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雑話167「ロスコ、最も高額な現代アート」

2012年の5月、ニューヨークで開催されたクリスティーズの現代アートのオークションにおいて、マーク・ロスコの「オレンジ・レッド・イエロー」が約8700万ドルで落札され、オークション史上最も高額な現代アートの作品となりました。※1


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マーク・ロスコ「オレンジ・レッド・イエロー」1961年

※1 オークション以外ではさらに高額な価格の作品があります!

一見、キャンバスいっぱいにオレンジの四角を描いただけに見える作品が、なぜそれほど高い評価を受けるのか、不思議に思う方も多いかもしれません。


写真からでは分かりませんが、この作品の前に立つとその大きさに驚かされます。そのサイズは236.2×206.4cmという巨大なものです。


ロスコがこのような大きな作品を描いた理由は、絵画と観るものの感覚的な距離を近づけて、その中に取り込み、外から眺めるのではなく、色彩や形態を体験させようとしているからなのです。


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「オレンジ・レッド・イエロー」と前を歩く鑑賞者

ロスコは絵のサイズについて以下のように述べています。


ルネサンス以来、小さな絵画は小説のようなものである。

(一方)大きな絵画は(見る)人が直接参加できるドラマのようなものである。


その巨大なキャンバスには、冷たく薄く塗られたアカネ色の背景のうえに、暖かく、燃えるような、赤みがかったオレンジの四角い広がりが滲み出ています。


誇張された色のデリケートな組み合わせと、輝く強大な四角の色面によって、観るものは絵の色彩に浸されるような感覚に陥ります。


それは、まるで辺りの景色に暖かい影を投げかける夕暮れの雲のようで、揺らめくエネルギーをもって、唸るような音が実際に響き渡っているかのようです。


その感覚は、背を向けた太陽を背中に感じるように、作品が放出するものによって感じられる圧倒的な存在感なのです。


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自らの作品の前に立つマーク・ロスコ

さらに、ロスコは”鑑賞者は、自らが絵を描く時の作品との距離と同じ18インチ(約45.7cm)離れて鑑賞すべきだ”と主張しています。


実際にその距離から見ると、ロスコの驚くほどデリケートで、鮮やかで、活気のある筆使いの複雑さと手腕がよく分かります。


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「オレンジ・レッド・イエロー」(右上部分)

薄められて所々透明になったアカネ色の下地は、背景に、粗野で、何色かの光の層のような肌合いの質感を与えています。


さらに、3つの主要な長方形の色の雲の端を描いている縦方向の筆使いは、作品の表面に劇的な効果の感覚と、互いに表れたり溶け込んだりしている雄大な風景画のシリーズを思わせるバリエーションを与えています。


これらの効果は、デリケートな筆使いを重ねて、絵画の表面を徐々に築いていき、色のついた形をゆっくりと浮かび上がらせていくという規則正しく、骨の折れる作業の結果です。


こうして、ロスコは作品に色の息吹を与え、表面に独自の生き生きとした命の感覚を与えようとしたのです。