(つづき)
↓アンデッドガール・マーダーファルス 1巻
第1巻には第二章まで収録されています。
第二章 人造人間
19世紀末。
文明を発展させた人類は、各地に生息する怪物を排除しつつあった。
ケンタウロス、セイレーン、グリフォン……いくつもの種族が絶滅し、怪物が怪物として跋扈した時代は終わりを告げようとしていた。
フランケンシュタイン博士の手記を元に、ボリス・クライヴ博士と助手のリナ・ランチェスターは、人造人間を生み出そうと、日夜研究を重ねていた。
他に協力者は、博士に雇われ墓荒らしなどを行っていたヴァン・スローンという流れ者と、実験用の死体を横流ししていた医学生のアルベール・ユスタン。
そしてある嵐の夜。
ボリス「完成する! ついに完成するぞ!」
いつもは共に研究室にいる助手のアニーも、研究室の外でその声を聞いてた。
最後の仕上げは一人でやりたい、と、アニーも研究室から追い出されてしまったのだ。
しかしその後、博士の声でもなく、雨や雷の音でもない、 ズウン という大きな物音が地下研究所から響く。
すぐさま様子を見に行った、アニー、ヴァン、ユスタンの3人。
しかし、研究室の扉は、中から施錠されていた。
やむを得ず扉を破る3人。
そこで見たものは……。
首なし死体と化したボリス・クライヴ博士と、
生まれたばかりの人造人間であった。
そして、研究室からは、博士の首と、フランケンシュタイン博士の手記が消え失せていた。
もしかして、人造人間が、食ってしまったのでは?
が、そのおぞましい想像を打ち消すべく、人造人間は自分の腹を破り、胃を裂き、その中が空であることを示す。
その巨体と不気味な外観からは想像もできない程、人造人間は聡明で、素直であった。
パリの<エポック>紙 特派員:アニーから連絡を受け、
事件の調査に乗り出した“鳥籠使い”一行
怪物事件専門の探偵: 輪堂鴉夜(りんどうあや)と、
助手の真打津軽(しんうちつがる)、鴉夜に付き従うメイドの馳井静句(はせいしずく)。
鴉夜は、捜査の指揮をとっている者が、大変有能であることに感心していた。
しかし、それでも、事件には謎が多すぎた。
一体犯人は、どうやって密室から脱出したのか? フランケンシュタイン博士の手記はどこへ消えてしまったのか? そしてボリス・クライヴ博士の首は?
密室、について鴉夜が回答を推理した時、捜査の指揮を執っていた警部は、こう告げた。
密室の謎が解けたおかげで、私の中の推理も完成しました。
犯人が分かりました。
私の小さな灰色の脳細胞に、最初からひっかかっていたことがあるのです……
第一章は、もの凄く真っ当な第1話でした。
伝奇物めいた世界観の説明
個性的かつ魅力あふれるメインキャラクター達の紹介
軽妙なやり取りによる、会話劇
論理的思考による、本格派ミステリーの面白さ
迫力ある映像が目に浮かぶようなバトルアクション
この作品のウリ・魅力はこれです という要素が詰め込まれており、プロモーション編として申し分ない。
しかし、なんとこの作品には、第一章には入りきらなかった重要な作品要素がまだあったということが、この第二章を読めば分かるのです。
この作品には、オールスター物という要素もあったのです。
今回登場するのは、名セリフ
私の小さな灰色の脳細胞が~
で有名なあのキャラです。
オールスター物である、という事は、どうやら意図的に隠されており、裏表紙の作品紹介文でも、それらは伏せられていました。
第1巻の時点では。
ただ、そこを伏せたままにしておくのは、作品の魅力をアピールするのにはあまりいいことではないと判断されたのか、第2巻では、帯に堂々と
ルパン VS ホームズ VS 異形の怪人 VS 怪物専門の探偵!
魔都ロンドンでオールスターキャストのダイヤ争奪戦!
と謳われており、むしろオールスター物であることを積極的にアピールしています。
うん、確かに、第2巻では、この作品がオールスター物であることを伏せておくっていうのは、なんかウルトラマンメビウスや仮面ライダージオウで歴代ヒーローが続々登場することを伏せておく、というようなものです。
しかし……未読の方は、普通に思いませんか?
「そんな、世界的に有名なキャラを次々に登場させて、この作品の登場人物達は、くわれてしまわないの?」
と。
いや、それが、大丈夫なんですよ。
本作の主人公達は、素晴らしく魅力的です。
この作品を書いてしまう作者の力量には、ただただ、感心します。
さて、吸血鬼、人造人間ときて、次なる怪物は、 人狼 です。
ただ、第三章では、これまでのような人狼絡みの事件が発生するのではなく、人狼の村に至るカギとなるダイヤをめぐっての争奪戦、となります。