絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話 -93ページ目

雑話185「奇跡のクラーク・コレクション展」

現在、兵庫県立美術館で開催中の「奇跡のクラーク・コレクション-ルノワールとフランス絵画の傑作展」に行ってきました。


絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

クラーク・コレクションとは、アメリカ人の大コレクターであったクラーク夫妻が、ルネサンス時代から19世紀末までの西洋美術を幅広く集めた世界有数の美術品コレクションです。


会場で最初に出迎えてくれるのは、フォンテーヌブローの森の絵で有名な19世紀の風景画家カミーユ・コローです。


「ボッロメーオ諸島の浴女たち」は、コローが70歳ころに描かれた作品で、靄に包まれたような晩年の作風の好例です。


絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

カミーユ・コロー「ボッロメーオ諸島の浴女たち」1865-70年

画面を支配するのは、逆光を浴びて湖から伸びる巨大な樹木であり、それが情景全体に囲いの中にいるような秘められた印象を与え、右側の岩と左側の藪に覆われた土手がさらに強調しています。


コローは上塗りの絵具を微妙に塗り重ねることで、葉叢を通り抜けさざ波が立つ湖面に反射する柔らかな陽光の感覚を、見事に捉えています。


絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

「ボッロメーオ諸島の浴女たち」の建物と2人の浴女

遠くにかすんで見える建物の存在によって、この情景は日常の世界からユートピア的な妖精の国へと誘うのです。


19世紀の風景画家たちの次に現れるのは、モネの作品群です。かなり初期のものから展示されていますが、その中でもノルマンディーの奇岩を描いた「エトルタの断崖」に惹かれました。


絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

クロード・モネ「エトルタの断崖」1885年

ここで、モネはいつものように、光と動きの束の間の効果を捉えようと精魂を傾けています。


柱の形をした岩の先端は早朝の光に照り輝き、浸食作用を受けた岩の起伏は小さく波打つ海にゆらゆらとその姿を映しています。


絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

「エトルタの断崖」の部分

エトルタで制作中のモネに遭遇した作家のモーパッサンはその時のことを以下のように述べています。


”モネは描く題材の前にじっとたたずみ、太陽と影を観察し、降り注ぐ光や過ぎ去る雲をわずかな筆遣いで巧みに描き出していた。エトルタの断崖の白い岩肌にきらめく光線を彼が捉えるのを私は目の当たりにした。”


モネ、ピサロ、ドガなどの印象派の画家たちの後には、当時彼らのライバルであったアカデミーの画家たちの作品が展示されています。


ウィリアム=アドルフ・ブグローは、フランス・アカデミーを代表する画家でしたが、彼は特に女性像でよく知られています。


絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

ウィリアム=アドルフ・ブグロー「座る裸婦」1884年

「座る裸婦」でも、彼の多くの作品と同様に、モデルの肌の色合いや難しいポーズを的確に捉える画家の技量は注目に値します。


浴女の柔肌は背景の固い岩と並置することで強調され、モデルの姿勢は完璧な技量と解剖学上の正確さで描かれています。


絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

「座る裸婦」の手足のアップ

※間近で見るとその質感に驚かされます!

当時の人たちはブグローの職人技に驚き、アメリカの画家ベックウィズも、ブグローの手足の描写について「驚くべき気品と均衡」と称賛するほどでした。


展覧会のフィナーレを飾るは、最大の目玉であるルノワールの作品群です。初期のものから晩年のものまで合計22点の傑作が展示されています。


「鳥と少女(アルジェリアの民族衣装をつけたフルーリー嬢)」は、ルノワールが1882年にアルジェリアに旅行した時に描かれました。


絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

ピエール=オーギュスト・ルノワール「鳥と少女(アルジェリアの民族衣装をつけたフルーリー嬢)」1882年

晩年にルノワールがモデルの名前を述べたことから、このような副題がついていますが、実際にはフルーリーという名のアルジェリア総督は存在しておらず、絵の中の少女は特定されていません。


ルノワールの多くの作品と同様、この作品も肖像画であると同時に風俗画でもあるようです。


風俗画として考えれば、伝統的にエキゾチックな異国の衣装をまとったヨーロッパ人モデルを描いた作品と見るべきですが、この作品は実際にアルジェリアの家で描かれており、モデルの金髪と白い肌のみが「異国」を示していません。


絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

「鳥と少女(アルジェリアの民族衣装をつけたフルーリー嬢)」の少女と鳥

ルノワールは柔らかい質感のある光で画面を満たしています。オレンジと青の色調がいたるところで競い合う画面は、サッシュの鮮やかな赤とスカーフの濃い緑がハイライトになっています。


絵の大部分は薄塗りですが、人物の衣装などには、絵具が厚く塗られています。


最近は、市場を席巻している現代アートに注目が集まりがちですが、こうして多くの印象派の名品を目にすると、その幸福感で満たされていたり、または叙情的だったりする画面に、久しぶりにほっとさせられるものを感じました。


やはり印象派の芸術はいいですね!


「奇跡のクラーク・コレクション-ルノワールとフランス絵画の傑作」は兵庫県立美術館にて9月1日まで開催されます。