「ああ、困ったな・・・」
僕がそうつぶやいた途端、その人は現れた。
「はい、よーいスタート!」
カチッ!
突然知らないおっさんが飛び出してきて、映画やドラマの撮影で使うカチンコを鳴らした。
「あなた誰なんですか?!」
「いや・・監督だけど・・・」
「監督?何の?」
「あんたの映画だよ。」
「はあ?僕の映画?」
「そうだよ。今、あんた『困ったな・・・』って言ったよね?だから、困ったシーンが今スタートしたわけ。わかる?」
「いや、全然・・・。ドッキリか何かですか?」
「いや違う。リアルな映画だよ。あんたの人生というね。シナリオ、脚本、全部があんたが作るんだ。あんたが困ったと言えば、困った映画がはじまる。単純だろ?」
「僕がそう言えば、そうなる・・・。じゃあ、そこを無理矢理『やったー』みたいに変えれば、この映画は変わるわけですか?」
「残念ながら本心が変わってないとこの映画は変わらないね。ところで何で困ってんのさ?」
「いや、ちょっと仕事でトラブルがありまして、今から係長のところへ報告に行かないといけないもので・・・。」
「それが困ったことなのかい?」
「ええ。係長というのが本当にやっかいな人なんです。」
「どれどれ・・・。口うるさくて、嫉妬深くて、ネチネチしてて、小心者だけど、部下にはいつも偉そうにしている。」
「その通り!何でわかったんですか?」
「だって書いてるからさ。この台本のキャストのところにね。」
「誰が書いたんですか、それ?」
「あんたに決まってるだろう?あんたがその係長をそういう役柄にしてる限り、係長はあんたの映画の中ではその通り演じてくれるのさ。」
「そんなバカな・・・。だって、あの人はもともと」
「そういう人だって?じゃあ係長は奥さんや子供に対してもそういう人だと思うかい?」
「いや、それは・・・」
「だろ?もともとそういう人なんかじゃないんだよ。あんたの映画の中だけの役柄なんだよ、あれは。あんただって会う人によって自然と自分のキャラクターが変わってたりするだろう?」
「確かに・・・。でも、そんなことって・・・。」
「言っただろう?全部あんたが決めているんだ。意識的にしろ、無意識的にしろね。もともとこの映画には意味付けなんてされてない。あんたが『困った』と言えば、そこから困った映画になる。『あいつは嫌な奴だ』と言えば、そいつは嫌な奴を演じ続けてくれる。もともとそうだった事柄なんて何一つないのさ。」
「なかなか信じがたい話ですけどね・・・。」
「でも本当なんだよ。この映画を困った状態に固定し続けているのは、あんたなんだ。すべては流れていくものなのに、それをあんたはすごいエネルギーを注いでその状態をキープさせ続けているのさ。ちょうどアルコールランプにどんどんアルコールを注いで『困った』という炎を燃やし続けているようなもんだよ。放っておけば、勝手に炎は燃え尽きるというのに。」
「僕がずっとエネルギーを注いでそうさせていると?」
「そういうことだね。川の流れを必死で止めようとしているようなもんだよ。何とかしなきゃ、何とかしなきゃってね。だからすごく疲れるのさ。本当はね、困ったことなんてない、嫌な奴もいないんだよ。」
「うーん、難しいなぁ・・・。」
「スタート!」
カチッ!
「何なんですか?」
「今、難しい映画が始まったんだよ。わかる?難しくなんかないんだって。簡単なことなんだよ。あんたがそう決めればいいことなんだからさ。」
「うーん・・・。でも、なかなか」
「はい、カット!難しいシーンはここまで。ここからは簡単に、楽に、スムーズにすべてがうまく流れていく映画にしようよ、せっかくなんだからさ。」
「そうですね。じゃあ、その思い込みを外してみます。」
「じゃあ、こう言ってごらん?ああ、楽しい!って。」
「ああ、楽しい!・・・・ダメです、心からはそう思えません。」
「だよね?反発する自分がいるだろう?そんなわけねぇよ、こっちは困ってんだ!って。そのもう一人の自分をずっと見つめれば、その自分はやがていなくなってくれる。困った自分がいなくなれば、次は係長を嫌な奴だと思ってる自分を呼び出すんだ。」
「どうやるんですか?」
「こう言ってごらん?係長はいい人だって。」
「係長はいい人だ。あ・・・出てきました。すごく怒ってます 笑。」
「だろうね?ああ、怒ってる自分がいるなぁ、係長を嫌ってる自分がいるなぁって思って、その自分をずっと見つめ続ければ、やがて大人しくなってくれるだろう。」
「見つめる、見つめる、見つめる・・・あ、なりました。」
「じゃあ、もう一回言ってみよう。ああ、楽しい!」
「ああ、楽しい!」
「係長はいい人だ!」
「係長はいい人だ!」
「はい、スタート!」
カチッ!
「あれ?」
その瞬間、さっきまでいた監督を名乗っていたおっさんは、消えてしまった。
でも、今はとにかく係長のところへ急がねば・・・。
「係長。ちょっとトラブルがありまして・・・。」
「どうした?」
「この商品の納期が発注ミスで今日届かないそうなんです。」
「じゃあ、今から在庫ありそうなところ片っ端から当たろうじゃないか。」
「え?」
いつもなら散々僕の事を叩いた後に、まだ愚痴を言い続けて、結局何も対応してくれないのに、
今日は一体どうしたことだろう・・・。
「おい、どうした?いくぞ。」
「は、はい。」
そして、驚くことに電話をかけた1件目の会社にその商品の在庫があり、事態は事なきを得た。
「でかしたぞ。やるじゃないか!」
「はい、ありがとうございます、係長。」
笑顔で僕の肩を叩いて喜んでくれた係長。
実は、係長は頼りがいのある、部下思いの人だったんだ。。。
僕は、あのおっさんが言った言葉を思い出していた。
・・・・あんたが『困った』と言えば、そこから困った映画になる。『あいつは嫌な奴だ』と言えば、そいつは嫌な奴を演じ続けてくれる。もともとそうだった事柄なんて何一つないのさ・・・
本当にあの人が言ったように、嫌な係長を創っていたのは僕なのかもしれない。
そして、この現実は僕が一人で創りあげている映画なのかもしれない。
そうだとしたら、困ったことは永遠に起こらないようにすることもできるんじゃないだろうか。
そして、もっともっと簡単に、スムーズに、楽しいことばかりが起こっていく映画にすることだってできるはずだ。
そうか・・・現実はきっと連続していなくて、本当に映画のように毎瞬毎瞬心のフィルムが映っているだけなんだ。
だとしたら、そのフィルムを今、変えることだってできるはず。
だって、僕自身がこの映画のシナリオライターなんだから。
「よーし、ますます楽しくなってきたぞー!」
「よーい、スタート!」
「ん?」
どこかであの監督の声が聞こえた気がした。
監督はきっと満面の笑みで、これから始まる映画を眺めてくれているに違いない。
「監督、お待たせしました!行きますよー!」
僕のますます楽しくなる映画が今、始まった。
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あなたが「困った」と言えば、そこから困った映画が始まる。
あの人は「嫌な人だ」と思えば、嫌な人を演じ始める。
もともとそうだったことなんて何一つない。
あなたがすべてを決めている世界。
気に入らなければ、この映画は瞬間に変えることができるんだ。
「そんな簡単に行くわけないよ・・・」
そう思うと、その映画が始まっちゃいますよ(笑)。
さあ、その思い込みを外して、新しい映画を撮り始めよう。
本当に、簡単なことなんだから!
僕も今まで以上に、自分をさらけ出せる映画を撮り始めたいと思います。
・・・・・すぐに脱ぎたくなる芸人さんの気持ちがよーくわかる今日この頃。
オチに困った時は脱ぐに限ります(笑)。
カチンコと私のナニもうまい具合に掛かってたりなんかして・・・
え?カット?笑
←ここを押していただくことで、皆さんの新しい映画がどんどん始まって、全米NO1ヒットだらけになっていきます。ご協力を。
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11月20日(土)講演会 in 大阪
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私ぐるぐるとよっつ
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