あらすじ
「大気再突入で燃え尽きてしまう運命であるにもかかわらず、どうして君は、これほどまでに指令に応えてくれるのか」「小惑星探査機はやぶさ」の生みの親である川口淳一郎教授が、JAXAのホームページに寄せたはやぶさへのメッセージです。2009年11月、すべてのイオンエンジンの寿命がつき、地球帰還を目前に運用停止に追い込まれたのち、奇跡的にエンジンが復活したとき、川口教授は深い愛情と熱い想いをメッセージに込めたのです。本書はプロジェクトをゼロから進めてきた川口教授による、「はやぶさ」のすべてがわかる初めての著書です。
ひと言
10月1日(土)図書館でこの本を借りた足で上映初日おまけに映画の日で1000円!の 映画『はやぶさ/HAYABUSA』を見に行きました。何かと忙しい毎日、どうにかやりくりをして時間を作らないと読書する時間なんて永遠にできないから、忙しくてもできるだけ時間を作って本を読むようにしようと思って頑張っていますが、忙しくても時間を作って、この本を読んでほんとうによかった。有意義な時間を過ごすことができてよかったと思える素敵な本でした。心から「はやぶさ」くん、川口淳一郎さん、そしてこのプロジェクトに関わった人たちに「ありがとう」と言いたい気持ちでいっぱいです。
あのとき、可能性を口にしながらも、「もう無理なんじゃないか」と弱気になる自分がいなかった、といえばうそになります。しかし、プロジェクトマネージャーの私がそれを口にしたら、スタッフはみんな諦めてしまう。だから決して弱音は吐けなかった。またプロジェクトメンバー全員が「はやぶさのゴールはイトカワではなく、地球だ」という認識を非常に明確に共有していたことも大きかった。この認識は最後まで、微塵のゆらぎもなかったと思います。(第1章 限界に挑戦し続けた7年間)
サンプルを持ち帰れない無念さと同時に、私が恐れたのは、若い科学者、エンジニアの間に、「やっぱり、日本には無理だったんだ」「NASAにはかなわないよ」という、敗北感のようなものが根づくことです。この感情は、一度根づくとなかなか解消できません。そして、日本の宇宙開発は停滞していくはずです。そんなことを思うと、握り締めたこぶしを、なかなか開けませんでした。意識すればするほど、強く握り締めてしまう。どうにか、どうにかできないのか、「はやぶさ」。(第5章 何があっても帰還させる執念)
地球帰還が迫ってきたとき、私はようやく、気持ちの整理ができました。「はやぶさ」が抱えるカプセルは、我々だけでなく、彼自身の思いも込められた「たまご」であり、次の時代の惑星探査のために、後継機に託す「バトン」でもある。「はやぶさ」はそんな覚悟をもって、自身の運命を受け入れるために、地球に向かっている。我々にできることは、万全の備えで大気圏に再突入させ、彼が切り離すカプセルを受け取り、孵してあげることです。我々と「はやぶさ」が紡いできた、7年間の長い物語を締めくくり、新しい物語を語り始めるために、それは絶対に失敗できない儀式なのです。(第5章 何があっても帰還させる執念)
「はやぶさ」が我々日本人に伝えたかったはずのメッセージ「日本人は、その技術力にもっと自信をもっていい」と付け加えました。「はやぶさ」がくれた自信、希望、勇気を、関わった研究者やエンジニアだけでなく、一人でも多くの人に知ってもらいたい。そんな気持ちを込めた言葉です。そして我々には、「はやぶさ」が成し遂げた成果を、次のプロジェクトに受け継いでいく義務があります。再突入の際、そんな思いで詠んだ歌があります。
まほろばに 身を挺してや 宙繚(そらまと)う 産(うぶ)の形見に 未来必ず
「はやぶさ」、君の思いは確かに受け取りました。(第6章 高い塔を建てなければ、新たな水平線は見えてこない)
「一番でなければダメですか?二番ではダメなんですか?」事業仕分けのとき、こんな言葉が話題になりましたが、……。宇宙開発への投資を無駄と思うのは、目先の利益につながらないからでしょう。でもそれは、あまりに短絡的です。なんのために投資を行うのか。日本で暮らしている人が、この国に対する自身(自信?)と誇りをもてるようにするためだと私は思います。豊かな国に生まれ、育ち、自分の子孫たちにもこの国を残したい。そんな誇りをもってもらうために投資しているはずです。「二番でいい」という国に誇りがもてますか?
(第6章 高い塔を建てなければ、新たな水平線は見えてこない)
なぜ、「はやぶさ」はイトカワにタッチダウンして、地球に帰ってくることができたのか。日本の技術力の高さ。運用チームの経験、知恵、勇気、決断力。それらが重要なファクターでしたが、忘れてはいけないのは、「はやぶさ」が神様に愛されているとしか思えないほど、幸運だったことです。
(第6章 高い塔を建てなければ、新たな水平線は見えてこない)