生きる
(1952年/日本/143分)
監督:黒澤明
【ストーリー】
癌で余命幾ばくもないと知った初老の男性が、これまでの無意味な人生を悔い、最後に市民のための小公園を建設しようと奔走する姿を描いた黒澤明監督によるヒューマンドラマの傑作。市役所の市民課長・渡辺勘治は30年間無欠勤のまじめな男。ある日、渡辺は自分が胃癌であることを知る。命が残り少ないと悟ったとき、渡辺はこれまでの事なかれ主義的生き方に疑問を抱く。そして、初めて真剣に申請書類に目を通す。そこで彼の目に留まったのが市民から出されていた下水溜まりの埋め立てと小公園建設に関する陳情書だった……。責任を回避し、事なかれを良しとする官僚主義への批判や人生の価値に対する哲学がストレートに表現されてはいるが、志村喬の鬼気迫る迫真の演技が作品にみごとな説得力を与えている。(allcinemaさん)
【かんそう】
黒澤明映画祭6本目!
この映画も黒澤監督作品の中では有名ではないでしょうか。
私ですら題名は知っていましたからねー。
上の説明にも書かれていますがよく「ヒューマンドラマの傑作」と言われていますよね。
役者(特に主人公を演じた志村さん)の熱演もあり、私もとても感動したのですが、結構好き嫌い分かれる作品のようで、目にした感想は賛否両論でした。
確かに狙いすぎかなぁ・・・と思ったところもありますが。
でもやはり「最後まで生き抜く」という事をしっかり軸にした力強い作品だったと思います。
主人公の渡辺は事なかれ主義の役所勤め。
息子夫婦からも冷たくあしらわれ、おまけに体の調子も悪く病院に行くと「胃がん」と診断されます。
意気消沈。
余命もあまりない・・・と知った彼は自分の口座のお金をおろし、飲み屋で知りあった人物と一晩中遊び歩きますが、それを知った事情を知らない息子は父を怒ります。
自分も「果たして自分はこんなことをしたかったのだろうか・・」という自己嫌悪に似た感情がこみあがり・・・
やっぱり意気消沈。
そんな彼の元に役所を辞めて玩具工場で働くので退職届に判を押してほしい、と同じ課の小田切とよがやって来ます。
ここから渡辺の余生にも光が差し込みます。
彼女の明るさは本当に微笑ましく、また、彼女自身も自由奔放で天真爛漫。
彼女と一緒にいたら楽しいやろうなぁ~と女性の私でも思いました。
この彼女にあそこの役所勤めはさぞかし退屈やったやろうな。
詳しくは描かれていませんでしたがしばらく渡辺は小田切と何度か会っていたようですね。
しかし、渡辺にとっては生命力あふれるまぶしい女神の小田切もやはり単なる若い女性であって、彼女は彼女で自分の生活もあるし、そない毎日のように渡辺につきあってられません。
次第に彼女も鬱陶しくなって最後には「もう話すことなんてないし、毎回同じコースでつまんない。だいたいなんで私を追い回すのよ!!」みたいな事を言います。(うぅ・・ちょっと言われた側にとっては耳の痛いセリフかも)
でも渡辺は彼女に恋愛感情などはなく、ただただ「生命の輝き」を彼女から感じ取りたかっただけなんですよね。
渡辺が今の自分の気持ちを話すと彼女は「自分は今、物作りに携わっていてとても楽しい、これ作ってたら日本中の子どもたちと友だちになったような気がする」と言います。
そして「課長さんもなんか作ったらどないですのん?!」と言い放ちます。
この瞬間、渡辺の第二の人生が始まりました。
そこから渡辺は「自分にも何かできることがあるはずだ。やる気があれば。」とがむしゃらに仕事をがんばります。
たらいまわしにされ、結局何の解決もなされなかった市民の願いを実現するために奔走します。
劇中には結構お役所批判めいたところも出てくるのですが、それを観て「お役所って今も昔もそない変わらんねぇ。」て思いましたわ。
病気になって死期が迫り、若い女性にスパーン!と突き放されて初めて顔を上げて前向きに生きよう!と思うあたり皮肉な感じもしますが、人間ってそんなもんかもしれんなぁ・・・とも思います。
「ヒューマニズム」を前面に押し出した作品ではありますが、笑えるところもたくさんありましたし、意外とシンプルでわかりやすいお話だったためか、「終始重たいお話」という印象はありませんでした。
でも観終わった後はしっかりずどーんと心に残りました。
くうこのおまけ
・渡辺と息子夫婦は同居なのだが、息子夫婦が外出から家に帰ってきたとき、嫁が「外も中も変わらんくらい寒い!」と言うのですが、我が家も同じやなぁーと妙な親近感がわきました。
うりぼう4つ:
ありがとうございました