雑話38「光の伝道師・・・ゴッホ」
現在、損保ジャパン東郷青児美術館が所蔵するヴィンセント・ヴァン・ゴッホの『ひまわり』は日本で最も有名な西洋絵画かもしれません。
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ「ひまわり」1888年作
バブル経済の絶頂期を控えた1987年、落札価格が約58億円と前例のないほどの高額となった「ひまわり」は、その法外な価格に対する様々な批判とともに大変な話題となりました。
購入後一般公開されると、年間来場者数が多くて3万人の東郷美術館に、半月で約3万5千人が訪れる程の人気でした。
ゴッホの絵の特徴といえば、激しい色使いと独特の力強い筆遣いでしょう。
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ「芸術家としての自画像」1888年作
彼は印象派の明るい色使いに影響を受けて、オランダ時代の暗く沈んだ画面を鮮やかな光に満ちたものへと変えていきましたが、それは印象派のように外光の光を色彩によって表現しようとしたからではありません。
牧師になる夢を志し半ばで諦めたゴッホにとって、絵画は人々に救いを与える手段でもありました。
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ「種を蒔く人」1888年作
以前よりキリスト教的な画題を描いてきたゴッホは、放射光のような色彩の振動を持つ画面を発見したことで、新たな宗教画を創造しようとしていました。
つまり、彼の印象派よりさらに鮮やかで、時にはどぎついまでの色使いは、光輪の描かれた宗教画のように、人を慰める永遠的なものを創造するために使われたものだったのです。
また、パリで新印象派のシニャックと出逢い、その影響を受けて取り組んだ点描画は、その後、点と縞を組合せた独自の筆遣いへと発展していきます。
特に、入院していた精神病院のあったサン・レミにおいて、その筆遣いが磨かれる事となりました。
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ「星月夜」1889年作
サン・レミは、オリーヴ林、糸杉、石切り場や峡谷など荒涼とした景観が大半を占めているような場所で、それはゴッホにとって描くのに抵抗感のある、異質な感じのする対象でした。
ゴッホは、力強く意志的な輪郭と、時に渦巻くような筆遣いによってサン・レミの風景に取組みましたが、それは彼が自然と闘うための武器として意識的に作り上げた様式だったのです。
彼は1890年に若干37歳でピストル自殺してしまいます。
さらにゴッホが画家を目指したのが遅かった事もあり、作品数は限られていて、それが前述のような作品価格の高騰に繋がった理由の一つです。
生涯で絵が一枚しか売れなかったと言われ、最後まで世間に理解されなかったゴッホが、現在の自分の絵の評価を知ったらどのように思うのでしょうね。
