歴史に残るのは、おそらく所得税法改正法案の付則第104条の3項だろう。
新聞はそこまでは気が付かないし、報道もしない。
玉虫色の1,2項は、平場の議論に十分配慮した霞ヶ関文学の最高峰の文章だが、これは役に立たない。
単なる訓示規定だ、とも言えるし、政府としてこれからの困難な政治課題に取り組む気概を示した宣言だとも言える。
こんな文章は法律にはなじまない、という言い方も出来るような難しい文章だが、これで皆納得すればそれでまあいいか、といった、いわば政治的妥協の文書である。
日本の法律にこんな文章が多くなった。
それだけ政治の力や国民世論の力が強くなった、日本の政治もどんどんアメリカ化している、と言っても良いかも知れないが、文言に拘る純粋法制局的な立場からすれば、いささか首を傾げるようなことかも知れない。
そういう目で、冷静に今回の消費税増税路線明記問題を観察していただくといい。
昨日のブログで書いておいたが、これから本当に議論が必要なのは、第3項だ。
ここまで税制抜本改革の方向性を書いて、これからの税制改正の道筋を縛っておこう、というのだから、これは凄い。
税制改正の議論に長年参加してきた人でないと、簡単に結論を出せないようなことが全て一定の方向性を付けて明記されている。
これがそのまま成立すれば、ついに平成21年の予算編成で財務省の悲願が成就し、周到な財務省戦略が奏功した、と言って良いかも知れない。
税制調査会には、インナーと呼ばれる幹部会がある。
この幹部会のメンバーこそが、現在の日本の政治の根幹を決める政治家だ。
このメンバーに選ばれるということは、これまでの日本の税制改革を取り仕切ってきたベテラン議員からその能力を認められた、という証拠である。
今回の付則案の作成については、1回生の木原誠二議員が深く関わっていた、とニュースステーションが報道していた。
官僚出身者についてはマスコミが色々腐すが、最後に誰もが頼りにするのが現在でも官僚出身議員、ということも知っておいた方がいい。
いずれにしても、インナーに人を得ることが大事だ。
中でも、税制調査会の小委員長が重要である。
町村信孝、伊吹文明、柳澤伯夫、など歴代の小委員長は、皆、自民党の知恵袋である。
今回表面に出ることが少なかった与謝野馨経済財政担当大臣も、小委員長の経験者だ。
こういう人たちがいる限り、自民党は、壊れそうで壊れない。
だから、麻生内閣は、倒れそうで倒れない。
多分、これからの日本も、沈みそうで沈まない。
私はそう見ている。
確かに、それだけの底力が日本にはある。
民主党は、選挙のことしか頭にないようだが、それでは困る。
もっと政策に強い人材を抜擢して、自民党と堂々と渡り合って貰いたい。
それにしても、民主党には幹部の顔ぶれをそろそろ入れ替えていただきたい。
現場で合意した内容をたった一人の幹部がひっくり返す。
信義も何もあったものではない。
西松建設の裏金事件やマルチ商法支援議連問題、朝日がつつき始めた不透明政治献金問題などの展開に内心どきどきしている国対委員長など、真っ先に交代させるべきではないか。
この「偉大ではないイエスマン」は、日本の政治に対する若い世代の期待を潰すだけの仕事しか出来ないようだ。