(2013年/中国・日本/129分)
監督:贾樟柯(ジャ・ジャンクー)
【ストーリー】
山西省の村で共同所有していた炭鉱で、利益を吸い上げられてきた炭鉱作業員(チアン・ウー)。重慶の妻子に出稼ぎとうそをつき、仕送りを送る強盗(ワン・バオチャン)。かなわぬ恋を続けて年を重ねきた湖北省の女(チャオ・タオ)。職を転々とし、ナイトクラブのホステスとの恋に思い悩む男(ルオ・ランシャン)。虐げられてきた彼らはついに事件を起こしてしまう。(シネマトゥデイさんより)
【かんそう】
ジャ・ジャンクー作品はリアルタイムで『プラットホーム』を観た時に「・・・あかん。合わへん。」とそれ以来観ていなかった監督です。
ですが、昨年、大阪のある映画館さんが組んでくれた中国映画大全集という特集の時に
「私も大人になったし、ひょっとするといけるんちゃう?」
と、思い「青い稲妻」「世界」の2本を観てみました。
これが意外におもしろく、ちゃんと自分の中に入って来てくれたので、めでたく私の中でジャ監督作品が解禁になった次第です。
・・・って偉そうに。
すんません。
今回は4つの本当にあった事件を題材にして描かれていますが、彼もいろんなインタビューで答えていらっしゃるように、作品に「武侠」を取り入れたり、動物たちを意味ありげに挿入しています。
現実的な題材を扱った作品ではありますが、非現実的なモチーフや比喩的表現を用いているので今までよりはエンタメ性が感じられると言えばそうなのかな。
でも、問題意識が強い映画であることには違いありません。
・・・今、思い返すと、もう5年くらい北京に行っていないのですが、それまではちょこちょこ行っていました。
2008年の北京オリンピックを控えていたことも重なり、経済成長、都市開発の勢いがすさまじかったのを覚えています。
私が上海より北京の方が、おもしろくて好きだと感じる一つに「スピードの差」がありました。
都市や経済はガンガンに発展していくのに「人」は全然ついていけてないのです。
極端に言えば都会のビルとビルの間をパジャマ着たおばちゃんが普通に歩いている、近代的なオフィスにパジャマで通勤、といったチグハグ感がどこにでもあった、というようなことでしょうか。(たとえね、たとえ)
上海はビジネスライクな街なので、「差」があるのはありましたが、北京程の「差」はあんまり感じた事はありませんでした。
もちろん上海にも古い町や下町があり、そこに行くとタイムトリップしたような感じで楽しかったのですが。
最近はほんとご無沙汰でどちらも行ってないので、北京であの頃感じた「差」はもう昔ほどはないかもしれません。
そして、この映画です。
舞台が少し田舎だったり、田舎から出てきた人物たちが主人公だったからか、やはり昔私が北京で感じた「差」を感じました。
時代も都市も社会も全部すごいスピードで動いている。
でも、この映画に出てくる人物たちは全然変わらない。
いや、変われない、と言った方がいいのでしょうか。
彼ら自身も「移動」という形であっちへこっちへ・・・と動いてはいるけれど、彼ら自身は何一つ変わっていないように思いました。
取り残された感をすごく感じました。
4つともあってはならない「罪」ではありますが、映画のこの「罪」の部分が、武侠で言うところの正義を持って悪を打つ、に通じる部分だそうです。
「罪」は「罪」ですけど。(4つ目だけがちょぉっと性質が違うかな)
でも・・・
人間、誰にでもああなってしまうスイッチ、境界線ってあるよな・・・て思ってしまいまいした。
特に私は女性だからかわかりませんが、あの湖北省の女性の話は「わからんでもないわ」と思いました。
そしてこの映画を観ているとそのスイッチを押してしまうような、境界線を越えてしまうような出来事って今の世の中すぐそばにあるんやな・・・って怖くなりましたねぇ。
くうこのおまけ
・今回やけに「オフィス北野」が絡んでるからこのような・・・みたいな感想をみかけましたが、オフィス北野は2001年『プラットホーム』からずっと変わらず製作に入ってるんだけどなぁ・・・
・ジャ監督作品を観ると全感覚が中国に飛ぶ。特にあの田舎の街の雰囲気、音、人・・・すべてがたまらん。
・当然なのですが方言がまーーーったくわからんかった。
・時にドキッとするくらいに美しい映像やパンチのある映像があった。
・オムニバスではあるけれど、うまーくつながっていってて見事な作りだったなぁ。オムニバスだからこそのあの味わいだったのかも。
・あの虎の鳴き声だけがなんだかちょっと恥ずかしくなった。がぉー言うてましたね、がぉーって。
ありがとうございました☆
楽しい日曜日を~