絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話 -200ページ目

雑話78「デュシャンとレディメイド」

今週は印象派の時代より少し現在に近い時代の芸術を取り上げてみました。


突然ですが、下の写真は何でしょう?


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これはマルセル・デュシャンという芸術家が作った「泉」という芸術作品です。


しかし、これはどう見ても男性用トイレでよく見かける小便器のようです。


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チェスを楽しむマルセル・デュシャン

※国際大会でフランス代表になるほどのチェスの名手でもありました


実際、これは陶製の男性用便器をひっくり返してサインをしただけのものです。


これを芸術作品と呼ぶなどとは悪ふざけとしかいえないようにも思えますが、デュシャンはこのような大量生産された既製品を使った作品を「レディメイド」と名づけ、それを自身が委員をつとめる展覧会に出品しました。


そして、彼がこの「レディメイド」を作ったことには悪ふざけ以上の明確な意図がありました。


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マルセル・デュシャン「自転車の車輪」1913/51年

※最初のレディメイドの作品


大量生産された日用品を単に芸術家が選ぶことによって芸術作品とみなされるという発想は、これまで培われてきた芸術の土台そのものに挑戦しているのです。


なぜなら、その発想は熟練と唯一性が必要な特性だとされる芸術作品の権威を失墜させたばかりでなく、それらの製品が画廊や美術館に置かれると芸術作品になるという文化的変質を意味したからです。


もちろん、この発想には作家が主張するだけでは足りず、実際に作家以外の第3者が既製品を芸術作品と認めることが前提条件なのですが、デュシャンのレディメイドの作品はそのコピーも含めて有名な美術館に展示されており、彼の意図は見事に達成されています。


このレディメイドの発想はその後アメリカンポップアートなどのコンテンポラリーアートに重大な影響を与えましたが、その影響は現在活躍中の芸術家にも及んでいます。


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アンディ・ウォーホル「キャンベルスープ缶」1962年

※ウォーホルはアメリカ人に馴染み深いキャンベルスープを題材にしただけでなく、マリリン・モンローなど芸能人なども取り入れて、人気を博しました


この「芸術と無関係に見えるありふれた日用品でも芸術家が芸術作品として選べば、それが芸術になる」という発想はその後の芸術に対する意識を革命的に変えましたが、だからこそ何をどう選ぶかが大切ではないでしょうか?


デュシャン以降、一部の芸術家には「芸術家が芸術といえば、それが何であれ芸術になる」と言わんばかりの無節操さが目に付きますが、それが単なる流行なのか、それとも新しい価値観として定着していくものなのか、今後の展開を見届けていきたいですね。