検察庁の出方が注目されるという一点では私も郷原氏と同じ見解に立っているが、証拠隠滅等の虞があるから検察庁は直ちに強制捜査に着手すべし、という郷原氏のご主張にはさすがに首をひねらざるを得ない。
最低限、告発の当事者からの事情聴取ぐらいはしておかないと、あまりにも拙速だということになりかねない。
それにしても実に不思議な事件である。
何故検察や警察に言わないで、国会議員の事務所に口利きを頼んできた業者が週刊文春にだけ告発したのだろうか、という疑問がある。
口利きを依頼した業者が、自ら金銭授受の現場で会話を録音したり、写真を撮ったり、さらには金銭授受に先立って相手方に手渡す紙幣の番号を記録したりするものだろうか、という疑問もある。
ずいぶん筋悪の事件だな、と印象だ。
まるで相手を陥れるために色々工作したかのような外観を呈している。
まあ、国会議員の事務所に口利きを頼んでくる業者には碌でもないところが多いだろうから、うっかり乗せられた甘利氏の事務所も軽率極まりない、やっぱり碌でもないな、と言わざるを得ないが、だからと言って告発に及んだ業者の言うことは１００パーセント間違いないなどとはそうそう言えないものだ。
話半分とまでは行かなくとも、告発業者の証言の信用性を確かめるためにはそれなりの調査が必要になる。
週刊文春の記事が検察庁にとって捜査の端緒になることは間違いないが、だからと言って週刊誌の記事だけで強制捜査に踏み切るようなケースはないはずである。
確かに直ちに強制調査に踏み切らないと関係者が重要な証拠を隠匿したり、関係者が口裏合わせをしてしまうという虞があることは否定し難いが、告発者が本当に刑事制裁を求めているのだったら、まずは司法当局に告発したはずである。
週刊誌に告発した、というのがどうにもおかしい。
背後に何か特別な政治的思惑があるのではないか、と思えてならない。
事実関係調査のため１種間程度時間がかかるのは、止むを得ないだろう。