得るものと失うものと・・・
ブッダ・マウンテン~希望と祈りの旅
(2010年/中国/109分)
監督:リー・ユー
【ストーリー】
ナンフォン(ファン・ビンビン)、ディン・ボー(チェン・ボーリン)、太っちょ(フェイ・ロン)は、元京劇女優のユエチン(シルヴィア・チャン)の家にそろって間借りする。ユエチンは、2008年に起きた四川大地震で息子を亡くし、絶望を抱えて生きていた。一方、若者達も父親とうまくいっておらず、心に闇を抱えていて……。(シネマトゥデイさんより)
【かんそう】
ちょっと思い入れのある映画。
TIFF上映の際にほんのちょちょちょちょちょびーっとお手伝いさせていただいたので。
作品には何の関係もないところでのお手伝いですし、大阪にいながらの1日くらいのお手伝いでしたけどね。
しかもこれ、最後の最後、一段落したところに「これも上映決まったので!!」と駆け込みだったような覚えが。
それで最優秀女優賞&最優秀芸術貢献賞、と獲得していたのでやっぱり力ある映画だったんだなーと思いました。
でも私が本編を観るのは今回が初めてです。
『ロストイン北京』の時もそうでしたが、この映画もまた若者たちが感じている「閉塞感」というのをとてもうまく表現していたように思います。
しかも主人公の3人、特にナンフォン(ファン・ビンビン)とディン・ボー(チェン・ボーリン)は常にイライラしているように思いました。
今回はそこに京劇役者のユエチンが絡んできます。
彼女は息子を事故で失ってしまった中年女性。
ちょっと立ち止まって考える、ということを知らない、死をも恐れない、ただただまっすぐに突き進むだけの3人の若者たちがこの女性と知り合うことによって、またいろんな感情を抱き、大人の階段のぉぼるー♪なのです。
だって、ユエチンと知り合うことなかったらあの3人はずーっとあのままイライラしながら突っ走るだけだったと思うしね。
ユエチンのマンションに間借りして住むようになった3人。
最初は生活リズムも合わず、感情面でも合わず、何かとイライラする4人。
でも、不思議なもんで、このまったくかみ合わない互いの存在が実は「いてくれてよかったわー」な心の支えになっていくのです。
ナンフォン(ファン・ビンビン)なんてそれはそれは感情のふり幅が激しすぎて毎回感情の針が振れ過ぎて壊れるんちゃうか、と思うくらいに激情型の女の子だったりするのですが、その反面、小指で触れただけで割れるんちゃうか、と思うくらいに薄い薄いガラスのハートの持ち主だったりします。
そんな彼女にとってもユエチンはだんだんと「いてくれてよかった」な存在になっていくのです。
若者たちと中年女性の組み合わせ、というのもこの映画のおもしろいところだなーと思いました。
なんだったら若者たちだけのバージョンでも映画が撮れないこともなかっただろう。
でもこのユエチンがいてくれたおかげで彼らの成長というのをすごく感じることができましたし、彼ら4人が一緒にいることで、少しの間だったが彼らの間に温かい交流があったんだなぁーという、人間らしい「情」の部分も感じることができました。
また、ユエチンが自殺未遂を犯してしまった時には彼らは初めて「死」というものを目の前にして「生死」ということについて考えたことでしょうし、また、彼女の息子さんの事故死、その息子の生き残った彼女の存在、四川省大地震・・・ということでも彼らは「生死」や「無情さ」を感じたかもしれません。
この映画が与えてくれる感情、ということを考えると、この「常月琴」(ユエチンね)はやはりなくてはならない存在だったように思いますし、いてくれたおかげでより深く感じることができたように思います。
なんだかんだと難しいことを書いてしまいましたが、四川省ならではのどんよりとした湿り気の多い空気を存分に堪能させてくれる風景、その中をまるで彼らの開放感を示しているかのような貨物列車の疾走シーンなど、さすが最優秀芸術貢献賞!(長っ!)と言いたくなるような美しい映像もたくさんありますのでそれらを観ているだけでも楽しいです。
四川の風景からはマイナスイオン感じます!!
そして観ている間はハラハラドキドキ・・・と気持ちも激しくゆさぶられていましたが、最後にはそんな感情もあの四川の山々に溶け込んでしまったかのように静かに落ち着いていました。
とてもいい映画でした。
うりぼう5つ:
ありがとうございました!