【概要】 先の 12AT7シングル/バイアス・ゼロ/A2級アンプ の実験同様に、12AU7をシングル/バイアス・ゼロ/A2級で作動させ、BGM用ミニアンプとしての実用性があるのか、試してみました。

12AU7 と 同等管の 5814

【動機】 先に12AT7シングルアンプを実験し、小さな作業場のBGM用には出力数百mWでも十分なことがわかり、とても気を良くしているところですニヤリ ネットに広がっている「ミニワッター」と言う素晴らしい文化を知ったおかげです。それがなければ、こんな小さな出力の真空管アンプを試してみることはなかったでしょう。規格表を見ると 12AU7でもバイアス・ゼロ、A2級シングルで数百mWクラスのアンプができそうに思えました。ただ 12AT7に比べて感度が悪いので、大きな励振電圧が必要です。汎用オペアンプでこのような「ゼロクロス」の「大きな励振電圧」のドライブができるのか、試してみることにしました爆  笑

 

【増幅回路】 12AU7のカソードをグランドに接地して、バイアス・ゼロ(Eg 0V)で使います。 Pd(max) 2.75W なので、Eg 0Vの Ep-Ip曲線を辿って Ep 135V, Ip 18mA, Pd 2.43W を動作点に選びました。7kΩ負荷を仮定して、規格表から Ep-Ipの変化を読み取り、下図にプロットしました。不正確ではありますが、Eg ±10Vくらいまではそこそこリニアリティのある増幅ができるのではないかと思われます。もちろん 「Eg > 0 の領域で十分な Ig の供給ができれば」 と言う前提ではありますが。

Eg変化による 負荷線上のIp, Epの移動

(Ip-Ep曲線から読み取り)

 

 12AU7は12AT7より感度が悪い(1/3程度?)です。ドライバのオペアンプには NJM2114DD を用い、電源電圧は±21Vにしました。AF入力 1.41Vpp(0.5Vrms)を仮定し、30Vppのドライブ電圧を作り出すのであれば、21.3倍、26.6dBのゲインが必要です。非反転増幅が51倍、34dBですので、数dBのNFBが掛けられます。

 

普通に鳴りますが性能保証はありません オペアンプドライブの参考文献はこちら

 

【結果】 12AU7同等管の5814で試してみました。Ep 135Vで Ip 16-17mAでした。オペアンプでは励振電圧不足が心配でしたが、八畳ほどの部屋で能率86dBのスピーカーで聞く限り、許容上限まで音量を上げても破綻には至りませんでした。ベースもハイハットも普通に聞えています*。Eg±15Vまで使うと、コンプレッションが掛かり始めているでしょうが、出力は800mWくらいではないかと思います。バイアス・ゼロのA2級で、12AT7の時より励振電圧が3倍程度必要ですが、一段のオペアンプドライブでも実用上問題なさそうです。(二段に分けてのドライブも試してみましたが、変わりがなかったので一段に戻しました。)

 NJM2114DDは他の汎用オペアンプより少し高電圧まで使えるので、AMP-1DXX改の6AQ5(T)シングルでも使いました。6AQ5の場合には、通常の小電力のBGM用途(~500mW)では Ig が流れないA1級範囲内で作動してるものと推定しています。一方、今回の実験では、Egのゼロクロスの動作なので、非対称の大電流出力と大きな励振電圧が同時に必要で、オペアンプにとってはかなり厳しい負荷と思われます。これに耐えているNJM2114DDは、かなり頼りになるオペアンプだと感じました。

 音質は先の12AT7がスッキリ系、12AU7 や 5814が暖色系の気がしますが、どちらも不満なく、正直言って違いは良く分かりません爆  笑 

 

* ベースとハイハットが普通に聞え、歪みを感じなければそれで「ハイ合格」です。 あ、そう言えば「歪み」は数%でも聞いて分かるものだってどこかで読みました。確かに エキサイター/エンハンサー (以前に作成)で、クリーンにごくわずかオーバードライブを混ぜただけでも「歪み」ははっきり分かります。数%かどうかは分かりませんが、人間の耳は「歪み」には敏感な気はします。)

Table バイアスゼロで使えそうな手ごろな管

 

 

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