あらすじ
一人息子を残して病に斃れた「自慢の妻」を偲びつつ、戦いの渦中に身を置かなければならなかった連合艦隊トップリーダーの、知られざる家族愛と人間像を活写した異色作。終戦の日、死所を求めて特攻出撃した提督の真実。
一人息子を残して病に斃れた「自慢の妻」を偲びつつ、戦いの渦中に身を置かなければならなかった連合艦隊トップリーダーの、知られざる家族愛と人間像を活写した異色作。終戦の日、死所を求めて特攻出撃した提督の真実。
ひと言
8月15日の玉音放送後に最後の特攻をかけた司令長官が宇垣 纏だということは知っていた。
他の人にはどちらでもいいことなのかもしれないが、私はその特攻が敵艦に突入しに行ったのか、海に突っ込んで自爆しようとした出撃なのか もっと知りたくてこの本を読もうと思った。
操縦していた中津留大尉の判断なのか、宇垣中将の命令なのか わからないが敵艦に突入したようではないようだ。それならどうして5機(11機)も飛び立ったのだろう。
わたしたちにはその是非について論じる資格などない。70年以上も前に この国のことを想って命をかけた人々がいたことを絶対に忘れないようにしなければならないと思った。
8月15日の玉音放送後に最後の特攻をかけた司令長官が宇垣 纏だということは知っていた。
他の人にはどちらでもいいことなのかもしれないが、私はその特攻が敵艦に突入しに行ったのか、海に突っ込んで自爆しようとした出撃なのか もっと知りたくてこの本を読もうと思った。
操縦していた中津留大尉の判断なのか、宇垣中将の命令なのか わからないが敵艦に突入したようではないようだ。それならどうして5機(11機)も飛び立ったのだろう。
わたしたちにはその是非について論じる資格などない。70年以上も前に この国のことを想って命をかけた人々がいたことを絶対に忘れないようにしなければならないと思った。
この国の行く果ては気がかりではあるけれど、もはや一人の軍人に、その役目は見当たらないだろう。ならば帝国の再建のため、後ろ楯になるような大和魂を、最後に示して終わりたかった。それが俺に残された仕事だろう。何か違っているだろうか。ともすれば、死の理由を無理に結論づけているのかもしれない。だが、先に出撃した大勢の特攻隊員の命の引き換えが、ただの無条件降伏ではあまりに哀れである。せめて彼らにならって最期を遂げて御霊に報いたい。でなければ神州の不滅を信じ、飛び立った彼らがあまりに惨めで悲しい。何の償いにもならないが、他に詫びを言う方法はない。宇垣はじっと眼を閉じ、やがてもう一度上を見上げ、健全な太陽の匂いを嗅いだ。(第十章 八月十五日の決死行(四))
そこに幾つものアメリカ艦艇を確認しながら、相手がもう敵ではないことを、宇垣がどうやって同乗の若者に了解させたのかは分からない。機内には隊長の中津留と予科練出の下士官がいた。あるいは二人も宇垣と同様、最後、認めた灯火にこの日、国が負けたことを悟ったのかもしれない。「長官、あの島の岸辺に突入します」操縦の中津留が目標地点を定め、宇垣の判断を仰いだ。水深一千メートル、黒潮巻く海面がどんより暮れ残っている。中津留が機をぐっと降下させた。「長官、ワレ突入スを発信します」宇垣は偵察員の声を聞いた。海中に爆弾を投棄した彗星は、それから真っ直ぐ島の浜辺に急降下した。やがて海面がぱっと、真っ赤な炎で染まった。時刻は二十時二十五分、火炎と共に長い戦いの幕が下り、帝国海軍が落日を迎えた。だが大分市内の五航艦では、「我奇襲に成功」を発信した長官機がまさか、海岸に自爆したとは思いもよらない。また戦後、米軍側の非公式記録は、宇垣長官機は米空母に突入、僅かな損害が出たのみと伝えたのである。昭和五十二年になってようやく、戦史研究家の手で、別の証言が明るみに出た。長官機からの突入電に符合する時刻、沖縄本島の北西、伊平屋島に突入自爆した彗星が一機あったこと、本来二人乗りのはずの機の燃え尽きた跡に、三名の遺体が確認されたこと。うち二人は飛行服を身につけていたのに一人、ダークグリーンの三種軍装の者がいたこと。そしてこの遺体の脇に、血だらけの短剣が落ちていたこと。それがきっと、宇垣が機上に携えていった山本五十六の形見の脇差しであろうという推測。寂しい話だが宇垣と中津留と、それに遠藤という若い飛曹長の遺体は、現地の米軍がロープで足を巻き、ジープに括りつけて引いて行ったという。火葬場で荼毘に付され、島内の合同慰霊塔に埋葬されたという話も残っており、あくまでも目撃者の伝聞とはいえ、おおむね本当の話らしい。戦後ただし、三十数年を経て判明した事実を再度、公刊資料に追記できるものではない。それに、彼らが宇垣たち三名だという確証はないのである。(第十章 八月十五日の決死行(五))

























