「まず皆さんにお詫びを申し上げたいと思います。」
開口一番、理事長がそう挨拶された。
過日仙台で開催されたセミナーの冒頭での発言である。
私も法務大臣政務官として挨拶をしたが、私の後で挨拶に立たれたセミナーの主催者としての挨拶が今でも耳に残っている。
受講者の半分が保護司さん。
残りの半分が社会福祉の仕事に関わっておられる方々である。
刑務所を仮釈放等で出所した受刑者の社会復帰をどのようにして進めるか。
高齢者の受刑者が増えているという状況の中で、どうやって再犯を防止し、社会の安全を保っていくか。
私が座長を務める法務省の再犯防止プロジェクトの課題である。
「私たちが行うべき仕事を保護司の皆さんがボランティアで担っておられた、ということを、私たちは知りませんでした。」
そう社会福祉法人の理事長が述べられたのである。
刑務所の矯正の現場で、様々な障害を抱えている高齢の受刑者の社会復帰に向けて、矯正官や保護観察所の職員、あるいは保護司の皆さんが協働している。
それはそれは、悪戦苦闘の毎日である。
世間の多くの人々は、こういった方々の仕事に目を向けない。
まさに、縁の下の力持ち。
そういう人たちの存在とこれまでの仕事振りを、真正面から正しく評価したのが、冒頭の挨拶である。
「ごめんなさい。心からお詫び申し上げます。」
「私たちの仕事を、皆さんがやってくださっていた。ありがとうございます。」
たった一言で言い尽くされている。
私は、その一言を聞くために仙台に行ったようなものだ。
その一言で、矯正と保護と福祉の連携の必要が分かった。