3000人に牛めしを盛るよりも・・・

僕は松屋でバイトすることにした。
初日はさすがに慣れない作業に四苦八苦する。

お昼時、松屋の定番メニュー「牛めし」の注文が殺到する。
僕は焦って思わず皿を落としてしまった。

見かねた店長が言った。

「おい、新人君。落ち着け」

「は、はい・・・すみません・・・」

「君の仕事は何だと思う？」

「え？」

「君のここでの仕事だよ」

「僕ですか？僕はお客様の注文された料理を素早く出すことです」

「いや、違うな」

「え？」

「釈迦の言葉にこういうものがある。『3000人に牛めしを盛るよりも、冷静であれ』と」

　　　　　　　　　　　　　　　※注：実際は「3000人に飯を盛るよりも、冷静であれ」

「は、はぁ・・・どういう意味なんでしょうか？」

「つまりこうだ、3000人の大量の牛めしを用意することは、一見大きな成果、仕事を成し遂げているように見える。しかし、その時、必死に焦ったり、緊張感やストレスや恐れなどの思いでもって、その仕事をしていたのであれば、それはとんでもない荒いエネルギーをこの世界にまき散らしていることになる。それよりも、何もしていなくとも冷静で平安な心持ちでいる方が、よっぽどこの世界に貢献していることになるのだ、ということを釈迦は述べているのだよ」

「いや・・・でも、焦ろうが緊張しようが、牛めしを3000人前用意する方がすごいような気もするんですが・・・」

「確かに実績としてはすばらしい。しかし、どういう心持ちで行うかで、結果は大きく異なるものなんだよ。君が牛めしを焦って盛ってしまうと、その波動は多くの人に伝わり、多くの人に焦りの気持ちを触発させてしまうだろう。その結果、坂井真紀と酒井美紀がごっちゃになってしまう人が益々増えてしまうのだよ」

「えーっ、それが僕の責任なんですか？」

「そうだよ。さらに君が焦って牛めしを盛ることで、「おざなり」と「なおざり」の意味がごっちゃになる人もどんどん増え続けてしまう」

「それも僕の焦りが原因なんすか？」

「そうだよ。君の焦りは、君だけの問題じゃないんだ。一人一人の思いがどれほどこの世界に影響を及ぼしているかを私たちは全く知らないんだよ。そして、世界へ与えた己の波動は再び自分の元へと還ってくる。」

『おーい、牛めし、まだかよー！』

「ほらね？」

「いや、店長がずっと話すからじゃないですか！」

『こっちもまだかよー！』
『早く持ってこいよー！』

「は、はいっ！すみません！」

「待て！深呼吸してからだ」

「で、でも、お客さんが・・・」

「さっきの話を聞いていただろう？君の仕事は牛めしを焦って必死に盛ることではない。冷静であることだよ、新人君！」

「わ、わかりました！」

それからその新人バイト君をはじめ、その松屋の従業員は冷静、平安な心で牛めしを盛ることに徹した。

その松屋は注文から牛めしが出てくるまで２０分以上かかるという異常な長さから、客が激減したという側面はあったものの、冷静、平安のエネルギーで満たされた牛めしを食べたお客さんは、心が穏やかになってなぜか病気が治癒したり、ギクシャクしていた家庭が円満になったり、子宝に恵まれたりと次々と幸運が起きるようになった。そして、いつしかその松屋は『ルルドの松屋』と呼ばれるようになったのであった。

私たちの個々の波動が世界を動かしている。
どこかの戦争は、私たち一人一人の争いの波動が起こしているともいえるし、渡る世間のいがみ合いは、私たち一人一人の内なるピン子が起こしているともいえる。

逆に私たちが冷静で、平安でいれば、多くの争い事を緩和させるだろうし、川崎麻世とカイヤの喧嘩も収まるかもれいない。

3000人の牛めしを盛るよりも、冷静であれ。
3000回の激しいランニングマンよりも、冷静なムーンウォークであれ。
そしてドヤ顔のパーフェクトヒューマンであるよりも、にこやかなサイレントヒューマンであれ。

伝説のその松屋は今もどこかに存在しているという。

あなたがもし松屋で注文したのにやたら出てくるのが遅いとしたら、そこは伝説のあの「ルルドの松屋」なのかもしれない。

　←　冷静に押していただくことで、坂井真紀、酒井美紀、混乱問題に終止符が打たれます。

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