控訴しないことで、政府の良識を示すことが出来ることがある | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

加藤勝信厚生労働大臣は、私が知っている政治家の中でも良識のある、信頼出来る政治家の一人であるので、多分、この判決に対しては控訴しないはずだと思っている。

いわゆる黒い雨訴訟である。

行政庁としては、どこかで線引きをしてもらった方が原爆手帳交付のための認定手続きが簡便になるからありがたい、ということになるのだろうが、黒い雨訴訟における線引きはどう見ても合理性を欠いており、川の向こうとこちらでは取扱いを異にする、というのは原爆被爆者の方々にとっては納得出来なかったはずである。

行政訴訟を提起しないとこういう理不尽な行政を是正出来ない、というのは気の毒なことであるが、地裁で一応の司法判断が出された以上、当該判断に一見明白な瑕疵がない限り、行政庁としては地裁の判断を尊重して原爆被爆者の早期救済を急ぐべきだろう。

三審制だから、上訴して最後は最高裁判所の判断を仰ぐべきだ、などと仰る方も法律実務家の中にはおられるかも知れないが、ここで控訴すれば政府の良識を疑われることになることは必至である。

既に広島市も広島県もそういう意思を固めているようだから、厚労大臣もこれを受け容れられた方がいい。