雑話76「MoMAのアヴィニョンの娘たち」
GWのニューヨーク出張の機会を利用して、ニューヨーク近代美術館(通称MoMA)に行ってきました。
ニューヨーク近代美術館正面入口
その名の通り、近代美術の名品が多く揃っているMoMAですが、実は所蔵作品はすべて寄贈されたもの、もしくは寄贈されたものを売却されたお金で購入されたものばかりだそうです。
寄贈された名品の中には、売却すれば作家の最高価格記録を塗り替えるだろうと思われるものも多くあり、改めてアメリカの富裕層の桁違いの経済力を思い知らされました。
アンリ・ルソー「眠れる女」1897年
さて、今回見た作品の中でもっとも印象深かったのが、有名なピカソの「アヴィニョンの娘たち」でした。
「最初の真の20世紀絵画」と呼ばれるこの絵画を前にすると、まずその大きさに圧倒されます。
パブロ・ピカソ「アヴィニョンの娘たち」1907年
そして、その大きなキャンバスに負けないほど伸びやかで堂々たるポーズをとる裸婦たちや、背景のカーテンに使われた青空を思わせるような青からは、すがすがしさを感じました。
MoMAで展示中の「アヴィニョンの娘たち」
実は、この作品は完成した当時、ピカソの親しい知人も含め、見た人のほとんどに激しい嫌悪感を抱かせました。
以後共同でキュビスムを追及していくことになるブラックにさえ「それはまるで君(ピカソ)がわれわれに引き綱を食べ、灯油を飲むように求めているかのように見える」といわせたほどの強烈なインパクトを周囲に与えたのです。
しかし、今ではむしろギリシャ彫刻の神々の像でも見るような、落ち着いた神々しいとさえいえる印象を与えています。
さて、もう一つ驚いたのが、作品の状態です。
※裸婦のオレンジとカーテンのブルーの鮮やかさがとても印象的でした
まるで、つい最近仕上げたかのように、色彩はみずみずしく、100年も経過した作品にありがちなすすけて黒ずんだ感じもありません。
これはMoMAの保存部門が非常に優秀である証拠といえるのですが、調べてみると2003年から2004年にかけて大掛かりな補修が行われたようです。
マイクロスコープでチェックする係員
その処置はかなり念の入ったもので、描写の技法分析のために、X線を使って透視したり、表面の汚れやニス、以前に行われた修復のための加筆などを取り除いた後に、キャンバスの形を整えて、絵具が欠けた部分に加筆を施していました。
元の画像とX線で透視した画像
その結果、薄汚れた感じだった絵に完成当時のみずみずしさが甦ったのです。
クリーニング前
クリーニング後
完成当時に近い状態で見ることができるのは素晴らしい体験ですが、作品の汚れや傷みもその作品の歴史の一部とも言えるので、すっかり綺麗にしてしまうのもちょっと寂しい気がしました。



