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雑話156「ガレ・・・ガラスの詩人」

ガレの花瓶やランプは、西洋アンティークの分野では、最も人気のある作品のひとつです。


私たちが目にする多くのガレの作品は、カメオ・グラスと呼ばれる、層にしたガラスを彫ってカメオのような趣を出したものですが、それらのほとんどは普及品としてガレの工房で大量生産されたものです。


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エミール・ガレ「カメオ・グラス」1900年頃

ガレの作品には、そうした普及品とは別に、数点しか作らなかった高級品もありました。ガレがその制作のために、さまざまな技法を考案し、苦労して完成させた特別なガラスの作品たちは、この世のものとも思えない不思議な光を放っています。


今週は、そうしたガレの特別な作品をご紹介しましょう。


まず最初は、1900年に作られた「ラン」です。この作品は、「タコのような身振り」で花弁が本体を抱くような形に表現したカトレアが特徴的です。


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エミール・ガレ「ラン」1900年

この立体的な花弁にはアプリカシオンという、異色のとけたガラス片を部分的に貼付する方法が使われています。


宙吹き職人は、繰り返し行なわれる加熱と成形のために、幾度となく炉に通う必要があり、職人は高度の技術と忍耐を必要としました。ガレはこの技法を発展させ、彼の晩年の主要な自由形態の作品を作りました。


次にご紹介するのは、人権問題に発展した「ドレフェス事件」で決定的な役割を果たしたジョセフ・レナックという政治家にガレが贈った作品です。


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エミール・ガレ「タツノオトシゴ」1901年

人間の幻想的な夢に惹かれたガレは、海の生物に同様の神秘的な興味を感じ、それらをモチーフに様々な作品を作りました。


この作品では、尻尾を花瓶の取っ手に仕立てたタツノオトシゴに化石のような風合いを与えたので、前史時代のモノと見ることもできそうです。この花瓶にも前述のアプリカシオンという技術が使われています。


ガレはまた、昆虫をモチーフにした作品も多く手掛けています。1904年の「トンボ」の杯はガレ晩年のガラス作品のひとつです。ここでは前述のアプリカシオンという技法にくわえ、マルケットリーという一種の象嵌の技術が使用されています。


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エミール・ガレ「トンボ」1904年

これは、象嵌する形に切られた色ガラスの小片を鋏で融解したガラスの塊にはめ込み、鋳造台の上で転がして、挿入物がしっかり埋まり、表面が平らになるように整えるといった工程で進められるものです。


その原理は簡単ですが、実際に行なうのは容易ではありません。挿入する色ガラスの小片の膨張率はそれぞれ違うので、薄片に裂けてしまうことがあるからです。


そこで、膨張と収縮の速度が同程度の色ガラスを選び、場合によっては幾度も加熱と冷却の繰り返しが行なわれ、割れをなくす努力をしなければなりませんでした。


さて、ガレは1904年に、ガレは「海草と貝殻のある手」という、力強いが謎めいた、象徴主義の作品を発表しました。この手の語るものは、ガレの個人的状況に関っています


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エミール・ガレ「海草と貝殻のある手」1904年

彼はこの1904年の夏、最後のときが迫っていることを悟りました。しかし、彼には信仰があり、現世への別れの挨拶には希望がこめられていました。生と死の二元性がしみわたったこの作品の両義的な性格はここから生じているのです。


最後に、ガレの生涯の記念碑ともいえる作品をご紹介しましょう。「ひとよ茸」とよばれるこの作品は、高さが83cmもある壮大なものです。


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エミール・ガレ「ひとよ茸」1904年

この3本のグロテスクな形の茸は、精力に満ちた青春期から、笠がぎざぎざになった成熟期までの成長の3段階を表現しています。さび色がかった茶、膿のような黄、それらは毒をもっています。


死が近いことを悟っていたガレにとって、もはや自然の無垢な魅力は去り、死と腐敗のぞっとするような認識に取って代わられたのでしょう。


ガレはこの年の9月23日に亡くなりました。葬儀の翌日の新聞には以下のように報道されました。


周知のように、故人は花に情熱をそそいだ。

彼は、花のフォルムの気まぐれな線や、花の色合いのデリケートな色調の研究に生涯を費やした。

彼の才能に啓示を与えた花々は、棺のまわりに今を盛りと咲いていた。

この痛ましい儀式に添えられた唯一の華やぎだった。