雑話183「ジャクソン・ポロック 『No.19、1948』」
今週は、この春の現代アートのオークションにて、最も高額な作品となりましたジャクソン・ポロックの「No.19、1948」をご紹介しましょう。
ジャクソン・ポロック「No.19、1948」1948年
※$58,363,750(約60億円)で落札
ジャクソン・ポロックはアメリカを代表する画家であり、抽象表現主義の第一人者です。「No.19、1948」は彼の創造力が爆発した伝説的な3年間である、1947年から1950年の間に制作された、偉大なドリップ・ペインティングの1つです。
それらは、抽象表現主義のもう一人の巨匠であるウィリアム・デ・クーニングにして、”ついにアメリカ絵画が殻を破る時が来た。アメリカ絵画に完全な革命を起こし、20世紀芸術の歴史全体を変える過程に入ったのだ”と言わしめた、驚くべき、創意に富み、そして完成された作品です。
ポロックが最初に絵具を注いだり、垂らしたりする実験を始めたのは1943年でした。
ジャクソン・ポロック「ポーリング(注ぎ)による構成Ⅱ」1943年頃
※彼の最初期の注ぎのテクニックを使った作品
しかし、キャンバスの表面に直接絵具を塗ることを止め、上方からのしずく、ハネ、こぼれでできた複雑なベール状の表面のみで構成された、完全に自由形状の作品を作るようになったのは、1947年以降でした。
1943年の初期の実験は、ポロックは当時の超現実主義者やアメリカの前衛美術に見られたオートマティスム(自動記述)の精神に従ったものでした。
ポロックは、この時期の彼の作品をしばしば覆っていた、特徴的で、暗号風の形象的な筆跡を、さらに自由にするために、上図のような注ぎの手法を一時的に使ったのでした。
ジャクソン・ポロック「秘密の守護者たち」1943年
※暗号風で形象的な筆跡で満たされています
こうした作品において、彼の絵画の発展の中心となったのが、1946年頃に床の上においた状態で作品を描こうという決断でした。
床の上のキャンバスの上で制作中のポロック
ポロックが子供のころから知っていたナバホ族の砂絵画家の技法をまねて、床の上に絵画を置いたことは、ポロックの制作手法に驚くべき違いを生み出しました。
それは単に、絵筆で直接塗る代わりに、表面に絵具のしずくやこぼれを置くことを助長しただけでなく、彼に全方向から描くことを可能にし、トーテム信仰的、儀式的と同様に、全体主義的な存在として、キャンバスやその画像を扱うことで、表面全体を同じように、分け隔てなく扱うことを促進したのです。
これらオーソドックスではない描画手法の単純な特徴は、ヨーロッパ発祥のイーゼル絵画の伝統からの革新的な逸脱に、強烈な衝撃を与えることになるのです。
さらに、土着のアメリカの伝統との明らかな関連のお蔭で、ポロックの作品は明白にアメリカの伝統の中に位置されるという利点も生み出しました。
「No.19、1948」の一部のアップ
キャンバスから離れて、空間の中で制作するこの手法の、自然発生的で即時的なところは、ポロックを開放し、彼にすぐさまこの新しい手法に対する優美な熟達とさえいえる、驚くべき手腕に会得させました。
その彼の熟達こそが、秩序と混乱の間を大胆にバランスを取る行為を図式化している「No.19、1948」のような、驚異のエネルギーと多様性の新たな自由形状の構図を生み出したのです。




