◎VH1 STORYTELLERS
▼VH1 ストーリーテラーズ
☆Alicia Keys
★アリシア・キーズ
released in 2013
CD-0422 2013/7/3
アリシア・キーズの新譜が出ました。
昨年11月にスタジオアルバムの新作が出たばかりですが、今回は彼女にとって2枚目のライヴアルバム。
VH1 STORYTELLERSは、アメリカの音楽専門有線テレビ局VH1の番組名で、スタジオライヴの模様を放送するもの。
MTVのUNPLUGGEDのようなものですが、1990年代中頃から出てきて、リンゴ・スターやビー・ジーズなどもこの趣旨のCDを出しています。
アリシア・キーズはかつてMTV UNPLUGGEDもCD化していたので、これで両方とも出したことになります。
スタジオライヴということで、リラックスして楽しんでいる様子が音や音の間から伝わってきます。
アリシアは大きな会場のコンサートもこなしているようで、Facebookにも積極的に情報を上げていてその様子の写真を見たことがあります。
それらを見ずに言うのもなんだけど、彼女は、あまり大きくない、せいぜい2,500人くらいの会場でしっとりと聴かせるライヴのほうが合っているように、少なくともこれを聴く限りでは感じました。
そう感じたのは、彼女の曲はじっくりと聴かせるものが多く、みんなではしゃいで盛り上がるという曲はほとんどないから。
彼女は共作はあっても基本的には自分で曲を書いているので、それは彼女の個性ということになるのでしょう。
演奏も気心知れた仲間による肩肘張らない、自然な雰囲気が伝わってくる。
もうひとつ、客の拍手歓声の音が大きく入っており、反応がリアルに伝わってくるところが、小さな会場によるライヴの良さでもあります。
テレビ撮影はあるにしても、このようないい雰囲気で彼女の歌やピアノを聴いてみたい。
このCDを聴いて素直にそう思いました。
1曲目No One
拍手を受けてアリシアが優しい声で喋り、ピアノを弾き始めて曲が始まる。
少し進むと、「ここでアコースティックギターが入る」となどと自分ら解説するように話し、いきなり大きな声で歌い始める。
アリシア・キーズといえばバラード、その路線の優しい曲。
しかしごめんなさい、この曲は分かりませんでした。
実は僕は、アリシアアリシアと言いふらしている割には、まだ2ndと3rdアルバムは曲がそらで分かるほど聴き込んでいないのです。
もちろんどちらも持っていますが、4枚目を買ってからの後追いで、1枚目は聴き込んだけどその次がまだなのでして。
この曲は冒頭に来るだけあって人気があるのでしょうね。
それも含めて、暫くこれを聴いてから、いよいよ2枚目と3枚目を聴き込まないと。
2曲目Brand New Me
昨年出た5枚目から、そのアルバムの記事はこちら です。
こぼれおちるようなピアノの音、絞り出すような声。
この曲こそが小さい会場でこそ映える。
まあ、大きな会場でもいいものはいいのでしょうけど。
3曲目You Don't Know My Name
2枚目からの曲でこれも分からなかった。
これはいかにもポスト・ラップ・ヒップホップのR&Bという響きで、喋りもあるし、ここではしっとりと聴かせる曲が続いた後でペースを上げるにはいい感じ。
4曲目Empire State Of Mind (Part II) Broken Down
僕が大好きな4枚目から、そのアルバムの記事はこちら です。
イントロのドラムスは同じアルバムの別の曲のイメージで、あれっ、と思う。
ビリー・ジョエルを受け継いだような印象に残りやすい曲だけど、本人も気に入っているのかな。
ライヴ盤はどんな曲を歌うか、興味深いし楽しみですよね。
5曲目Not Even The King
最新作で僕が将来の名曲候補と書いた曲、早くも別のかたちで登場。
この曲の言葉を慈しむような歌い方が歌手としての彼女の魅力でもあります。
ただ、これは僕の考えだけど、コンサートの流れでこの落ち着いた曲が出てくるのは少し早すぎるような気が。
テレビ番組という関係かな、普通のコンサートより短いだろうし。
ただ、良くないというのではなく、それが彼女の個性だと納得はします。
ところで余談、昨夜、このCDを聴きながら小林信彦のエッセイを読んでいたところ、ほんとうにまったくの偶然、この曲がかかっている時に、歌詞に出てくる"Alll the king's men"映画『オール・ザ・キングズメン』の話題になったのは、自分でもちょっと感動しました(笑)。
6曲目Fallin'
デビューアルバムから、そのアルバムの記事はこちら です。
最初に聴いた時に、音使い、旋律における音と音のつながりやコーラスとの絡みが不思議な響きの曲だなと印象に残りました。
ここではゴスペル風の雰囲気を強く押し出し、オリジナルよりも荘重な雰囲気になっています。
彼女も成長したということかな、ちょっと驚く、この演奏は。
7曲目If I Ain't Got You
これも2枚目から、ということで分からなかったけれど、ワルツで明るくてちょっとしゃれた雰囲気のバラードといっていい曲。
途中で話が入り、コンサートらしくその場が盛り上がる。
8曲目Girl On Fire
彼女の曲で盛り上がるとすればやっぱりこれかな。
静かなピアノだけをバックに声を揺るがせながらも堂々と歌い始めるのがスリリングで、英雄的な響き、女性だけど。
サビの"Fire"の部分はかなり大きな声を出しているようで、そこだけ音のバランスが少しずれているように感じます。
ところでこの曲のクレジットを見るとビリー・スクワイヤー Billy Squierの名前が。
調べたところ、イントロのドラムスが彼のThe Big Beatという曲からいただいたものだと分かりました。
9曲目New Day
最新作で僕が特に印象に残った曲、のひとつ、というべきかな、みんな印象に残ったから(笑)。
歌の中で「エイエイエエイ」と、歌うというかハミングというかスキャットする部分があって、「エイ」という音でそれは聞いたことがなくて、面白いなあ、と。
今回聴いて、よくよく考えると、"Day"の音を反復しているだけなんだ、ということに気づいた。
それがここではとっても印象的。
しかも曲が、「エイエイ」の連呼のまま突然終わってしまう。
10曲目Try Sleeping With A Broken Heart
4枚目の曲。
11曲目Un-Thinkable (I'm Ready)
最後も4枚目から。
ミディアムテンポで歌い上げる曲だけど、感傷的になりすぎない、ぎりぎりの理性を常に感じさせるのがアリシアの歌い方。
ただ、これ、いきなり途中で強制終了するように曲が終わり、しかも最後の余韻があまりないままCDが終わってしまうのがちょっと残念。
テレビ番組でCMでも入ったのかな、正直いえばこの終わり方は疑問でした。
まあでも、アリシア・キーズのライヴを垣間見ることができたのはよかった。
聴き終わって気づいた。
彼女はやっぱりキャロル・キングの系譜にある人だ。
ソウルというほどソウルフルでもなく、ピアノ弾き語りでまっすぐに歌う姿勢は、キャロルの正統的後継者とすら思います。
キャロル・キングの名前は既にこの記事でも一度出ていましたが、意識の底の方で、僕の中ではこの2人はしっかりとつながっていることもよく分かりました。
アリシア・キーズは来日公演、ないのかなあ・・・
ぜひ行きたい、必ず行きたい、東京であっても。
まあ、札幌には来ないでしょうけど・・・
さらっと軽く聴け、なおかつ充実した歌ものの1枚です。
ところで、僕はこれ、CDだけのものを買いましたが、CD付きDVDもリリースされていて、それは1000円くらい高いだけでした。
それだけの負担で映像も見られるなら、と、買うまでに少し悩みましたが、やはりCDだけを買うことにしました。
CDで出ているものはCDとして買いたいので。
それと、CD付きDVDはDVDの大きさのケースに入っているので、同じ棚に収められないし。
ただ、じゃあ、CDの大きさのケースに入っていれば、それは考えたかな・・・(笑)・・・
ブルーレイも出ていて、映像を見たくなればそれを買うことにします。