(2012年/デンマーク・ノルウェー・イギリス/121分)
監督:ジョシュア・オッペンハイマー
【しょうかい】
1960年代インドネシアで行われた大量虐殺を加害者側の視点から描いたドキュメンタリー。60年代、秘密裏に100万人規模の大虐殺を行っていた実行者は、現在でも国民的英雄として暮らしている。その事実を取材していた米テキサス出身の映像作家ジョシュア・オッペンハイマー監督は、当局から被害者への接触を禁止されたことをきっかけに、取材対象を加害者側に切り替えた。映画製作に喜ぶ加害者は、オッペンハイマー監督の「カメラの前で自ら演じてみないか」という提案に応じ、意気揚々と過去の行為を再現していく。やがて、過去を演じることを通じて、加害者たちに変化が訪れる。エロール・モリス、ベルナー・ヘルツォークが製作総指揮として名を連ねている。山形国際ドキュメンタリー映画祭2013インターナショナル・コンペティションで「殺人という行為」のタイトルで上映され、最優秀賞を受賞。14年、「アクト・オブ・キリング」の邦題で劇場公開。
【かんそう】
がっつりぐったりどんより疲れました。
見ごたえあって疲れたのではなく(見ごたえもありましたが)、もう、なんか、ありえへんよな・・・てな感じでぐったりです。
でも現実だったんですよね・・・
しかも虐殺をおこなった人たちはまだ生きていて、別に反省する様子もなく、嬉々として自分たちがやってきた行為をあたかも栄光かのように映画撮影して・・・
もうこの映画自体がドキュメンタリーなのかフィクションなのかようわからんくらいに「うそやろ?ほんまにそんなことやってたんかいな・・・」の連続です。
ロケでは一般の方たちにエキストラで出てもらっていましたが、子供ら、あんなんマジ泣きやん。
めっちゃ怖かったと思います。
女性らだってエキストラとは言え、絶対怖かったと思います。
でもでも・・・あれが現実だったわけで、実際はきっともっと壮絶な現場だったはずです。
おじいちゃんかっこいー
僕もこんな風になるんだー!
とか、絶対なってほしくないです!!
でも、この家庭環境じゃぁどうでしょうか。
しかもこの映画を撮った彼らは「歴史を後世に伝えるため」と笑顔で語ります。
理由はまっとうですが、それは「もうこんな事をしてはいけません!」という教訓や戒めのためではなく「自分たちの栄光を伝えるため」という「はぁ?」な理由ですからね。
なんかもう「だって俺らはなんもわるくないもん」ということを頑なに肯定するためにこの映画を撮っているようにも見えました。
この映画では「集団心理」の恐ろしさというのも感じました。
過去にあんな大量虐殺があり、その加害者たちは今でも生きている、じゃぁインドネシアっていったい今はどうなの?昔よりはましなの??
たしかに今は「虐殺」なんてことは行われてはいないと思います。
でも、エンドロールに少し答えがありました。
今のインドネシアを的確に表していたのではないでしょうか。
最初、英語のわからない私は「えらいおんなじ名前が出てくるなー。それともなんか別の意味なんかな?」と思って見ていました。
ANONYMOUS
この文字がやたらと出てくるのです。
劇場出てソッコー携帯にメモ!
英語わからんしすぐ忘れるから!
家に帰って調べてみると
1.匿名の、(書物が)作者不明の、(歌が)詠み人知らずの
2.特徴(個性)のない
という意味でした。
そして監督のインタビューを読んでみると、そのことについて語っている箇所がありました。
匿名にしているのは未だに彼らの身に危険が及ぶからだそうです。
大学教授、記者、人権団体のリーダーといった方々らしいのですが、本当の意味での変化が起こらない限り名前は明かせない、ということを知っているからこその匿名だそうです。
そういやなんか映画の中に映っていたあのトーク番組も「はぁ?」やったような・・・
最後に、主人公のアルワンはできあがった作品を観て、自分のやったことにようやく何か感じたのか、拷問、虐殺をおこなった場所に行き、そこで延々とえづきます。
いやいやいや・・・
わからないまま殺された人たちに比べたらえづいて吐くくらい、なんてことはないですからね。
本当に反省モードに入っているのか知りませんが、この時点でも私は彼の姿に「げー」でした。
彼は今後どのような人生を送るのでしょうか?
もうただただ精神的なダメージが大きい映画ではありましたが、インドネシアの過去、現在を知ることができる貴重なドキュメンタリーだとは思うので、観ることができてよかったです。
くうこのおまけ
・ちょいちょい出てくる美しいシーンが異様。
本当に色彩なども美しいのですが本編の内容とのギャップがもう・・・
うりぼう4つ:
ありがとうございました☆