あらすじ
森宮優子、十七歳。継父継母が変われば名字も変わる。だけどいつでも両親を愛し、愛されていた。この著者にしか描けない優しい物語。 「私には父親が三人、母親が二人いる。 家族の形態は、十七年間で七回も変わった。 でも、全然不幸ではないのだ。」 身近な人が愛おしくなる、著者会心の感動作
森宮優子、十七歳。継父継母が変われば名字も変わる。だけどいつでも両親を愛し、愛されていた。この著者にしか描けない優しい物語。 「私には父親が三人、母親が二人いる。 家族の形態は、十七年間で七回も変わった。 でも、全然不幸ではないのだ。」 身近な人が愛おしくなる、著者会心の感動作
ひと言
これも2019年の本屋大賞のノミネート10作品が発表された日に予約を入れた1冊です。こんなに爽やかな読了感の作品は久しぶりで、この本も間違いなく本屋大賞の1,2位に入ってくる本だと思います。今年はたて続けに、いいノミネート作品が読めてラッキーでした。これからもいいノミネート作品と出会えますように!
これも2019年の本屋大賞のノミネート10作品が発表された日に予約を入れた1冊です。こんなに爽やかな読了感の作品は久しぶりで、この本も間違いなく本屋大賞の1,2位に入ってくる本だと思います。今年はたて続けに、いいノミネート作品が読めてラッキーでした。これからもいいノミネート作品と出会えますように!
梨花が言ってた。優子ちゃんの母親になってから明日が二つになったって」 「明日が二つ?」 「そう。自分の明日と、自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日が、やってくるんだって。親になるって、未来が二倍以上になることだよって。明日が二つにできるなんて、すごいと思わない? 未来が倍になるなら絶対にしたいだろう。それってどこでもドア以来の発明だよな。しかも、ドラえもんは漫画で優子ちゃんは現実にいる」
(第1章 24)
(第1章 24)
「また、来てもいい?」 私が聞くと、梨花さんは、 「えーやめてよー」 と冗談めかして言った。 「だめ?」 「だめだめ。私、今日すごく無理してるもん。またこれだけのパワー貯めるのに三ヶ月かかる。 次は結婚式だよ。早瀬君も優子ちゃんのウェディング姿も見られるなんて、今からわくわくする。病気だとさ、未来の予定が何よりの薬だって知ったよ」 梨花さんはまぶしそうな目を私に向けた。 元気でいてね。早く病気を治して。言いたいことはたくさんあるのに、どれも口からは出せなかった。 「またね」 そんな私に梨花さんはにっこりと手を振った。 「また。うんまたね」 私もそう言うと、一つ息を吐いて重いドアを引いた。
(第2章 5)
(第2章 5)
「えらいこと引き受けさせられたね」 梨花さんは、任されるとやりきらずにはいられない森宮さんの性分を見抜いていたんだ。私は、梨花さんに説得されていたであろう森宮さんの姿を思い浮かべて笑った。
「何度も言うけど、俺、本当にラッキーだったよ。優子ちゃんがやってきて、自分じゃない誰かのために毎日を費やすのって、こんなに意味をもたらしてくれるものなんだって知った」 「そうなんだ」 「守るべきものができて強くなるとか、自分より大事なものがあるとか、歯の浮くようなセリフ、歌や映画や小説にあふれてるだろう。そういうの、どれもおおげさだって思ってたし、いくら恋愛をしたって、全然ピンとこなかった。だけど、優子ちゃんが来てわかったよ。自分より大事なものがあるのは幸せだし、自分のためにはできないことも子どものためならできる」 森宮さんはきっぱりと穏やかに言った。まだ私にはその気持ちはわからない。早瀬君と共に進む時間が増えたら、わかる日が来るのだろうか。
「自分のために生きるって難しいよな。何をしたら自分が満たされるかさえわからないんだから。金や勉強や仕事や恋や、どれも正解のようで、どれもどこか違う。でもさ、優子ちゃんが笑顔を見せてくれるだけで、こうやって育っていく姿を見るだけで、十分だって思える。これが俺の手にしたかったものなんだって。あの時同窓会に行ってよかった。梨花と会わなかったら、俺今ごろ路頭に迷ってたな」
(第2章 9)
「何度も言うけど、俺、本当にラッキーだったよ。優子ちゃんがやってきて、自分じゃない誰かのために毎日を費やすのって、こんなに意味をもたらしてくれるものなんだって知った」 「そうなんだ」 「守るべきものができて強くなるとか、自分より大事なものがあるとか、歯の浮くようなセリフ、歌や映画や小説にあふれてるだろう。そういうの、どれもおおげさだって思ってたし、いくら恋愛をしたって、全然ピンとこなかった。だけど、優子ちゃんが来てわかったよ。自分より大事なものがあるのは幸せだし、自分のためにはできないことも子どものためならできる」 森宮さんはきっぱりと穏やかに言った。まだ私にはその気持ちはわからない。早瀬君と共に進む時間が増えたら、わかる日が来るのだろうか。
「自分のために生きるって難しいよな。何をしたら自分が満たされるかさえわからないんだから。金や勉強や仕事や恋や、どれも正解のようで、どれもどこか違う。でもさ、優子ちゃんが笑顔を見せてくれるだけで、こうやって育っていく姿を見るだけで、十分だって思える。これが俺の手にしたかったものなんだって。あの時同窓会に行ってよかった。梨花と会わなかったら、俺今ごろ路頭に迷ってたな」
(第2章 9)
「なんでも度を超すとだめなんだよね」 「それを言うなら、あいつだろう。俺、風来坊のせいで、何も聴いてないときでも頭の中にピアノが流れてくるようになったんだぜ。あれ、一種の洗脳だ。訴えようかな」 私は何も知らなかったけれど、早瀬君は二度目の訪問で断られてから、三、四日に一度、森宮さんに手紙と自分が弾いたピアノを録音したCDを送りつけていた。
それがわかったのは、結婚式場や日取りが決まり早瀬君の家にあいさつに行った時だ。 前回とは違って、穏やかな表情で迎えてくれたお母さんに不思議に思っていると、お母さんは 「先日、被害届が居いたの」と一通の手紙を私に差し出した。そこには、見慣れた字で端的にメッセージが書かれていた。
それがわかったのは、結婚式場や日取りが決まり早瀬君の家にあいさつに行った時だ。 前回とは違って、穏やかな表情で迎えてくれたお母さんに不思議に思っていると、お母さんは 「先日、被害届が居いたの」と一通の手紙を私に差し出した。そこには、見慣れた字で端的にメッセージが書かれていた。
三日に一度、早瀬賢人君からピアノ曲と暑苦しい手紙が送られ、困っています。結婚がうまくいくまでは続くようです。これ以上こんな目に遭わされては平穏な暮らしができません。どうか、二人が何も気に留めることなく、結婚できるようにしてください。 森宮壮介
「賢人が送った曲、全部まとめられたCDも同封されてた」
お母さんはそう言いながらプレーヤーのボタンを押した。
(あとがき)
お母さんはそう言いながらプレーヤーのボタンを押した。
(あとがき)











