(2013年/日本/108分)
監督:纐纈あや
【しょうかい】
大阪貝塚市での屠畜見学会。
牛のいのちと全身全霊で向き合う
ある精肉店との出会いから、この映画は始まった。
家族4人の息の合った手わざで牛が捌かれていく。
牛と人の体温が混ざり合う屠場は、熱気に満ちていた。
店に持ち帰られた枝肉は、
丁寧に切り分けられ、店頭に並ぶ。
皮は丹念になめされ、 立派なだんじり太鼓へと姿を変えていく。
家では、家族4世代が食卓に集い、いつもにぎやかだ。
家業を継ぎ7代目となる兄弟の心にあるのは
被差別部落ゆえのいわれなき差別を受けてきた父の姿。
差別のない社会にしたいと、地域の仲間とともに部落解放運動に参加するなかで
いつしか自分たちの意識も変化し、地域や家族も変わっていった。
2012年3月。
代々使用してきた屠畜場が、102年の歴史に幕を下ろした。
最後の屠畜を終え、北出精肉店も新たな日々を重ねていく。
いのちを食べて人は生きる。
「生」の本質を見続けてきた家族の記録。
(ポレポレタイムス社MOVIESさんより)
【かんそう】
やーーーっと鑑賞できましたーーー!!!
最初の上映時はまんまと見逃し・・・でも、これだけ好評なドキュメンタリーならまた上映してくれるかもしれない・・・と、思っていたら、アンコール上映ということでまた大阪に来てくれました!!
ありがとー!!
内容的にも興味がありましたし、評判もよかったようですし、lucky2005さんにもおすすめいただいていたので絶対にアンコール上映は見逃したくない!!
ということで、監督が劇場に来てくださる日に有給取って観に行ってきました~
いやー「夢は牛のお医者さん」と言い、牛ドキュメンタリーにはずれなし?!(2本しか観てないけど)と思うくらいに素晴らしいドキュメンタリーでした。
「牛」とは言えども、やはりメインは北出家の皆さま。
代々牛を屠畜し販売し生計を立ててこられた一家です。
私は貝塚市に「市立」の屠場があるとは知りませんでした。
そして、牛を「割る」という表現もこの映画で知りました。
※鶏は絞める、魚もしめる、でも牛や豚は「割る」というそうです。「殺す」とは言いません。
その「割る」シーンから映画は始まります。
のっけから衝撃でした。
たしかに牛を割ってからお肉をさばき・・・というのは頭ではわかっていても映像として見るのは初めてでした。
人間で言うと眉と眉の間のちょっと上くらいをでっかいハンマーのようなもので勢いよくガツーン!!と殴り、牛がガクンと膝をついて倒れたところからまず血を抜き、男性陣でさばいていきます。
非常に大きな牛だったり気性の荒い牛だったりすると1回のガツーンでは倒れてくれないらしく危険なこともあるとお話されていました。
また、北出家は代々牛を自分たちで育て、その牛を屠畜してきました。
なので育てている時はやはり「情」も出てくるそうですが、屠畜が始まると、、もうその瞬間から「牛」ではなく「商品」として見るようにしているとおっしゃってました。
ド素人の私が言うのもおこがましいのですが、その気持ちはなんとなくわかるなーと思いました。
で、あの、失礼かもしれませんが、みなさんがスーッスーッっとさばいていらっしゃる様子がすごく美しく、熟練した技で、女性陣は内臓担当なのですが、それも本当に手早くてあの、ガツーン!はかなり衝撃でしたがそのあとはもう、見入ってしまいました。
きっと、作業もお肉も内臓も、すべてが美しく見えたのは北出家のみなさまの全身全霊を込めた真剣勝負だったからだと思います。←監督のお言葉、まんま使わせてもらってます。すみません!!
普段の北出家の様子も監督は撮影されているのですが、北出チームは家族も多く、よく笑うとても明るいご家族です。
しかし、この屠場では一変。
本当に皆様黙々と真剣にお肉と向き合って作業されています。
この映画をご覧になった皆様の感想で多いのが「お肉が食べたくなった」というものらしいのですが、その気持ち、すごくよくわかります。
とてもおいしそうなんですよ。
欲を言えば北出精肉店で売っているお肉が食べたいなーと思いましたけど♪
屠畜された牛は当然余すところなくきれいに使われます。
お肉や内臓は私たちの「いのち」として分けていただくことになりますが、皮は土地柄でしょうか。だんじり祭りの太鼓として生まれ変わります。
だじゃれ好きの次男さん。
また、地域の親子活動の一環として「太鼓づくり」を催したりしています。
親子で小さな太鼓を作ろうー!というものです。
しかし、貝塚市の屠場が2012年に閉められることになり、北出家もそれに合わせて屠畜が最後となりました。
この映画でもその場面は映されています。
今は和歌山の代々交流のあった業者さんからお肉の塊を仕入れて、それを切りさばいて販売されているそうです。(監督のお話より・・)
また、今回纐纈監督は、もう一つ「部落差別」に関しても焦点を当てていらっしゃいます。
私も昔、お肉屋さんはそういう部落出身の方がされていることが多い、というのを聞いたことがありました。
北出家が代々住んできた地域がたまったま、その当時の、今でいう都市開発がされず遅れた地域になり就業がままならない地域になってしまっただけのことで、彼らは生きていくために屠畜を生業とするようになったということです。
しかし差別や偏見は長く続きます。
この映画に出てくる北出兄弟は部落解放運動に前向きに取り組みます。
親が苦しんでいる姿をずっと見てきた、ということもあるからです。
纐纈監督は舞台挨拶で
「このように私たちに「いのち」を分け与えていただいている尊い仕事をしている方たちが差別されているのはおかしいと感じる。むしろ尊敬されるべき立場の方たちなのではないでしょうか。」
というようなお話をされていましたが、今回このドキュメンタリーを観て、監督のおっしゃる通りやなぁ・・・と感じました。
とは言え、失礼ながら実際のところ私にはこの部落差別に関してはよくわかっていない点が多いのですが・・・
このように北出家の歴史をも組み入れ、また彼らの普段の様子も入れることで、単なる牛の屠畜ドキュメンタリー、単なる北出家のホームビデオ・・・ではなく、とても温かみのある目線で、また真剣に北出家と向き合って出来上がった深みのあるドキュメンタリーになっていたように思います。
そして、何度も何度も映画に出てきた北出家の食堂。
仕事場と家をつなぐ場所にあるので、自然とよく家族の皆様が集まるそうなのですが(おとなしくてかわいらしいワンコもいます)、監督はきっとこの場所が好きなんやろうなーと言うのが映画を観ていても伝わってきました。
上映後のあいさつでも「あの場所がとても好きでした」とおっしゃってましたねー
正直我が家は牛肉は買いません。
と言うか経済事情的に「買えません」のでいつも鶏肉か豚肉です・・・
(どうせ買うなら国産買いたいと思う憧れの強い庶民)
でも鶏肉や豚肉でもたまに「切れないわー!えいっえいっ!!やー!」「急げ急げ!やー!!」と時にぞんざいに扱っていたこともあったので、この映画を観て反省しました・・・
私が買う鶏肉や豚肉は安いものばかりなのでもしかするとライン化された工場で流れ作業的にさばかれていっているお肉たちかもしれません。
でも、生きていた「いのち」をいただくことには違いないのでもっと意識して大切にお料理しよう・・・と思いました。
料理の腕はさておき・・・ですけど。
このドキュメンタリーを観ていろんなことを知ることができましたし、考えることもできましたし、そしてお肉を大切に扱おうとも思いましたし、本当に観てよかったなーと思いました。
くうこのおまけ
・内モンゴルで観光地ではありますが、そこで羊をさばいていく様子を見学したことがあります。
連れてこられた羊が全然暴れることなく、鳴く事なく「好きにして・・・」と言わんばかりにさばかれていくのですが、まずこの羊のおとなしい様子にびっくりしました。
たぶん人間側の腕もよかったんやろうなーとは思います。
羊の肉は私はどうも苦手でがっつりとたくさんは食べられないのですが、この時ばかりはお腹いっぱいになっても食べられるだけ食べました。ほかのメンバーも一生懸命食べていました。
・・・このような経験していたのに忙しさや手間を言い訳にお肉をぞんざいに扱う時もあったなんて・・・
今回やはり改めてこのような映画を観てよかった!!!反省です!!
うりぼう5つ:
ありがとうございました☆
これで6月鑑賞分の感想がすべて書き終わりました~
もうすぐ7月終わるのに~