呼ばれています。その小松島線の中田駅から阿南鉄道線という会社線が出ており、後の牟岐線の始まり(旧・阿南鉄道線)は小松島線の支線のように見えます。。1942年11月号『時刻表』(東亜旅行社)からは路線図を掲げます。

 この時点では国有化されていて、徳島~中田~牟岐間が牟岐線と名乗っています。徳島~中田~小松島も小松島線とされており、この当時は呼び名が重複されたりするのでしょうか。上の路線図に見えない、阿南鉄道線の時の「古庄」駅は改称されたのかどうか、羽ノ浦の次の駅だったはずです。『古庄駅』(Wiki.)が解決してくれました。その歴史の所で、

 “徳島県北部に比べて鉄道整備の遅れていた徳島県南部へ鉄道を敷設する目的で、1912年大正元年)に阿南電気鉄道、後に改称されて阿南鉄道が発足し、中田駅から新野村(後の阿南市新野町)までの鉄道を計画した。しかし那賀川に架橋する費用がなく、計画を変更してこの古庄駅までの路線として1916年(大正5年)12月15日に開通した[1][2]。………………。

しかし1936年昭和11年)3月27日に1駅手前の羽ノ浦駅から分岐する形で国鉄牟岐線が開通し、古庄駅は羽ノ浦駅で分岐する支線の終点となった[1][4]。同年7月1日に阿南鉄道は国有化され、羽ノ浦-古庄間は旅客営業を廃止して貨物線となり、……………1961年(昭和36年)4月1日に国鉄の貨物合理化により廃止となった[2][1]。”

 事情が掴めました。牟岐線の開通した際に支線(羽ノ浦~古庄)として取り残されてしまった古庄駅の運命でした。かなり時代は飛んで1993年1月号『JR時刻表』(弘済出版社)の路線図です。

 牟岐線は4駅延びて海部駅が終点です。ここから阿佐海岸鉄道が甲浦駅迄走り、更にはバスですが室戸岬を経由して高知まで繋がっています。今度は最近のものを。2022年5月号『JTB時刻表』(JTBパブリッシング)より、

 現在牟岐線は起点:徳島駅、終点:阿波海南駅です。海部駅も牟岐線でしたよね。その辺の事情を知りたくて『牟岐線』を当ってみた所、高知の方へ鉄路の繋がる予定のことも分かりました。

 “牟岐線(むぎせん)は、………。阿波室戸シーサイドライン(あわむろとシーサイドライン)の愛称が付けられている。

徳島県東部の徳島市・小松島市阿南市を結び、さらに南東部の海岸沿いに走り県南部とを結ぶ。鉄道敷設法(大正11年法律第37号)別表第107号により「高知県後免ヨリ安芸、徳島県日和佐ヲ経テ古庄附近ニ至ル鉄道」として室戸後免方面への延伸が計画されていたが国鉄(→JR四国)線としては海部駅までの延伸で終わった。1992年に海部駅 - 甲浦駅間が阿佐海岸鉄道阿佐東線として開業している。その後、2021年12月25日運行開始の阿佐海岸鉄道DMV導入に伴い[2][3]2020年に阿波海南駅(阿波海南信号場) - 海部駅間が阿佐海岸鉄道阿佐東線に編入されている[4][5]。”

 1992年に海部駅~甲浦(かんのうら)駅が阿佐海岸鉄道阿佐東線として開業した、と言うことは阿佐西線の予定があるはずです。それは『阿佐海岸鉄道阿佐東線』(Wiki.)が教えてくれました。

 “(阿佐海岸鉄道阿佐東線は)………徳島県海部郡牟岐町の牟岐駅から高知県南国市後免駅までを結ぶべく計画された日本鉄道建設公団建設線の阿佐線(あさせん)の徳島県側の区間(阿佐東線)のうち、海部駅 - 甲浦駅間の建設を引き継ぎ、完成させて開業した路線である。

なお阿佐線のうち、牟岐駅 - 海部駅間はJR四国(当時は国鉄)牟岐線として1973年昭和48年)10月1日に、高知県側の区間(阿佐西線〈あささいせん〉)のうち奈半利駅 - 後免駅間は土佐くろしお鉄道阿佐線(ごめん・なはり線)として2002年平成14年)7月1日に開業している。残る甲浦駅 - 奈半利駅間は未成線であり、高知東部交通路線バスが結んでいる”。

 牟岐線が延びて後免(ごめん)駅まで達した暁には阿佐線と呼ばれる予定でした。阿佐線の徳島県側が阿佐東線、高知県側が阿佐西線とするようですが、甲浦駅のあるところは高知県です。結局甲浦駅~奈半利(なはり)駅間は路線が出来ていません。奈半利駅~後免駅は土佐くろしお鉄道阿佐線(土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線)として2002年に開業しました。

 妙なことに「甲浦信号場」なる言葉があって甲浦駅がありません。『甲浦信号場』(Wiki.)を読んでみました。

 “開業当初は鉄道駅の甲浦駅(かんのうらえき)として営業しており、阿佐東線の終着駅となっていた。また、高知県内に属する鉄道駅では最も東に位置していた。

2021年の阿佐東線におけるデュアル・モード・ビークル(DMV)運行開始に伴い改修工事が実施され、駅から信号場に変更されるとともに[1]、鉄道モード・バスモードの切り替えを行うモードインターチェンジが設けられた。また、既存の駅ホームは供用廃止となり、代わって駅舎前に設けられたバス停留所(バスモード区間にあるため、阿佐東線の施設ではない)で旅客の乗降を取り扱う形となった。”

 『阿佐海岸鉄道阿佐東線』(Wiki.)の冒頭部分にはこう書かれています。

 “阿佐東線 (あさとうせん)は、 徳島県 海部郡 海陽町 の 阿波海南信号場 から 高知県 安芸郡 東洋町 の 甲浦信号場 に至る、 阿佐海岸鉄道 の 鉄道路線 である。”

 現在の阿佐東線は阿波海南信号場~甲浦信号所です。牟岐線終着駅の阿波海南駅はどうも信号場と駅の両方があるようで、ややこしいですね。そこで『阿波海南駅』(Wiki.)を見ます。

 “阿波海南駅(あわかいなんえき)は、徳島県海部郡海陽町四方原にある、四国旅客鉄道(JR四国)牟岐線。同線の終着駅。駅番号はM27。海陽町の代表駅である。

本項目では、近接する阿佐海岸鉄道阿佐東線の起点である阿波海南信号場(あわかいなんしんごうじょう)についても扱う。”

 徳島駅~海部駅間であったJRの牟岐線は終点が一駅東に戻って徳島駅~阿波海南駅になり、別に出来た阿波海南信号場~海部駅~甲浦信号場間が阿佐海岸鉄道阿佐東線ということになります。甲浦信号場で鉄道モード・バスモードの切り替えをするらしいです(『甲浦信号場』(Wiki.))。

 ここでDMV(dual mode vehicle)をやっと登場させられます。金属車輪とゴムタイヤの両方を備えたバスが阿波海南~甲浦は車輪を出して鉄道として走り、甲浦を過ぎると車輪を引っ込めて道路を走ります。これが室戸岬まで行き、更にバスと「ごめん・なはり線」と土讃線を辿り、結局高知まで繋がっています。

 徳島~室戸~高知を鉄路で結ぶ計画が当初あったことを知りました。実現は叶いませんでしたが、線路を走ったバスが道路も走るユニークなDMVを生みました。経験したいものですか如何にも遠い。乗車券はネット予約のみです。いや宍喰駅で直接買えるそうですが、何故阿波海南駅や海部駅で買えないのでしょう。1台の座席数は少ないようで満員では乗れないので、遠路はるばるやって来て泣きの涙にならないようネット予約を事前に。如何でしょう、旅行がてらにDMVも目当てにして訪れる人が結構いそうですね。水陸両用バスは確か諏訪湖で乗ったことがあります。