裁判員裁判の方が冤罪被害は少なくなる理由 | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

私は、取調べの可視化を含め、冤罪被害を無くすために努力してきました。


制度の改正は一挙には実現しませんが、21年前の東京弁護士会法友全期会の代表幹事当時から提唱してきたことが最近になって着実に実現している、と感じております。


最初は、当番弁護士制度の導入でした。

密室の取調べで虚偽自白を強要されている、冤罪の温床をなくしていくために、まず被疑者が逮捕勾留されたその時点で弁護士の助力が得られるようにすべきだ。

弁護士会の全国的な取組みが始まりました。

弁護士会では、当番弁護士基金を立ち上げ、被疑者が無償で弁護士と会って助言を得られるような制度を作りました。


逮捕されて家族や知人友人との連絡や相談のパイプを断ち切られた被疑者が、逮捕された直後に法律の専門家の話を聞くことが出来るようになった、被疑者としての権利や、捜査やその後の裁判の手続きについて公正な知識を得ることが出来るようになったのです。

当番弁護士制度が普及したことで、犯罪をやってもいない人が、深夜にわたる取調べや家族や知人友人に対する不利益を示唆されて間違った自白に追い込まれてしまう、という事態は相当回避できるようになったのではないかと思います。


取り調べ方法の可視化も格段に進んできました。

これは、裁判員制度を導入することにしたことに伴う大きな成果です。

密室での取調べが虚偽自白の温床になる。

これが取調べの可視化を求める理由です。

密室での取調べで得られた自白調書の信用性を第三者の目で検証し、時には裁判でその証拠価値が否定される、ということになりますと、取調べのあり方そのものを大きく変えていかなければいけません。


捜査そのものに第三者が介入することは許されません。

検察官がまず警察の捜査をチェックしなければいけません。

令状を発布する裁判所は、捜索差押や、逮捕令状の審査を適正に行なわなければいけません。

そして、刑事事件の審理を行なう刑事裁判所は、法廷での証人の証言に耳を傾け、法廷で有罪無罪の心証を取るようにしていかなければいけません。


最後の法廷での裁判に国民から抽選で選ばれた6人の裁判員が関与することになったのです。

これまでは法律の専門家である3人の裁判官だけで審理を行なっておりました。

裁判官と検察官の人事交流で、裁判官の潜在意識に検察官の起訴事実には間違いがない、という思い込みが刷り込まれていたかも知れません。

6人の裁判員が、普通の常識、良識を働かせることで、裁判官の思い込みを正すことが出来るかも知れません。


裁判員が世論に煽られ、あるいは世論に阿って誤った裁判をするかも知れない。

そういう危惧を持っておられる方もおられるようですが、3人の裁判官がいるわけですから、その危険性は殆どないと思います。

これが陪審員制度ですと、法律の専門家でない陪審員がとんでもない判決を出してしまうのではないか、というご心配も当然ですが、日本の裁判員制度はそういった不安が起こらないように設計されています。


いずれ国民の批判に晒される、という意識が捜査当局にあれば、当然捜査は周到で、かつ慎重になるでしょう。

勿論、公判を担当する検察官はより慎重になります。

裁判員制度というよりも、国民参加制度そのものが、日本の刑事司法を変えていきます。


冤罪を根絶する。

私たちの目標は、ここにあります。


もっとも、捜査が慎重になる余り、検挙すべき事件が検挙されない、犯罪者を野放しにしてしまう社会になってもいけません。

犯罪の被害に会う人を出さない。

国民の安全を護り、国民の安心を支える。

これも、私たちの大事な仕事です。


裁判員制度や取調べの可視化問題についての私の基本的立場をご説明しました。

皆さんのご意見をお寄せ下されば幸いです。