戦力外捜査官 姫デカ・海月千波 読了。
ちょっと重めの作品の読書が続いたので、次は出来るだけ気軽に楽しめそうなもの、と考えていました。 で、当初は 東川篤哉さんの、未読の物に手を出そうと考えていたんですね。
が、図書館に行って、ガッカリ。ちゃんとその図書館には、未読の物があったと記憶しているのに、貸し出し中だったみたいで、既読の物しか見当たらなかったのです。
で、じゃあ、折角だから、これまであまり読んでいなかった方の作品に手を出してみようと。
そこで思い出したのが、似鳥鶏さん。
以前、この方の作品では、叙述トリック短編集 というものを読んだ事があって。
↓叙述トリック短編集
うおお、大傑作! という程、心動かされたわけではないですが、作者の、「読者に楽しんでもらおう」というサービス精神はしっかり感じられる1冊で、なかなかの好感触でした。
で、似鳥鶏さんの本にしよう、と決め、棚を見てみると、この「戦力外捜査官シリーズ」は、4冊並んでいたので「一定の人気を得ているシリーズなのだな。これならハズレ無しだろう」と、手に取って……
表紙のインパクトに、借りることを躊躇(笑)。
↓戦力外捜査官 姫デカ・海月千波
私は、自宅で読む本を借りに来ているのではなく、通勤電車で読む本を借りに来ているのである。
衆人環視の中、うだつの上がらないオッサンが、この表紙の本を読んでいる姿ってのは…… が、まぁ、「だからどうした」とすぐに開き直り、借りて読むことに。
表紙から推察するに
主人公である刑事が、何故か美少女とコンビを組む羽目になり、彼女の突飛な言動に振り回され、大弱り。 が、実は彼女は類まれな推理力の持ち主でもあり……。
という内容なんだろう、と。
で、その通りであった。 非常によくあるパターンなのだ。
まぁそれはいい。 と言うか、そういうのを読みたくて借りたのだから何も問題はない。
で、このテの作品は、結局のところヒロインにちゃんと魅力があるかどうかで全てが決まる。
その点、この作品は、よく出来ていた。
特に「例え話を入れた説明が、ド下手」という設定が、効果を上げていた。
彼女が例え話を入れながら説明すればする程、周囲の人間は彼女が何を言っているのか分からなくなっていく、というシチュエーションは、実にコミカル。
かつ、その優れた推理力で先を見通している彼女の行動は、周りの者には理解不能で、彼女はそれを説明しようとするのだが、やはりさっぱり分からないので、徐々に彼女が組織内で孤立化していく、というシリアスなストーリーの方へも効果的に機能していた。
ミステリーでは、探偵役が全てを見通していたとしても、クライマックスまではなかなかそれを語らない、というシチュエーションが多く見られるが、通常、周囲の人間が「説明してくれ」と途中で問うと「まだ推理に必要なピースが完全に揃っていないんだ。それが揃うまでは説明できない」みたいに答えてはぐらかすんですね。
これって、探偵、性格悪い と捉えられても仕方がない。
美少女探偵物だと、その性格の悪さも、主人公の可愛らしさにしてしまえればいいのですが、まぁ、失敗してしまう作品もあるわけで。
その点この作品の「探偵役が説明しても周囲が混乱するだけ。しかし本人はいたって真面目」というのは、新鮮に感じました。
で、まぁ、前半を読んでみて、ここまでは、事前の期待値に まぁ応えてくれたかな、位だったのです。
が、読み進めていくと、
想像以上に、しっかりとした警察小説で
中盤から後半にかけての事件のスケールアップは、
完全にこちらの期待以上でした。
軽く読むだけ、のつもりが、思った以上に熱を入れて読んでしまい、クライマックスを読んでいた今日は、のめり込んで一駅乗り過ごした(笑)。
全然知らなかったのですが、TVドラマ化もされていたのですね。
まぁ、それを観るかどうかは分かりませんが、小説の方は、折りを見て2作目以降も読んでみようと思います。