あらすじ
「女のいない男たちになるのはとても簡単なことだ。ひとりの女性を深く愛し、それから彼女がどこかに去ってしまえばいいのだ」というのが今回の短編集のモチーフ。
「ドライブ・マイ・カー」「イエスタディ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」「女のいない男たち」6編を収録。
「女のいない男たちになるのはとても簡単なことだ。ひとりの女性を深く愛し、それから彼女がどこかに去ってしまえばいいのだ」というのが今回の短編集のモチーフ。
「ドライブ・マイ・カー」「イエスタディ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」「女のいない男たち」6編を収録。
ひと言
先日、図書館の棚でラッキーなことにこの本を見つけました。予約を入れてなかったので、読むのに1年半かかりました。
「ドライブ・マイ・カー」の続きを家福のパートとみさきのパートに分かれて、小説が交互に進む。と勝手に想像してみた。というブログを書かれたハルキファンの方もいて、それもおもしろいなぁと思いました。でも前の「多崎つくる」もこの「女のいない」も昔の作品に比べると明らかに劣っているように思います。もう一度素敵なワクワクするような長編をお願いします。
先日、図書館の棚でラッキーなことにこの本を見つけました。予約を入れてなかったので、読むのに1年半かかりました。
「ドライブ・マイ・カー」の続きを家福のパートとみさきのパートに分かれて、小説が交互に進む。と勝手に想像してみた。というブログを書かれたハルキファンの方もいて、それもおもしろいなぁと思いました。でも前の「多崎つくる」もこの「女のいない」も昔の作品に比べると明らかに劣っているように思います。もう一度素敵なワクワクするような長編をお願いします。
鋭利な刃物のように、時間をかけて容赦なく彼を切り刻んだ。何も知らないでいられたらどんなによかっただろうと思うこともあった。しかしどのような場合にあっても、知は無知に勝るというのが彼の基本的な考え方であり、生きる姿勢だった。たとえどんな激しい苦痛がもたらされるにせよ、おれはそれを知らなくてはならない。知ることによってのみ、人は強くなることができるのだから。
(ドライブ・マイ・カー)
(ドライブ・マイ・カー)
「機転といえば、フランソワ・トリュフォーの古い映画にこんなシーンがありました。女が男に言うんです。『世の中には礼儀正しい人間がいて、機転の利く人間がいる。もちろんどちらも良き資質だけど、多くの場合、礼儀正しさより機転の方が勝っている』って。…」……。「彼女は具体例をあげて説明します。たとえばある男がドアを開けると、中では女性が着替えをしているところで、裸になっています。『失礼しました、マダム』と言ってすぐさまドアを閉めるのが礼儀正しい人間です。それに対して、『失礼しました、ムッシュー』と言ってドアをすぐさま閉めるのが機転の利く人間です」
(独立器官)
(独立器官)
「『逢ひ見ての のちの心に くらぶれば 者はものを 思はざりけり』という歌がありますね」と渡会が言った。「権中納言敦忠」と僕は言った。どうしてそんなことを覚えていたのか、自分でもよくわからないけれど。「『逢ひ見て』というのは、男女の肉体関係を伴う逢瀬のことなんだと、大学の講義で教わりました。そのときはただ『ああ、そういうことなのか』と思っただけですが、こんな歳になってようやく、その歌の作者がどういう気持ちを抱いていたのか実感できるようになりました。恋しく想う女性と会って身体を重ね、さよならを言って、その後に感じる深い喪失感。息苦しさ。考えてみれば、そういう気持ちって千年前からひとつも変わっていないんですね。そして そんな感情を自分のものとして知ることのなかったこれまでの私は、人間としてまだ一人前じゃなかったんだなと痛感しました。気づくのがいささか遅すぎたようですが」そういうのは遅すぎるも早すぎるもないと思う、と僕は言った。たとえいくらか遅かったとしても、最後まで気づかないでいるよりはずっといいのではないか。「でもこういう気持ちは、若いうちに経験しておけばよかったかもしれません」と渡会は言った。「そうすれば免疫抗体みたいなものも作られていたはずです」そんなに簡単に割り切れるものでもないだろうと僕は思った。免疫抗体なんてできないまま、たちの悪い潜在的病根を体内に抱え込むようになった人を僕は何人か知っている。
(独立器官)
(独立器官)











