(2013年/シンガポール/99分)
監督:アンソニー・チェン
【ストーリー】
1997年シンガポール、共に働きに出ている両親と暮らす一人っ子のジャールー(コー・ジア・ルー)は問題児で、母親の悩みの種だった。そんな折、住み込みで雇われたフィリピン人メイドのテレサに反発するジャールーだったが、真剣に自分と向き合おうとする彼女と次第に心を通わせていく。一方、父親はアジア通貨危機の影響でリストラされ、母親はテレサに対して嫉妬のような感情を持ち始め……。(シネマトゥデイさんより)
【かんそう】
関西での公開をずーっと待ち望んでいました!!
あまり観る機会のないシンガポール映画ですが、劇場で観ることができて本当に嬉しかったです☆
終始静かな映画でしたが、緊張感もあり、ユーモアもあり、そして「ぬくもり」を感じられる映画でした。
生意気です。
常に冷めた目で大人を見ています。
雇われてきたメイドのテレサをあの手この手で困らせます。
変に頭のいいジャールーなので彼の行動を見ているとムカッ!とします。
ほんと困った知能犯です!!
でも、テレサはそんなジャールーにひるみません。媚びません。
ガツーン!!と言うてやります!!
ええどー!テレサー!!!
ま、ジャールーも最初こそ「はぁん?!」てなもんですが、なんてったって同じ部屋で寝起きして家族より一緒にいる時間が長い二人。
そして自分に媚びることなく常に自分のそばにいてくれて同じ目線で自分を見てくれるテレサ。
ジャールーにとっていつも家にいない父と母よりもずっとそばにいて安心感を感じさせてくれるテレサに心を寄せていくのは当然だったと思います。
テレサに懐いてからのジャールーは(まぁまぁ)かわいく見えました。
子どもの「好き」「嫌い」は残酷なほどはっきりしてますねぇ~
しかし、彼らの脇では深刻な事態が進んでいました。
舞台は1997年のシンガポール。
そうです。
アジア通貨危機がこの国にも影響を及ぼしていました。
リストラされる父。
(自社製品の一生懸命なプレゼンに笑ってしまいましたが・・・)
息子とメイドの関係に嫉妬、そして自分の居場所を求めるように自己啓発セミナーにのめりこんでいく母。
(ほんまこの指導者がうさんくさい!「希望在于自己!」て覚えましたわ・・・)
画面のこちらで観ている私にはこの家族が全く交わっていないということをずっと感じていました。
そりゃどこまでいっても平行線だわな、な状況でした。
しかしテレサの存在によって、彼らはいろんな感情や状況でちょこっと・・・ほんのちょこっとずつですが交わっていきます。
後半、夫婦二人がベッドで話すシーンがあるのですが、ちょっとしんみりしました。
お互いを見ることのない一直線の平行線のような夫婦に見えたのですが実は彼らはちゃんとお互いを見ていたのです。
これで家族の再出発になっていくのかな・・・と思われた時にテレサは本国に帰されることになります。
メイドではあるけれど、母のようであり、姉のようであり、そして友達のようであるテレサと離れ離れになるなんて!!!
ジャールーはジャールーなりにがんばります。
彼女がずっとここにいてくれるように!!
自分のそばにいてくれるように!!!
ラストは後頭部の奥の方がツーンとなるような切なさがありました。
「イロイロ」という題名。
実際、監督が4歳~12歳までの間、家にメイドさんがいらしたそうで、彼女の故郷の地名が「イロイロ」でそこからつけたようです。
監督にとってもそのメイドさんは母であり、姉であり、友人でもあったのでしょうかねー
くうこのおまけ
淡々とした映画ではありましたが、ユーモアもかなりあって、ちょいちょい笑ってました。
お誕生日会での鶏ネタにも大爆笑しましたけどねぇ。
全編通してお父さんが一番「鶏」にやられてたかもしれません・・・
うりぼう4つ:
ありがとうございました