知恵は付則に宿る | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

2011年度に消費税を含め、税制抜本改革を行う件について党内で大激論が戦わされてきたが、今日の財務金融部会で見事に決着を見た。


徹底的な無駄の排除をはじめ行政改革を行わないで消費税の増税などを打ち出すのは、認められない、今の景気状況で本当に2011年度に消費税の増税など出来るはずもない、経済対策にもっと全力投球すべきだ、などという意見に配慮し、所得税法改正法案の付則の書き方を色々工夫した跡が見られる。


法律の本文よりも付則に大きな意味がある、付則に知恵が宿っている、ということを端的に示しているので、付則第104条の条文をご紹介したい。


所得税法等の一部を改正する法律案要綱


(税制の抜本的な改革に係る措置)

付則第104条

 政府は、基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引き上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ、平成20年度を含む3年以内の景気回復に向けた集中的な取り組みにより経済状況を好転させることを前提として、遅延なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。この場合において、当該改革は、2010年代(平成22年から平成31年までの期間をいう。)の半ばまでに持続可能な財政構造を確立することを旨とするものとする。


2 前項の改革を具体的に実施するための施行期日等を法制上定めるに当たっては、景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極め、予期せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みとするものとし、当該改革は、不断に行政改革を推進すること及び歳出の無駄の排除を徹底することに一段と注力して行われるものとする。


3 第一項の措置は、次に定める基本的方向性により検討を加え、その結果に基づいて講じられるものとする。

一 個人所得税については、格差の是正及び所得再分配機能の回復の観点から、各種控除及び税率構造を見直し、最高税率及び給与所得控除の上限の調整等により高所得者の税負担を引き上げるとともに、給付付き税額控除(給付と税額控除を適切に組み合わせて行う仕組みその他これに準ずるものをいう。)の検討を含む歳出面も合わせた総合的な取組の中で子育て等に配慮して中低所得者世帯の負担の軽減を検討すること並びに金融所得課税の一体化を更に推進すること。


二 法人課税については、国際的整合性の確保及び国際競争力の強化の観点から、社会保険料を含む企業の実質的な負担に留意しつつ、課税ベース(課税標準とされるべきものの範囲をいう。第五号において同じ。)の拡大とともに、法人の実効税率の引下げを検討すること。


三 消費課税については、その負担が確実に国民に還元されることを明らかにする観点から、消費税額が制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用に充てられることが予算及び決算において明確化されることを前提に、消費税の税率を検討すること。その際、歳出面も合わせた視点に立って複数税率の検討等の総合的な取組を行うことにより低所得者への配慮について検討すること。


四 自動車関係諸税については、簡素化を図るとともに、厳しい財政事情、環境に与える影響等を踏まえつつ、税制の在り方及び暫定税率(租税特別措置法及び地方税法(昭和25年法律第226号)附則に基づく特例による税率をいう。)を含む税率の在り方を総合的に見直し、負担の軽減を検討すること。


五 資産課税については、格差の固定化の防止、老後における扶養の社会化の進展への対処等の観点から、相続税の課税ベース、税率構造等を見直し、負担の適正化を検討すること。


六 納税者番号制度の導入の準備を含め、納税者の利便の向上及び課税の適正化を図ること。


七 地方税制については、地方分権の推進及び国と地方を通じた社会保障制度の安定財源の確保の観点から、地方消費税の充実を検討するとともに、地方法人課税の在り方を見直すことにより、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系の構築を進めること。


八 低炭素化を推進する観点から、税制全体のグリーン化(環境への負荷の低減に資するための見直しをいう。)を推進すること。


税制改革の方向性まで付則で決めておこうというのだから、凄い。

私自身は第3項以下は現時点では削除しておいた方が良いと意見を述べておいたが、政調会長から、「いろいろご意見を頂戴したが、原案で何卒ご承認頂きたい。」との発言があり、部会では原案をそのまま承認した。


参議院では今日開催予定の予算委員会は流れたようで、まだ第二次補正予算の採決の日程が決まっていない。

それなら、衆議院で来年度の本予算の審議に入るしかない、ということで、来年度予算関連の法案についての党内手続きを早急に進めようということになったようだ。


今日の段階でさらに法案の文言の修正をすると、法案の印刷等の関係で国会への法案提出の時期が大きく狂ってしまう。できればこのまま党内手続きを進めさせていただきたい、という政調会長のお願いである。


多少の問題点は残っているが止むを得ないか、ということで、幾つかの問題点には目を瞑って全会一致で原案を承認した次第である。

しかし、まあ、細部に知恵が宿ると言うか、法律の付則に、自民党の国会議員の知恵と改革の魂が宿る、と言った方が良いか。


私には、実に見事な決着のように思える。

皆さんはどのように思われるだろうか。