これは、書いておかなければならない。
駅頭で最後のお礼の挨拶をしている私の目の前をうろうろしている男の子がいる。
階段を上ったり降りたり、タクシー乗り場の方に行ってぶらぶらしているかと思えば、また階段のところに戻ってくる。
もう10時を過ぎている。
こんな時間にこの子は何をしているのだろうか。
小さなリュックみたいなものを背負っている。
誰か迎えの人が来るのを待っているのかしら。
指を折ったり、空の方に手を伸ばしたり、あちこち動き回ったりと、少し落ち着きがない。
どうしたのかなあ、と思ってみていると階段の上の方に行って、話し込んでいる3人の女性の内の一人のスカートを引っ張る。
帰ろうよ。
声は聞こえないが、はっきりそう母親に訴えている。
しかし、母親は連れの女性達との話に夢中で、子どもの手を追い払う。
子どもの顔を見ようともしない。
うるさい。あっち行ってなさい。
声は聞こえないが、私にはそう聞こえた。
その男の子は小学校の高学年ぐらいか。
階段を下りて、あっち行ったりこっち行ったり。
段々その男の子が気の毒になる。
母親のところに行って、母親にまとわり付いてなんとか一緒に帰ろうとする。
その回数、5,6回。
11時30分くらいまで3人の女性は階段の上のところで身振り手振りを交えて話し続けていた。
あなた、それ、ネグレクトですよ。
その母親と離し続けていた二人の女性は、男の子のことが眼中にないらしい。
あなたたち、それ、ネグレクトの幇助ですよ。
1時間以上も駅の階段のところで立ち話を続ける、というのも異常だが、男の子の大事な時間を1時間以上も無為に空費させていることに母親がまったく気が付いていないらしいのが、私にはショックだった。
男の子に声をかけてみたが、その男の子は私には関心がないらしい。
ただただ、指を折り曲げたり、時々拳を握り締め、その手を2度3度振り下ろしている。
スタイルのいい女性達だが、皆、母親として、大事なことを身につけていないようだ。
困ったことである。