-追憶編-
「受験生の皆さん、ラストスパートですね」
「体調管理が大事ですからね」
「体調だけはくれぐれも気をつけてくださいね」
ニュースキャスターが、
受験生を盛り立て心配をする季節。
もうそんな時期かと、
吹雪のセンター試験を思い出す。
今は大学入試共通テストと名前を変え、
2日間かけて、
才能や努力、勝負強さや運が試される。
将来を左右する高校生活の締め括り、
懐かしい思い出が蘇る。
-高校時代-
その日は朝から雪が降り、
緊張を忘れるくらい寒い日でした。
いつも通りの明るさを保っている子もいれば、
今にも吐きそうな子もいました。
私は両親に貰った、
太宰府天満宮のお守りをぶら下げ、
頭の中で復習しては、
悪あがきの参考書確認をしていました。
特に緊張とかはなかったのですが、
今日で何かが決まってしまうと感じながら、
カイロで指を温めていました。
そして始まる。
特別根拠がないのに、
何故か得意な国語で勢いづいたのも束の間、
数学ⅡBで序盤にどはまり…
地理で直前に勉強した範囲がでて無双、
英語は苦手なのに手応えあり、
物理でやや迷走して化学で巻き返す。
なんとも安定しない、
2日間センター試験が終わりました。
国立の理系学科を目指していたので、
本来なら落ち込んでもいい内容でした。
ただ運がいいことにその年、
志望大はセンター試験で文系科目重視、
2次試験で理系科目重視だったのです。
つまり国語と英語と地理の手応えは、
そのまま私の自信へと繋がったのです。
帰り道、
あの問題はあれだよな?
あれ迷ったけどどっちにした?
聞きたいような、
聞きたくないような、
そんな会話が電車の中を埋め尽くしました。
帰宅すると母が、
「どうやった?」
「寿司準備してあるけど」
「いやボロボロやったらこの寿司どうすんの…」
「雪降っとるから先買っとかな大変やし」
「まぁそうかもしれんけど」
「出来は普通としか言いようがない」
「普通ってなんなん?受かるってこと?」
「2次試験次第かな」
「そうか、わからんけど次次、がんばれ」
気持ち切り替えてこうみたい言われましたが、
何故か励まされたような気持ちにはなりました。
その後、
私立希望の友達が次々に解放されていくと、
国立希望者は忍耐力が試されます。
耐えに耐えて2次試験、
手応えありで合格発表までは遊びました。
合格発表の日、
家のパソコンで見ることにしていました。
気になるで一緒に見ると言い出した母、
「おぇ」
「おぇ、ゲボりそう…」
「なんで母さんが緊張しとんねん…」
「いくよ」
「……」
「どれ?何番?あるやん!」
「おばあちゃん!受かったよー!」
結果を見るなり、
祖母のいる1階にダッシュする母でしたが、
父にメールするのを忘れていたようで…
暗めの雰囲気で帰宅する父、
「え、なんでそんな暗い?」
「え?受かったんか?」
「え?受かったけど」
「連絡こんから落ちたんやと思ったわ」
「あっ!忘れとったわ」
「なんでや、送らなあかんわそれは…」
「まぁ、よかったよかった」
これは流石に少し可哀想だなと思いました。
私の大学受験はこんな感じでしたが、
当然志望校以外に行く人もいます。
大学受験はその後の人生に、
大きな影響を与えるかもしれませんが、
歳をとり社会人になると、
受験が人生の全てに感じた事も懐かしいです。
当然、人生の全てではなかったと思います。
受かった事で目標を失い路頭に迷ったり、
落ちた事で幸せな出会いが待っていたり、
受験に匹敵する出来事は何度も訪れます。
分岐点をどう捉えるかは自分次第ですが、
苦手な事を克服しようとしたり、
得意な事を伸ばそうとしたり、
学び方、覚え方、要領、持続力、忍耐力、
受験で得たものは大きいと思います。
今、妻の介護や妊娠のこと、仕事のことも、
統合失調症の勉強をしたり、
仕事のやり方を変えたり、
そうやって試行錯誤する訓練を、
受験の時にしていたのかなと感じます。
数々の難関を突破してきたであろう、
ニュースキャスターは流石です、
「体調だけはくれぐれも気をつけてくださいね」
最近強く思います、
人生で最も大事なのは体調と健康です。
受験生の皆さん、健闘を祈ります。