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雑話50「モディリアーニの伝説と芸術②・・・芸術」

下の絵はモディリアーニの典型的なスタイルの作品です。


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アメデオ・モディリアーニ「大きな帽子を被ったジャンヌ・エビュテルヌ」1918年


まるで、エジプトのネフェルティティのような長い首を持つこの肖像画は、輪郭や帽子のラインと相まってとても優美な印象を与えています。


このモデルは彼の妻であったジャンヌ・エビュテルヌですが、顔も首もかなり縦に長く伸ばされ、瞳は描かれておらず、彼女の写真と比べるとかなりデフォルメされているのがわかります。


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ジャンヌ・エビュテルヌ


モディリアーニの描く肖像画の多くはかなり単純化されていて、表情らしいものが見当たらないものも少なくありません。


特に女性がモデルの場合は顔の特徴や内面の感情があまり表現されない、類型化された表現になることがあり、それはモディリアーニが抱いている一種の理想像に近づけて描こうとしているからだと言われています。


その理想像は彼が数年前に彫刻のために何度も描いたカリアティード像とよく似ています。


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アメデオ・モディリアーニ「カリアティード」1911-12年


カリアティードとはギリシャ神殿など古代建築に用いられた女性の姿を模した柱を意味する言葉です。


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エレクティオン神殿のカリアティード


パリに出てくる以前から彫刻家への夢を持っていたモディリアーニは、パリで彫刻家のブランクーシと知り合ったことで、その夢が再燃します。


彫刻家の夢は健康上と経済的な理由で断念せざるを得なかったようですが、ブランクーシや非ヨーロッパ美術の影響を受けながら、彫刻に取り組んでいた経験が独特のモディリアーニの様式を生み出しました。


彼の様式とは、対象を単純化して本質的な要素に還元したり、簡潔でありながらヴォリュームを暗示し、なおかつ優美さと装飾性を兼ね備えた輪郭線を生み出すことにあるのですが、それはすべて彫刻の経験のお陰だったからです。


単純化や類型化された結果、一見誰もが同じように描かれ、また仮面のように表情に乏しいモディリアーニの肖像画ですが、実はモデルの口や眼の微妙な変化や僅かな首の角度によってモデルの内面を巧みに描き出しています。


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アメデオ・モディリアーニ「ピンカス・クレメーニュ」1916年


例えば、上のリトアニア出身の芸術家のクレメーニュという画家を描いた作品を見てみましょう。


絵の中で無表情に描かれたクレメーニュですが、画家のほうに視線を向けておらず、まるでポーズをとるのを恥ずかしがっているかのようです。


よく見ると、視線だけでなく顔そのものを軽くそむけるような仕草をしていますし、口元も困ったように軽くすぼめていて、モデルの繊細な内面を伺わせます。


冒頭の単純化されたジャンヌの肖像も少し傾けた顔に指を置くポーズや、滑らかに塗られた顔や上半身と厚みのある濃厚に塗られた背景との対比によって、彼女の優美で調和の取れた人柄が際立って見えます。