現代人が不足しがちな「鉄分」。なぜ、鉄不足になってしまうのか?その原因には意外なポイントがありました。ここでは私たちの鉄不足について、ご紹介していきます。

必須栄養素である「鉄」は、不足しがちな栄養素のひとつです。なぜ、不足が起こってしまうのか?それにはいくつかの原因があります。ここでは鉄不足になる原因をみていきます。
鉄不足の原因:食物中の鉄が少なくなっている?
現代人の鉄不足の大きな原因は、食べ物や食生活の変化による影響が大きいと思われます。
- 炭水化物、加工精製食品が多い。
- 栽培に有機肥料を使用しなくなった。
- 鉄製の調理器具が少なくなった。
鉄製のフライパンや鍋などの調理器具を使うと、ごく微量ですが器具から鉄が溶けだします。 酸は鉄を溶かします。鉄は酸性にすることでイオン化されて溶出量が大きく増加します。そのため、調理する際にお酢を使うとさらに鉄が溶け出します。内容物を酸性にすれば鉄分の溶出量が増えるので、ケチャップ料理で効果が認められたという報告もあります。
鉄不足の原因:鉄が吸収されていない?
- 胃酸の低下
胃酸は食べ物から補う栄養素の消化・吸収において重要です。
ヘリコバクター・ピロリ菌感染による萎縮胃や制酸剤による胃酸分泌の低下
無機鉄は、酸性(PH2以下)でイオン化し、溶解度があがります。よく噛んでゆっくり食べることにより胃酸の分泌も促されます。また、香辛料・酢・柑橘類は胃の粘膜を刺激し 胃液の分泌を促します。逆に、食前に水分を摂りすぎると胃液が薄まってしまいます。
- 胃切除後
高齢者の食事摂取不良(入れ歯、咀嚼力の低下)。
鉄の需要が増えるのは?
鉄は生活習慣や環境の変化などによっても必要量が変わります。下記に該当する場合は、いつもより鉄分の摂取を多くとるように意識しましょう。
- 成長期
- 月経(生理)
子宮筋腫や子宮内膜症があると月経血が多くなります。
- 妊娠
胎盤にトランスフェリン受容体が発現し、トランスフェリンと結合した鉄は優先的に胎児に運ばれるため、母体は鉄が不足しやすくなります。妊娠後半は特に必要量が増えます。
- 出産後
乳汁中に鉄が分泌されるので母体の鉄は不足しやすくなります。
- 消化管の出血
痔、消化管の潰瘍や腫瘍など。
- アルコール常飲者
活性酸素により赤血球膜が障害を受けやすい。アルコールにより骨髄抑制が起き、鉄の取り込みが低下します。ビタミンB6の不足でヘム合成が抑制されます。アルコールが粘膜を刺激して、消化管出血を起こすことがあります。腸の働きが悪くなり、鉄の吸収率の低下につながることがあります。また、アルコールによる葉酸の利用障害は巨赤芽球性貧血をもたらします。
- 運動選手
活性酸素により赤血球の膜が障害を受けます。また、足底に加わる衝撃で赤血球が潰されます。汗からの鉄の喪失が増えたり、筋肉肥大にともない鉄の需要が増えます。
- 献血
最後に
貧血には至らない鉄不足によりさまざまな心身の症状を呈します。医療機関の血液検査でフェリチン、MCV、UIBC、Feなどで鉄不足を確認したら上記のような原因があるかもしれません。医師と相談の上、鉄を補いながら、生活を見直したり、必要に応じて消化管や婦人科の精査をしましょう。