藤沢和雄元調教師
馬の引き際の判断は本当に難しくて、究極的には“勝ったときに引退させるのがベスト”としか言えません。
ただ、調教とレースには常に故障というリスクもつきまといます。アクシデントでその馬の血が途絶えてしまうのは誰とっても辛いこと。
それに馬はいつまでも最高のパフォーマンスを発揮できるわけではありません。もっと走れるかもしれないけど“物凄く強かった”というイメージを残したまま、次のステージへ送りだしてあげるのも人間の大切な務めです。
イクイノックスの引退を「早すぎる」と感じた人もいるでしょうが、たとえばアーモンドアイと配合したらどんな産駒が生まれるか、今から心を躍らせているファンも少なくないはず。
馬の引き際はいつまでも後ろ髪を引かれるぐらいがちょうどいい。自分の経験を踏まえても、やっぱり私は「いい引退だったな」と思います。
※優駿2024年4月号「藤沢和雄コラム 馬と話そう馬を話そう」より
引退のタイミングは難しいですよね。未勝利馬や成績不振の馬だとわりと判断しやすいのですが、活躍中の馬だとなかなか決断しづらいです。
“もうちょっと走れるんじゃないか”とか“もっとやれるはず”と思ってしまいがちです。そうこうしてる間に引退のベストタイミングを逃してしまうなんてことも…
馬主としては正直稼げるだけ稼いでほしいけど使い倒して故障させてしまっては元も子もありません。
馬のことを考えればある程度余力の状態で次のステージに送り出してあげるのが一番良いのです。
個人馬主ともなると引退のタイミングも自分が決断しないといけません。判断を見誤れば馬生に悪影響を与えてしまいかねない。サラブレッドファーストで馬を第一に考えて決めていきたいと思います。