THE ELEMENT OF FREEDOM アリシア・キーズ | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。


自然と音楽の森1日1枚-May16AliciaKeys


◎THE ELEMENT OF FREEDOM

▲エレメント・オブ・フリーダム

☆Alicia Keys

★アリシア・キーズ

released in 2009

CD-0049 2011/05/16


 アリシア・キーズのスタジオ録音のアルバムとしては4枚目の作品。


 このところ大御所続きで少しばかり息苦しい部分もあるかもしれず(笑)、今日は年齢も彼らの半分の若手で爽やかにいきたいと思います。

 といってて僕の中では新しい彼女ももう10年選手の仲間入りですが。


 結論から先に言えば、彼女のこのアルバムはもはや僕の心の中心部近くに確かな位置を築いた大切な1枚です。

 楽しい気分の時に聴きたくなる音楽というのは無数にあるというよりそれが普通でしょうけど、このアルバムは気持ちが落ち込んでいる時、憂鬱気味な時(僕は本当の憂鬱を経験したことがない)、手に取って聴いてなにがしかの慰めと癒しが欲しいと思う時にも選ぶ1枚となっています。

 そうした存在感のアルバムとしては僕の中で最も新しい1枚です。


Tr1:Element Of Freedom

Tr2:Love Is Blind

 90年代以降のいわゆるR&B系のアルバムではこのイントロと題した短い前奏曲を入れて始まるものが多いですね。 

 彼女の音楽は「ネオソウル」と呼ばれているようですが、そうですねまだソウルを傾聴するようになって3年かそこらでこういうのも生意気かなと思いつつ言わせていただければ、確かにソウルという感じの響きではないかもしれない。

 じゃあなんだろうと言われると答えに窮しますが、でも2曲目のほの暗いソウルっぽい曲は歌としてじゅうぶん心に迫ってきます。


Tr3:Doesn't Mean Anything

 アリシアの声が僕は大好きですね。

 基本的に甘いけど甘ったるくはない女性ヴォーカルに弱い僕ですが、さらにもうひとつ声を高音で伸ばすと微妙にハスキーになるけど完全なハスキーではないという要素もある彼女の声は僕には完璧(笑)。

 ミドルテンポのちょっと80年代風のこの曲では彼女の声の良さを実感できます。


Tr4:Try Sleeping With A Broken Heart

 このアルバムは都会的な響きの音楽です。

 彼女自体がそうかもしれないけど実は僕は彼女のアルバムはみな持っているけどまだ他のものはよく聴き込んでいないのです。

 でも、都会的な響きというのは何がそう感じさせるのか、このアルバムに出会う前は考えたことはなかった。

 この曲は特にそう感じるひとつですが、ビルに囲まれて視界があまりよくないけど上を見ると確かに空には星がある、そんな感じで響いてきます。


Tr5:Wait Til You See My Smile

 このアルバムが都会的と僕が感じるもうひとつの要素が、昨年3月に東京にコンサートに行った際にこのCDを持っていって東京の弟の家で聴いていた思い出とつながっていることです。

 今年の2月にこのアルバムを聴いてこの曲が流れてきた時に、その弟の家の部屋のCDラジカセで聴いていた時のその部屋の様子があまりにもリアルに頭の中に再現されて驚きました。

 CDラックにあったS&GやビートルズのCD、本、犬たちの写真、壁にかけてある服、テレビ台に置いた本など。

 それは不思議な体験でした。

 そしてその時このアルバムは僕にとって大切な1枚になったと実感しました。


Tr6:That's How Strong My Love Is

 この曲はピアノの音が都会的な響きだと感じさせる部分かな。

 繊細なバラードだけどサビの部分でふわっと世界が広がってゆくこの曲はシンガーソングライターの系譜の末裔のような感じでキャロル・キングとつながってきます。


Tr7:Un-Thinkable (I'm Ready)

 歌詞の中に「あなたの子どもを持ちたい」というようなくだりがあって曲名でも「準備ができている」とわざわざ()つきにしているけど、アリシア・キーズはこのアルバムの後で実際に結婚し妊娠したことを発表しました。

 僕は相手の男性のことを知らないけど(調べれば分かるだろうけど調べないだけ)、そうか彼女の曲も当たり前に実体験を基礎に書いているものが多いんだって気づきました。

 この曲は切なさがいいですね、僕は切ない曲が大好きです。

 だけどこの曲は実生活の成り行きを知って聴き直すと、切なさはあるけど希望にも満ちている、そこがいいのでしょう。


Tr8:Love Is My Disease

 この曲を聴くと僕の直接的な体験が思い出されます。

 東京の弟の家は上野の近くにありバードウォッチングが好きな僕は朝5時地下鉄が動き出すと上野に行って不忍池でバードウォッチングをするのが「日課」になっています。

 ひと駅だから歩いても行けるんだけどなぜか僕は行きだけはひと駅でも地下鉄に乗りたいのです。

 この曲は僕の中では都会の夜明けに直結しています。


Tr9:Like The Sea

 都会的に響くというのは結局はそのアーティストの感じ方や生き方の問題なのかもしれない。

 この曲は海を歌っているけど実際に海を目の前にしてはおらずもうワンクッションある感じがします。

 なお断っておきますが僕は都会的だから良い・悪い、田舎だから良い・悪いという価値判断は持ち合わせておらずどちらにも魅力を感じています。

 だからここではあくまでもそう聴こえることについてどう思っているかを語っているだけです、念のため。

 

Tr10:Put It In A Love Song (featuring Beyonce)

 ビヨンセが客演していて僕はビヨンセも実は大好きだけどそれはまたの機会に。

 しかしビヨンセのアルバムにもこのように打楽器が強く前面に出て演奏が薄く歌を聴かせる曲があるんだけど、これって流行りなのかな。

 アリシアとビヨンセがお互いに"B""A"と呼び合っていて録音が楽しい雰囲気で行われたことを想像させます。


Tr11:This Bed

 この曲は1980年代のプリンスを彷彿とさせます、というかそのものですね。

 そう思って彼女の来歴を調べると1981年生まれだからプリンスが絶頂期の頃はまだ幼稚園かそこらだったわけですね。

 それってリアルタイムには早いのではと一瞬思ったけどそれは日本における「洋楽」として捉えるからそうなるのでしょうね。

 僕自身のことを思い返すと両親が歌謡曲が大好きでよくテレビを見ていたので小学生くらいまでのヒット曲はキャンディーズもぴんから兄弟も知っている曲が結構多くあるので、やはり彼女にとってのプリンスは幼少時代の経験ということになるのでしょう。

 この曲は"this bed is lonely without you"という部分で声がきゅうっと上って切なくなる部分はプリンスの歌唱そのままで僕は10代にプリンスを聴いて育ったのでうれしくなりましたね。


Tr12:Distance And Time

 しっとりと心が伝わるバラード。

 曲の中で一度しか出てこない部分の"I'm waiting million days to see your smile"と歌う部分のちょっと裏に入り込む歌メロがもう絶品ですね。

 彼女がバラードがいいと言われ続けている所以が分かりました。

 それと彼女は人を笑わせることに気持ちをさいているのが人として心が伝わってくる部分で、ここで引用したくだりは歌詞としても胸にしみてきます。


Tr13:How It Feels To Fly

 制約が多い都会の生活では気持ちの逃げ場が欲しい。

 だけどそれは少しあればなんとか生きていけるというのが実感として僕には伝わってきます。

 ゴスペル風のコーラスで盛り上がるバラード。

 

Tr14:Empire State Of Mind (Part II) - Broken Down

 直接的にニューヨークを心象描写している曲があるに及んでやはりこのアルバムは都会を表しているものだと分かります。

 それにしてもニューヨークを歌った曲は多いですね、まさに世界の都会でしょうね。

 実はニューヨークには一度は行ってみたいと思っています。

 まあ現時点ではそれはかなわないので東京で話すとして、丸の内あたりの土日の朝の人気がなく整然とした街並みはそれはそれで魅力的だと思います。


 - Bonus Tracks -


Tr15:Through It All

 このアルバムはボーナストラック込みで大好きだからここでも触れます。

 アレンジが凝った曲でそれは都会のめまぐるしい生活を表しているように感じます。

 最後の"never let you fall"と歌う部分で高音で音を伸ばす部分ではつかの間の解放感を味わうことができます。


Tr16:Pray For Forgiveness

 一方最後のこれは物静かな曲でバラードといっていい曲。

 彼女はクラシックの素養もあるのだと感じさせる洒落たアレンジだけどこの洒落たというのも都会的なものを感じさせる要素かもしれない。

 どこか心の脆さを感じさせそれを祈りに変えて表現するこの曲でCDが終わるのも都会的な響きを象徴しています。



 アリシア・キーズは1981年生まれ、今年30歳か。

 ということはソウルという音楽が一度「死んだ」後に生まれているわけで、ソウルの実体験はほとんどなくてR&Bやラップ/ヒップホップでソウルが復権してから二次的にソウルに接して自分のものとして採り入れたということなのでしょうね。

 

 気持ち的にいろいろあるとやっぱりこのアルバムを聴きたくなるんだなって自分でも思いました。

 そういうCDがあるのは音楽を聴いてきてよかったと思える部分です。


 最後に余談ですが、いつもCDを紹介しているうちの犬たち、ラブラドール・レトリバーはハウ、キャバリアはポーラという名前でどちらも雌です。

 でも、女性アーティストの時はなぜかポーラのほうがイメージが合うと感じていつもそうして撮っています。

 なぜでしょうね(笑)。