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2012年02月25日 guitarbird9091の投稿

GONE TROPPO ジョージ・ハリスン

テーマ:ビートルズとソロ

自然と音楽の森-Feb25GeorgeHarrisonTroppo


◎GONE TROPPO

▼ゴーン・トロッポ

☆George Harrison

★ジョージ・ハリスン

released in 1982

CD-0207 2012/2/25


 2月25日はジョージ・ハリスンの誕生日です。

 今年で69歳、生きていれば。


 今日はジョージ・ハリスンの8枚目のアルバムを。


 僕がビートルズを聴き始めて最初に出たメンバーのアルバムは、中3の時のポール・マッカートニーのTUG OF WARでした。 

 でも当時はまだお小遣いが限られていて、ビートルズを一緒に熱心に聴いていた友だちがそれを買うことになったので僕はカセットテープに録音させてもらって聴きました。

 次に出たのが同じ年のこのアルバムで、今度はお返しとばかりに僕が買ってその友だちにカセットテープに録音してあげました。

 僕はポールのそれはとっても気に入ったのですが、逆に友だちはジョージのこれが気に入りませんでした。


 買いに行ったのは11月、当時はまだ自転車に乗っていて(今は乗りません)、放課後に街中にあるタワーレコード札幌店にその友だちと行き、もう暗くて、店を出ると雪がちらついてきて、LPが濡れないようにビニールの上を追って自転車のかごに入れて帰りました。

 

 友だちとは裏腹に僕は最初からこのアルバムを気に入り、寝る前によく聴いていました。

 寝る前にカセットテープで聴くとB面の最後のほうは覚えていないことが多いんだけど、これはそんなことはなかったようでした。

 というのも、大学時代にCDが出た際に買って聴くと最後の曲まで覚えていたからで、その時にこのアルバムはほんとうに好きなのだと分かりました。

 爾来、ジョージのアルバムで何が好きと聞かれると、雲9とマストパスとこれだねと答えています。


 当時のジョージは音楽業界に嫌気がさしていて、映画製作会社を設立して力を入れたり、オーストラリアで家族と過ごすなどして、音楽からは引退を考えていたとのこと。

 レコード会社もろくなプロモーションをしなかったこのアルバムはたいして売れず、チャート的には最高位108位と大惨敗、初めて、そして唯一100位入りを逃したソロ以降のスタジオアルバムとなりました。

 そのことでますますジョージの心が音楽から離れていったことは当時からもれ承っていたのですが、でも後に、思っていたよりも早く劇的に復活したのはうれしいことでした。


 このアルバムは僕が初めて体験するジョージの新譜で、それはそれは楽しみにしていて、毎号買っていた「FMファン」のチャートに何位で入って来るかとわくわくしていました。

 しかし、いつまでたってもチャートには現れませんでした。

 「FMファン」は隔週刊で、雑誌が編集される段階での最新のチャートが載せられていましたが、きっとその狭間に1週だけ入って落ちたんだろうと、半ば気休めに思っていました。

 当時はネットなんてないし、ビルボードは洋書を扱う書店で売ってはいたけど毎号買うほどお金もないし、それを確かめるすべもなくて、最高位108位だったことは大学生になってから知りました。

 いつもいいます、音楽は売れるからいい、売れないからよくないというものでもないと思いますが、でも僕はチャートから入った人間でまだ若かったのでそれはショックでしたね、ポールは1位になっていたのに。


 しかし、流行り廃り、売れる売れないとは切り離された今にこれを聴くと、かなりいいと思う人が、少なくとも当時よりは多いのではないかと僕は思います、思いたいです。


 音楽の充実度はかなりのレベルに達していて、曲もいいしアレンジもいいしサウンドも素晴らしくて何よりスライドギターがもう至芸ともいえる領域に達していると言えます。

 アートワークが示すように全体的にトロピカルな響きの温かくまろやかな音で包まれていて、人によっては癒しを得られるかもしれません。 


 ジョージはビートルズの喧噪から始まってよいこともよくないこともいろいろ経験してきて、この頃にはもう人生に達観していたのかもしれません。

 若い割には引きすぎているといえるのかもしれないけど、少なくともジョージがこれを作った年を僕が超えた今はもう若すぎると感じることもないですしね。

 あ、ジョージがこれを作った時はまだ39歳、僕はもちろんまだまだ達観なんてほど遠い人間ですけどね(笑)。



 1曲目Wake Up My Loveはまるでトトのようなシンセサイザーのイントロで始まる、ジョージには珍しくまるで陰りがない陽気な曲。

 悪くないんだけどね、でも、ジョージにこれは求めていないかな。

 やっぱり陰りがある曲がジョージの魅力だから。

 一応はレコード会社の要請に従って売れそうな曲を作ってみたというところでしょうかね。

 ただし今聴くとまあいいとは思う、特にベースをはじめとした楽器の低音の使い方がいいですね。


 2曲目That's The Way It Goesはジョージの名曲。

 アルバムを聴いて最初に気に入ったのがこの曲で、後にダークホース時代のベスト盤にも収録されて、僕の耳は正しかったんだって妙にうれしくなりました。

 暖かくてまろやかな雰囲気の優しい響きの中、ある男の人生を連作短編小説風にシニカルに読み込んでいますが、それはとりようによってはジョージ・ハリスン本人のようにも感じます。
 いろいろな苦難を乗り越え、世の中なるようにしかならないという境地にたどり着き、すべてを許してしまったかのような包容力があるこの曲を聴くと、こちらまで穏やかな気持ちにさせられます。

 ジョージのクセが不思議とこの音の雰囲気になじんでいて、ジョージの奥深さを感じますね。
 
 3曲目I Really Love Youはビートルズの前の1960年代初頭のカバー曲で、ドウ・ワップ風の味付け、ベースを真似たスキャットや低音コーラスの懐かしい響きのひたすら楽しい曲。


 4曲目Greeceは南国趣味満開のとろっとした半インストゥルメンタルの曲で、半というのはBメロでジョージが一応は少しだけ声を出して歌っているから。

 ジョージのサウンドはもっと評価されてもいいのではないかなあと。


 5曲目Gone Troppoは当時はHere Comes The Sunを彷彿とさせると言われていましたが、でもやっぱり南国だから氷が解けるとかそういう世界じゃないですね、肌に感じるのは南風。

 そういえば昔日産オースターという車があって、そのCMが南の風をイメージさせるもので、この曲もそんな感じかもしれない。

 と思ったけど、オーストラリアは南半球だから、北風のほうが暖かいんだな、失礼しました。

 曲はいいですよ、陰りとかクセとかよりもジョージの明るい面が普通によく出た曲。

 なお、"gone troppo"とは「いってしまった」という意味だそうで。


 6曲目Mystical One、LPでいえばここからB面

 この曲は陰りがあって歌メロをこねくりまわしたいかにもジョージらしいクセが出まくっていて、ジョージを聴く楽しみにひたることができる曲。

 穏やかだけどひねりがあって、Bメロで急に暗くなるけどすぐに明るくなって元に戻る、トリッキーというほどじゃないけど曲で遊んでいる感じがする。

 歌が終わった最後の入り方も強引なんだけどうまいというのもいかにもジョージで、これはなかなか真似ができない。

 歌詞がまたいいんです、これ、特に最初のほうの

 "I'm happier than a willow tree, shine or rain, sitting here by a stream"

 なんとも情緒豊かなくだり。

 僕は最初から気に入っていて、隠れた名曲だと思います。

 7曲目Unknown Delight、このアルバムはB面になるとトロピカル一辺倒から少しずつ戻っていく感じがします。

 ミディアムスロウのこの曲はじわっと歌うジョージ節だけど、間奏のギターソロでSomethingを彷彿とさせるフレーズが入っているのは、もうここまでくれば自らも茶化すしかないという心境だったのかな。


 8曲目Baby Don't Run Awayはまた50年代から60年代初期にかけてのオールディーズ風の響きで、やはり低音コーラスが強調されて4曲目の裏返しのような感じかな。

 この2曲は強烈な印象を残すというよりは後でじわっと思い出すタイプの曲でしょうね。


 9曲目Dream Away は自らが制作に携わったテリー・ギリアム監督の映画「バンディットQ」(原題は"Time Bandits"のテーマ曲であり、日本では曲の中のおまじないの言葉をとって「オ・ラ・イ・ナ・エ」としてシングルカットされました。

 映画のテーマ曲だけあって明るく楽しく分かりやすい曲だけど、でも1曲目のようにありきたりではなくてまさにジョージ・ハリスンの世界というのが聴きごたえがあるところでしょう。 

 「オ・ラ・イ・ナ・エ」と素っ頓狂な感じで歌う女性コーラスがいきなり出てきて印象的で、サビを最初に持っていくタイプの曲だけど、最後「オ・ラ・イ・ナ・エ」と言って微妙に暗いコードですっと終わってしまうエンディングも凝ってます。

 しかし当時はそのジョージの世界がもはや世の中では受け入れられなかったのでしょうね。

 映画にはボンドをやめて低迷していた頃のショーン・コネリーも出ていて、大ヒットはしなかったけどマニア的には評価が高い作品のようです。

 この曲には朋友ビリー・プレストンが参加。

 また、クイーンを陰で支えたマイク・モランとパーカッションのレイ・クーパーはこれをはじめ過半の曲で参加しています。

 
 10曲目Circles、最後はどうしちゃったのというくらいに重く沈んだちょっと恐いともいえる曲でアルバムが終わります。

 最初に聴いて、そこまで明るく楽しかったのに最後だけこれというのがどうにも解せなくて、アルバム至上主義人間としては最後がこれというので8ポイントくらい(100点満点で)マイナスになった気がしました。

 でも大人になって聴いて、このアルバムはそれまでの明るさは夢か幻でやっぱり陰鬱で虚しくなる現実に直面しなければならないのか、というメッセージだと考えるようになって納得しました。

 キーボードにはディープ・パープルのジョン・ロードが参加していますが、どこにつてがあったんだろう、ジョージは人脈が広いですね。

 ジョージ・ハリスンは僕はビートルズを聴き始めた頃から好きでした。

 もちろんジョンとポールがいてこそのジョージであり、ジョージも2人から学んで大きくなってソロで成功したのだとは思います。

 でも、歴史のifですが、もしジョージがビートルズの一員ではなくても、デビューのきっかけさえつかめば、それなりに人気が出て評価を受けたのではないかと思います。

 1970年代はちょうどシンガー・ソングライターの時代でしたし、少なくともそこに乗ることはできたのかなと。

 うがった見方をすれば、元ビートルズというレッテルがマイナスに作用していて正当に聴いてもらえてないのかもしれないと思うことが僕はあって、それは、70年代シンガーソングライターのものを近年聴くようになってなおのことそう思うようになりました。

 

 と書いて、やっぱり歴史のifでしかなくて、ジョンとポールと一緒にいなければ、ここで聴かれるような音楽まで自力でたどり着いたかどうかは分からないですね。

 この分からないというのは、僕なりに譲歩した表現ですが。


 人の人生そして才能とは、かくも面白くて興味深くかつ奇妙なものだなと、ジョージを見ると思いますね。

 

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2012年02月24日 guitarbird9091の投稿

THE SINGLES プリテンダーズ

テーマ:アーティスト P


自然と音楽の森-Feb23PretendersSingles


◎THE SINGLES

▼ザ・シングルズ

☆Pretenders

★プリテンダーズ

released in 1987

CD-0206 2012/2/23


 プリテンダーズのシングルA面曲を集めた事実上の最初のベスト盤。

 今回も「ベスト・ヒットUSA」つながりで記事を書こうと思ったCDです。


 世の中に数多のアーティストによるベスト盤は数あれど、このCDは僕がいちばん好きなベスト盤です。

 僕はこういう話をする時によくビートルズとそのメンバーを除きますが、今回は正真正銘、ほんとうにいちばんです。

 ただ、僕も素直じゃないので(笑)、いちばんが3枚あって、他の2枚は、ジョン・レノンのSHAVED FISHそしてクイーンのGREATEST、この3枚がいちばんです。


 ベスト盤には大きく分けて2つあります。

 ひとつは、曲を年代順に並べたもの、もうひとつは年代に関係なく編集したもの。

 今はベスト盤用の新曲が入っていることもありますが、基本はその2つは今でも変わっていないと思います。


 僕がいちばん好きな3枚のベスト盤のうち、ジョン・レノンとクイーンは後者、年代に関係なく恣意的に並べられたもの。

 このタイプは、アルバムとしてトータルで聴くことによりその曲が持っていた以上の意味を見出そうというもので、特に曲の並びが変わることにより曲と曲とのつながりや間が有機的に働いてくるようなことになれば、アルバムとして素晴らしいという感想を持ちます。


 一方プリテンダーズのこれは前者で、シングルカットされたA面の曲を年代順に並べたものです。

 具に見ればシングルのリリースの順番とは違うのですが、オリジナルアルバム単位で考えると、最初3曲が1st、4曲目から7曲目が2nd、8曲目から12曲目が3rd、13曲目から15曲目が4thそして最後16曲目はボーナストラック的扱いの曲となっています。

 

 アルバムとして聴くことを考えて編集されたものが素晴らしいのは理屈抜きで納得できると思います。


 しかし、プリテンダーズのこれは、言ってしまえばただ順番に並べただけなのにこれほど素晴らしいというのは、逆にいえばちょっと不思議な気もします。


 僕は考えることが好きなので、それはどうしてか昔から考えてきましたが、結論は出ていないのですがなんとなくこうという考えがあるにはあります。


 プリテンダーズは、クリッシー・ハインドは、決してぶれることなく真っ直ぐ進むそのさま自体が彼女の表現そのものである。

 余計なことを考えなくても、歩んできたままを表せば筋が通ったものとして聴かせることができるのでしょうね。



 1曲目Stop Your Sobbing、いきなりアカペラで曲が、アルバムが始まるのがなんともクール。

 ミドルテンポの明るい曲はキンクスのレイ・デイヴィスのペンによるもので、後にキンクスのヴァージョンが発表されたので書き下ろしということになるのでしょう。


 2曲目Kidsはオールディーズ風のギターのイントロに導かれるどこか懐かしい響きの曲。

 ラモーンズもAC/DCもオールディーズの焼き直しのロックンロールが基本と思うんだけど、プリテンダーズもそうなのでしょう。


 3曲目Brass In Pocketはソウル以前のR&Bを鋭くしたような響き。

 A→B→Cの構成になっていて、Bメロの部分がよく聴くとものすごく単純に同じ旋律を繰り返しているんだけど、クリッシーの表情が豊かで逆にそここそ聴き入ってしまう。


 4曲目Talk Of The Townはクリッシーのクールな魅力が全開、いや全開するのはクールじゃないな(笑)、抑えた中に感情が行き交う独特のヴォーカルスタイルに聴き惚れます。

 サビで"Maybe tomorrow"と歌う部分の"tomorrow"で「とぅもぉおおおおおぉろぉぅ」の段々と音が下がっていくのが口ずさむ時に微妙に音がとりにくいんですよね(笑)。


 5曲目I Go To Sleepは最初に聴いた時にちょっとオカルトチックで恐かった。

 イントロに入るホーンの音色がまたクリッシーの声に合っていてぞくぞくっと来ますね、いい意味で。


 6曲目Day After Dayは最初のほうで"Tokio"と出てくるのを聴いて急に親近感を覚えました(笑)。

 そういえばクリッシーはこのアルバムの後の曲のビデオクリップでZo-3ギターを持っていたけど、親日家なのかな、少なくとも興味があるのでしょうね。

 割と目立つところで"Mr. Moonlight"と歌うのも気になるところ(笑)。


 7曲目Message Of Loveはギター弾きにはたまらないキレ味鋭い曲。

 こちらは歌詞にブリジット・バルドーが出てきますが、ボーイッシュなイメージのクリッシー・ハインドとセックスシンボルのバルドーというミスマッチ感が楽しかった。


 8曲目Back On The Cain Gang、僕がプリテンダーズでいちばん好きな曲であり、1980年代ソングスでも特に思い入れが深い1曲。
 洋楽を聴き始めたごく初期に「ベスト・ヒットUSA」でビデオクリップを見て曲を聴いて心打たれたのですが、ケーブルテレビのベストヒットを見てそのことを思い出したのでした。
 歌メロがよくギターがカッコよくて気に入ったのですが、これを最初に好きになったのは運命だったと後で思いました。
 この曲は、サム・クックのChain Gangへのオマージュであり、「うっ、はっ」という労働者風のコーラスも入っているけど、僕は当時はサム・クックを知らず、大学時に聴くようになり、そうかそういうことだったのかと頭の中でつながりました。
 だからこれは音楽のタテのつながりを僕に意識させてくれた曲であり、ルーツをたどって聴くことの楽しさを教えてくれた曲です。

 とにかくギターサウンドが最高なのですが、この頃のリードギターはロビー・マッキントッシュ。

 彼は1990年にポール・マッカートニーが来日公演を行った際のバンドのリードギターであり、この曲に参加していたことはそれまで知らなかったのですが、ポールに会えたことに加えて大好きな曲に参加していた人に会えたのはまたとってもうれしかった。


 9曲目Middle Of The Lordで僕は環境が音楽に与える影響について考えました。

 クリッシー・ハインドは生まれはアメリカ、ハイスクール卒業後に英国で記者をしていてロックをやるようになったという人。

 プリテンダーズは表面上の音楽はアメリカンロック、でもそれを支えるセンスの鋭さは英国的、と僕は感じたのですが、それはそうした環境の影響なのだろうなと思います。

 この曲はとりわけ土臭さを感じるんだけど、でもこのソリッドさはアメリカのバンドにはないものでしょう。

 

 10曲目2000 Milesはクリスマスソングじゃないクリスマスソングの代表的な曲。

 R&Bバラードを踏まえたやはり懐かしい響きは郷愁を誘う感動的な曲で、エレクトリックギターのアルペジオの響きが寒さや寂しさをうまく表していますね。


 11曲目Show Meは一度しか出てこない中間部、クリッシーが「おぅ」と嘆くように言いながら入って行くのですが、そこのコード進行、全体の演奏そしてクリッシーの嘆き声がもう最高。

 クールなニヒリズムに支えられたプリテンダーズのクールさの象徴のような曲。


 12曲目Thin Line Between Love And Hateは後にアニー・レノックスも歌っていますが、これが70年代ソウルグループのパスウェイダーズの曲だと知ったのはアニーが歌った時のことでした。

 80年代の英国はソウルの独自解釈が流行っていたようですが、プリテンダーズはあくまでもロックンロールにこだわっていたのかな、これは後にオリジナルを聴いて割とストレートに歌っていると感じました。

 ただしそこに込められた思いはクリッシーのもので、プリテンダーズの世界に染まっています。

 PersuadersとPretenders、そういえばなんとなく似てますね、偶然かな(笑)。


 13曲目Don't Get Me Wrongは高校時代にクラスで曲とビデオクリップが話題になりましたが、クラスメートのひとりが、意外とかわいい人なんだなって言ってたのを思い出します。

 そうですね、音の響きもそれまでよりまろやかになっていて、歌メロも分かりやすくてそれは言い得て妙だなと思いますね。


 14曲目Hymn To Her、僕はこれを最初に聴いて驚いたというか意外に思いました。

 先ほどからクリッシー・ハインドはクールだクールだと書いてきましたが、だから人に対して、冷たいというと言い過ぎかもしれないけど、シニカルな見方ばかりをする人というイメージを勝手に持っていました。

 だからこの曲の優しさが意外でした。

 母性愛というか、すべてを包み込む優しさ。

 だけど、支えはするけどそこから先に進むのはあくまでも自分の力というメッセージも伝わってきて、人との距離感を強く感じる、プリテンダーズの中でも人間臭い曲だと思います。

 僕はこのCDで知らなかった曲ではこれがいちばん好きになりました。

 15曲目My Babyは本編最後の曲という位置づけですが、それまでの足取りをさらっとまとめてあまり大げさになることなしに自分たちらしく前に進もうという気概を感じます。

 13曲目からここまでで、プリテンダーズは、クリッシー・ハインドは、このアルバムで少し方向が変わったように感じます。

 鋭いだけではいけない、硬いだけでもいけない、肩の力を抜くことを覚えたのかもしれません。


 16曲目I Got You Babeはクリッシー・ハインドがUB40に客演したもので、ソニー&シェールの名曲をレゲェで歌っています。

 UB40は後にエルヴィス・プレスリーのカバーで大ヒットしますが、僕の中ではここにこの曲が入っていたことがそれにつながって、やっぱり、と思いました。

 クリッシーもレゲェが大好きなのは、僕はさらに後になってよく分かりました。

 アルバムの流れとしてはアンコール的に出てくるのがまた素晴らしくてサービス精神を感じますね。

 記事にするのに久しぶりに聴いたけど、やっぱりすごい、とってもいい。


 プリテンダーズは2000年にこの後に出た曲を足してこちらから少し引いたベスト盤が出ていて、そちらの曲順は年代順ではなく編集されたものですが、正直言えば、アルバムとしての感動はこちらにははるかに及ばないものです、たとえこの後に出てきた名曲が入っているにせよ。

 一方でこのCDはまだ商品として生きていて、この時代までのオリジナルアルバムのリマスター盤が出ているにもかかわらず、それはやはりこのCDが編集が素晴らしいからかもしれないですね。

 

 このCDは冬に買ったのですが、そのせいかサウンドの鋭さのせいかクリッシーのクールさのせいか、冬によく似合うと思っています、もちろんクリスマスソングが入っていることもあるでしょうけど。

 今朝は重たい雪が積もった札幌ですが、それは春が近づいている証拠でもあります。

 春を迎える前にこのCDを聴いて記事にしたのは、春に向かうための心構えかもしれないですね。



2012年02月22日 guitarbird9091の投稿

MIDNIGHT MADNESS ナイト・レンジャー

テーマ:アーティスト N


自然と音楽の森-Feb22NightRanger2nd


◎MIDNIGHT MADNESS

▼ミッドナイト・マッドネス

☆Night Ranger

★ナイト・レンジャー

released in 1983

CD-0205 2012/2/22


 ナイト・レンジャーの2枚目のアルバム。


 昨夜はケーブルテレビで放送されている「ベスト・ヒットUSA」を見ました。

 火曜の23時からの放映だと分かったのが先月で、すぐには覚えられずに2週ほど見落としたのですが、曜日も時間もちょうどいい頃合いでこれから見てゆこうと思っています。


 昨夜はしかし僕はあまり興味がない特集だったので、CDをかけることはなかったけど、弟と音楽のことをいろいろい話したりネットでCDのリリースと在庫チェックなどをしていました。

 その中でナイト・レンジャーの話になり、突然聴きたくなり、番組が終わった後に聴きました。

 ベストヒットつながりで思い出したものだけど、バンド名もアルバム名も、思い出すにはちょうどいい時間帯でした。


 ナイト・レンジャーは洋楽に興味を持ち始めた頃にちょうど出てきたので思い出はいろいろあります。

 ありますが、当時はレコードを買うことはないまま、30歳を過ぎて初めてCDを買って聴くようになりました。

 僕はどうやらハードロックが好きそうだと分かったのはちょうどその頃で、ハードで歌メロがいいというナイト・レンジャーはすぐにでも好きになりそうなものだと今にして思うんだけど。


 このアルバムのSister Christianはそれこそ「ベスト・ヒットUSA」で見て聴いて一発で大好きになり、タワーレコードでLPを手に取って見るところまでいきました。

 次のシングルだった7曲目のWhen You Close Your Eyesも流れるような歌メロが気に入ったことは気に入りました。

 1曲目(You Can Still) Rock In Americaはラジオで聴いてアップテンポだけど歌メロがしっかりしたカッコいい曲でいいなと思いました。

 でも、買わなかった。



 ひとつは、よく話に出すけど、中学時代からの悪友がハードロック・ヘヴィメタル系、以降これを「バーン系」と書くことにします、を聴き始めてそれ以外の音楽をバカにするようになり、ナイト・レンジャーは「バーン系」だから僕はそれに反発していたというのはあるでしょう。

 これが大きいかな、でも、それだけじゃないような気もする。


 もちろん当時はお小遣いの関係で欲しいLPがすべて買えるわけでもなかったから、単に資金的な問題というのもあるでしょう。

 ただ僕の場合、LPを買わないからといって他のものに使うことはほとんどなくて、AというLPを買わなくてもBというLPを買う、ただそれだけのことでした。

 ということはナイト・レンジャーのこれは優先順位が低かったということで、そこには何かありそうです。


 結論と言っていいかどうか分からないけど、とにかくこの話のまとめとして言えることを。

 僕がLPを買うのをためらってやめたのは、アルバムとして聴くにはあまりいいものではないんじゃないかなという、ヤマ勘というか、雰囲気というか、とにかくそれを強く感じたからでした。


 ビートルズから始まった僕は10代の頃はアルバム至上主義で、シングルで大ヒットするようないい曲があってもアルバムとして気に入らなければそこで終わっていました。

 高校に入ってタワレコで輸入盤のドーナツ盤が490円で買えるようになり、シングルだけ買うことも増えました。

 

 でも、もう少し考えると、ではどうしてそういうヤマ勘が働いたのだろう。


 これはもう、それが音楽というものじゃないかなと。

 冷静な判断以前に、感じるものだから。


 シングル曲を聴いて気に入って、アルバムにはもっといい曲がありそうと感じればLPを買うし、そうじゃなければ買わない。

 ビデオクリップを録画して見て聴ようになってからは、シングルまでたどり着かないものも増えてきた。


 ナイト・レンジャーには、当時の僕はあまりわくわくしませんでした。

 シングル曲を聴く限り、いい感じではあるんだけど、僕にはちょっとポップにやりすぎじゃないのかと思った部分もありました、そこに無理を感じたというか。

 おまけに、LPを手に取った時、ジャケットがあまり気に入らなかったことも覚えています。


 アルバムを初めて聴いたのは30歳を過ぎてからでもちろんCDでしたが、当時思っていた通り、上記3曲以外は印象に残らず、アルバムとしてとてもいいものだとは思えませんでした、あくまでも僕の感じですが。


 ただし、最近になってもれ聞くところによれば、彼らはバラード系はレコード会社に入れるように言われていて半ば渋々歌っていたということなので、彼らを責めるのはお門違いかなと思う部分はあります。

 実際にRock In Americaのようにアップテンポの曲も僕は気に入っているのだから、そうであるならその路線で攻めていればまた僕も違った感じ方をしたかもしれません。

 ただしのただしで、Sister Christianも外部の作曲家ではなくメンバーが書いているので、レコード会社の要請に十分以上に応えられる作曲能力があった集団であることも分かりますね。

 ポップソングとしてはそこは素直に評価していいのではないかと思います。


 そして僕も年を取って以前ほどアルバム至上主義ではなくなり、まだかけらは残っているんだけどそこにはこだわらなくなり、音楽に意味を求める傾向も減じ、歌を覚える気力も萎えてきました。

 そうなると逆に、ただかけていて気持ちがいい音楽の存在価値が僕の中では大きく上がりました。

 

 ナイト・レンジャーはだから、今は、かけているとかなりいいですね、そう思います。

 ハードでポップな音はそもそも僕のデフォルトだし、かけていて悪い意味で気になる、ということがありません。

 また僕は1980年代サウンドで育ったので、かけていると何かほっとするものも感じます。

 僕も昔を懐かしむようになったんだな(笑)、いや、懐かしむのは誰でももっともっと若い頃からそうでしょうけど、懐かしいという気持ちを正面からとらえて正当化できるようになったというか。

 

 実際、時々聴きたくなるのだから、30年近くが経ってようやく僕は、ナイト・レンジャーとのちょうどいい距離感をつかめたようですね。

 そういうバンドはまだまだあると思い、だから、昔はそれほど好きではなかったものでもまだまだ好きになる可能性はありそうです。


 などなど、「ベスト・ヒットUSA」を見ながら思ったことを起点に書き進めてみました。

 正確にいえば、昨夜の場合は見てはいなかったかもしれないですが(笑)。

 また来週、何かを感じるかもしれない。

 

 しかし、番組で僕がいちばん気になったのは・・・


 小林克也さん、滑舌が悪くなったよなあ。





2012年02月20日 guitarbird9091の投稿

BRIEFCASE FULL OF BLUES ブルース・ブラザーズ

テーマ:アーティスト B


自然と音楽の森-Feb20BluesBrothers


◎BRIEFCASE FULL OF BLUES

▼ブリーフケース・フル・オヴ・ブルース

☆Blues Brothers

★ブルース・ブラザーズ

released in 1978

CD-0204 2012/2/20


 今回はブルース・ブラザーズのアルバムを。

 先にまた話は逸れますが、ウィキペディアを見るとブルース・ブラザー「ズ」となっていて、今は一般的にそう書くんですかね。

 でも映画のタイトルは「ブルース・ブラザース」のままでした。

 国内盤のアーティスト表記も「ブルース・ブラザーズ」だったので、ここはそれに従って書きます。

 (じゃあなんでブルー「ス」なんだろう・・・)


 それはともかく、前の記事のケヴ・モではブルーズとソウルの間の話をしましたが、たまたま少し前に買ったこのアルバムもそうであると気づいて、続編のようなかたちで書くことにしました。


 映画「ブルース・ブラザース」は高校1年の時にテレビで放映されたものを見ました。

 もう1発で大好きになりました。

 音楽が楽しい上にストーリーも面白かった。

 後日、ある友だちと映画についての感想を話した時、その友だちは開口一番、「スター・ウォーズ」のレイア姫のキャリー・フィッシャーがあんな役だったのがショックだったと話していて、お前最初に思うことがそれかって情けなくなりました・・・


 映画を観た方ならお気づきかと思いますが、映画の中で、ブルース・ブラザーズ・バンドをはじめジェイムス・ブラウン、アレサ・フランクリンなどの登場人物に歌われていた曲の多くは、ブルーズとは言いながらもほとんどがソウルもしくはゴスペルでしたよね。

 「ローハイドのテーマ」や「監獄ロック」も歌っていて印象的でしたが、ブルーズという印象は薄かった。

 そのことは、実はつい最近までずっと別に不思議ではない、逆にごく自然にそういうものかと思っていました。


 映画が公開された1980年頃は、ブルーズはもはやポップスではなくマニアだけが聴くものという感じではなかったかと思います。

 80年だと僕もまだ洋楽を聴いていなかったので当時のことは後追いですが、でもそれから2年で洋楽を聴き始めた頃は少なくともそうでした。

 

 映画にするにあたってはやはり一般受けということを考えて、ポップな音楽で知名度が高いソウルなのかなと。

 前の記事で書いたソウルとブルーズのつながりを考えれば十分以上に納得できるし、R&Bという呼び方が復活して市民権を得ている今ではむしろ必然とすら思えるものがあります。


 そしてもうひとつ、どうしてソウルだったのか。

 ブルース・ブラザーズはブルーズを応援し復興することを願っていた、そのために入り口を広くとった、よく知られたソウルを通してさらにそこからさかのぼってブルーズの素晴らしさにひとりでも多くの人が触れてもらいたい。

 ただし1980年代頃になると、もうソウルも衰退の道をたどっていたので、ソウルを応援するという気持ちももちろんあったのでしょうね。

 ブルース・ブラザーズはアメリカの人気テレビ番組「サタディ・ナイト・ライヴ」のコーナーから出たバンドで、エルウッドがダン・エイクロイド、ジェイクがジョン・ベルーシの兄弟という設定。

 これが受けて話が発展、ライヴアルバムを制作して出したのがこの作品、なんとそれがビルボードでNo.1に輝いてしまいました。

 いわば究極の素人芸ともいえるものだけど、しかしバンドのメンバーは素人なんてとんでもない。

 ギターにはマット・マーフィ、ギターのもうひとりとベースが元ブッカーT&MG's、あのスティーヴ・クロッパーとドナルド・ダック・ダン、ドラムスにスティーヴ・ジョーダンなどなど、逆に最高峰のR&Bバンドといえるでしょう。

 ダン・エイクロイドはハーモニカも演奏していてこれがなかなかいい。

 

 このライヴ盤は最高にショーアップされていて、歌い方はやはり本格的なブルーズというよりはユーモラスな発声だけど、上手いとか下手とかそういう次元ではなく、ひたすら楽しく聴かせてくれます。

 5曲目のRubber Biscuitは歌詞ではなく変な声でハミングして間に語りを挟んだもので、これが最高位37位とシングルで小ヒットしたということ。


 選曲は、オープニングとクロージングがオーティス・レディングのI Can't Turn You Loose、千葉ロッテがチャンスを迎えた時に応援歌として使っていますが、それとサム&デイヴのSoul Manがソウル系の曲、さすがはどちらもスタックスの代表曲ですね。

 他はブルーズ系だけど、でもやはりジュニア・ウェルズのMessin' With The KidのようにブルーズというよりはR&Bという趣きの曲もあって、彼らが目指していたところがよく感じ取れます。

 Soul Manはシングル最高14位と中ヒットを記録、聴いているとやっぱり会場がいちばん盛り上がっているのはこの曲ですね、「素麺」ですからね(笑)。



 3年半前にソウルに凝って自分の中に定着し、昨年はブルーズに凝ってやはり定着した僕にとっては、ソウルとブルーズの間にある音楽というのはいろいろと考えさせてくれる気になる存在ではあります。

 2年ほど前にブックオフで750円で見つけて買おうかどうか迷ってやめたままになっていたんだけど、先月に新品で600円を切ったのでついに買ったこのCD、結果としては今でよかったのだと思います。 

 久しぶりに映画も観たくなってきました。 



 「サタディ・ナイト・ライヴ」は以前ケーブルテレビで放送されていた時に観ていたのですが、録画はしていなくて、そろそろまた放送してくれないかな、番組ごとすべてDVD保存しておきたい。

 印象的なコントが幾つもあったけど、ジョン・ベルーシがギリシア系移民という設定で、レストランでアルバイトをしていてペプシしか聞き取れないというのがなんだかわけもわからずおかしかった。


 そのジョン・ベルーシは、僕が映画を観たすぐ後に亡くなったと記憶していたのが、調べてみると逆で、テレビで映画を放映したのは追悼だったのかもしれない、ともかく亡くなった時になぜかブルース・ブラザーズは知っていて、新聞記事を読んで驚いたものでした。


 そして映画の後、ジョン・ランディス監督はかのマイケル・ジャクソンのThrillerを撮影と、僕の中でつながっていったのも、洋楽聴き始めだった僕にはよかったところでした。



2012年02月18日 guitarbird9091の投稿

THE REFLECTIION ケヴ・モ

テーマ:アーティスト K

自然と音楽の森-Feb16KebMo


◎THE REFLECTION 

▼ザ・リフレクション

☆Keb Mo

★ケヴ・モ

released in 2011

CD-0203 2012/2/18


 本日はケヴ・モです。

 ブルーズを聴くようになって俄然興味が湧いてきた人で、これは僕が買った彼の2枚目のCDです。


 本題の前に、Keb Moと書いて「ケヴ・モ」と日本で書いて読ませるのは、"Keb Mo"が"Kevin Moore"の略であり、"Keb"はケヴィンの意味だからということです。

 そういえばかつて上野のアブアブの近くに"DOBB'S TAYLOR"という紳士服の店があって、そこは「ドヴス・テイラー」と書いて読ませていたことを、ケヴ・モを見るといつも思い出します。


 ここではひとまず日本語の表記と発音以上のことは考えないで進むとして、それは分かりました。


 でも、へそ曲がりの僕だから、じゃあどうして「モ」と書く、そこが納得いかない。

 「モー」じゃないの?

 "Moore"は日本では「ムーア」と表記され読まれていますが、実際の発音をなるべく近い音でカタカナで表せば「モー」となり、"Doors"も「ドアーズ」ではなく「ドーズ」なのだという。

 だから、元の意味にこだわって「ケヴ」にするのであれば、「モー」にしないとつり合いがとれない。

 または、"Mo"だけなら「モウ」と発音されることも考えられるから、いずれにせよ「モ」というのはちょっとばかり納得できないものがあります。

 モって、「藻」じゃないんだから(笑)。

 でも、日本式に「ムーア」を略した「ムー」にならなかっただけよかったのかもしれない・・・

 それじゃ一族になってしまうから(笑)。


 なんて、最初の記事だからそこからちょっとこだわってみました。

 

 ケヴ・モは、しょうがない渋々そう書くとして、半年ほど前にブックオフで500円で1枚買って聴いたのが初めてでした。

 それはBIG WIDE GRINというCDで、オージェイズのLove Trainやスティーヴィー・ワンダーのIsn't She Lovelyをはじめとした僕も知っているソウル系それにジョニ・ミッチェルのBig Yellow Taxiなどのカバー曲が集められたアルバムでした。

 初めてで何も考えずに買って聴いて、なんでこんなことするのだろうと、否定的な意味ではないですよ、思って調べると、それは子ども向けのアルバムだと分かりました。 

 昨年12月に取り上げたジュエルの新譜も子ども向けアルバムでしたが、アメリカでは結構あるようですね。

 こうなったらシェリル・クロウも子ども向けアルバムを出してくれないかな・・・

 

 どうも今日は脱線ばかりですが、僕が初めて聴いたケヴ・モのCDがそれであったために、この人はソウルっぽいアプローチの人なのかなというイメージが僕の中に出来上がりました。

 ただしそのアルバムはそれはそれでとても気に入って車でよく聴くCDになりました。

 今回は普通の大人用のアルバムを初めて買って聴いたのですが、ソウルっぽいアプローチというのは実はこの人のスタンスでありスタイルであることが見えてきました。


 ブルーズといってもどろっとしていなくてとげとげしくもない、いわばハウリン・ウルフと正反対と僕は感じました。

 最初は、そんな変わった名前をつけるような人だからもっと「ど」がつくくらいの深いブルーズを聴かせる人であり、デルタブルーズを復興させようとしている人だと勝手に思っていたのですが、それはまったく違いました。

 それにしても勝手にイメージ作ってましたが(笑)。


 ソウルというのは、大づかみにいえば、ブルーズからR&Bになりそこから発展したものでしょう。

 ブルーズにあるメッセージ性が薄められて聴きやすくなったものという感じですが、ケヴ・モの音楽を聴くと、1970年代のソウルとしか言いようがない感覚に陥ります。


 ケヴ・モ自身は1951年生まれ、一応のレコードデビューは1980年ということですが、1970年代から音楽活動をしていて、ソウルの隆盛については実体験しているはず。

 

 しかしケヴ・モは、70年代のソウルを焼き直そうというのではなく、自分にとってのブルーズとは何か、自分が気持ちがいい音楽とは何かと試行錯誤してきた結果、ソウルの流れとは別の系統でソウルにたどり着いたのではないかと僕は想像しました。

 ツバメとアマツバメは形がよく似ていますが、でも生物学的にはまったく違うところから種分化したもので決して近い仲間ではない、でも見た目は似ている、それと同じことかなと考えました。

 今の時代に1970年代ソウルなのは、出発点が少し後にあったということなのでしょう。


 僕にとってのケヴ・モは、ブルーズとソウルをつなぐような役割の人になるのかな、そうだろうな。


 ただし心地よさだけにおぼれるのではない、芯がしっかりしたところが感じられるのは純然たるソウルとは少し違うところですね。

 しかしその芯がしっかりしたというのは逆にロックにつながる部分でもあるから、いずれにせよ僕にはとってもいい音楽には違いありません。


 アルバムの曲は2曲を除いてケヴ・モ自身が作曲していますが、だからシンガー・ソングライターということにもなりますね。


 その2曲のうち1曲がきわめて興味深い、イーグルスのOne Of These Nightsをカバーしています。

 この曲はイーグルス側からソウルに強烈に近寄った曲だから、なるほどと納得するとともにイーグルス大好き人間としてはうれしくなりました。

 でもオリジナルとは違ってまろやかであまりカクカクしていない感じの響きで、またひとつ秀逸なカバーを知りました。


 もう1曲のCrush On Youには僕が密かに応援し続けているインディア・アリーが参加。

 彼女の声自体が好きだけど、全体的にまろやかなケヴ・モの世界にはとてもよく合います。


 他に僕が知っているところでは、ヴィンス・ギル、マーカス・ミラー、デヴィッド・T・ウォーカーなどが参加。


 オリジナル曲では4曲目、表題曲でもあるThe Reflection (I See Myself In You)がいちばん気に入りました。

 なお、作曲者としてのクレジットはKevin Mooreと書かれています。

 しかしですね、僕がケヴ・モでいちばん好きになったのは、声です。


 僕は昔は基本的に音楽には人間性は関係ないと思っていました。

 音楽で表すような気持ちはどんな人間でも持ち合わせており、音楽はそこだけを抽出して聴かせて共感を得ることができるものだと思うから。

 でも、年を経ることに、やはり人間性により引かれるようになりました。

 とても気に入った曲があっても、それがどんな人が演奏しているかが気になるようになりました。


 ケヴ・モは、穏やかで人格者であろうことが声ににじみ出ています。

 ほっとします。

 曲以上に、その声に触れたいと心から思う人です。

 きっとそれは間違ってないのではという妙な確信めいたものを感じるのですが、そこまで人間性が声に表れている人も、珍しいというより稀かもしれない。


 新たに聴き始めた人でこれだけ声が好きになった人は、誰以来だろう、もしかしてノラ・ジョーンズ以来かもしれない、それくらいとにかくこの声でまろやかなソウル、敢えてブルーズとは言わないけど、そんな音楽を聴くだけで至福の時間を過ごせます。

 嫌なことがあるとすぐに聴きたくなる人かもしれません。

 幸か不幸か、このCDはまだ先週買ったばかりで、それから特に嫌なことはまだないのですが(笑)。

 ぜひ会って話をしてみたい人ですね。

 

 その前に過去のアルバムも揃えないと。 

 ひとまず2枚を注文してあるけど、1枚は海外から来るので今月中に聴けるかな。

 

 今回はの最初の記事というのもあって、人に対する印象程度のことしか話せなかったけど、これから聴いてまた記事に出来ればと思います。
 


 ところで、ケヴ・モはWikipediaには、Keb' Mo'、と記されていますが、最新作であるこのCDではアポストロフィなしで、KEB MO、と表記されています。

 そういえばJDサウザーも以前はJ. D. Southerと表記されていたのが、昨年の最新作ではドットなしのJD Southerとなっていましたが(正確にはもう一つ前のアルバムから)、今はそういう流れなのでしょうかね。

 でも、R.E.M.はドット「.」をなくさないでほしい(笑)。


 ケヴ・モは日本のウィキペディアにはまだページがないんですよ、ケブで見てもなかった。

 僕がこれから聴いて、ウィキに登録して、ページを作ろうかな(笑)。


2012年02月17日 guitarbird9091の投稿

SHAKE YOUR MONEY MAKER ザ・ブラック・クロウズ

テーマ:アーティスト B


自然と音楽の森-Feb17BlackCrowes1st


◎SHAKE YOUR MONEY MAKER

▼シェイク・ユア・マネー・メーカー

★The Black Crowes

☆ザ・ブラック・クロウズ

released in 1990

CD-0202 2012/2/17

 

 ブラック・クロウズの1枚目のアルバム。


 僕は、「グルーヴ感」」というものが、二十歳を過ぎるころまでは分かりませんでした。

 雑誌のインタビューなどでよく接した言葉ですが、最初は、単にノリがいいことだと思っていました。

 

 しかしいろいろ聴いてゆく中で、なんとなく分かってきました。

 僕が思うところをつたない言葉で表すとこんな感じ。

 「グイグイ引っ張られて体が自然と突き動かされる、タテノリとヨコノリが組み合わさった粘つくリズム感でありそれを聴くと爽快な気分になる音楽」

 ノリがタテノリ系のロックンロールが必ずしも「グルーヴ感」がいいわけではなく、大事なのは「粘つく」という部分、後に引く、クセになる、そこだと僕は思います。


 僕は、ブラック・クロウズが出てきた頃は大嫌いでした。

 どこがいいのか分からないのにやたら流行っていて不気味な存在でした。 

 MTVで見る彼らの姿もふてぶてしくて不気味であまり親しめない人たちだと感じたのです。


 しかしそれ以上に僕にとって問題だったのは、歌メロがいいと思える曲がなかったことでした。

 とはいいながらも、一方で流行もののアメリカンロックは看過できない性分なので一応買って聴きましたが、やっぱりダメなものはダメでした。


 でも、僕も音楽を聴き進める中で「グルーヴ感」というものが分かってきて、30歳を過ぎた頃から歌メロだけにはこだわらなくなったのもあって、そんな中でこのアルバムを久しぶりに聴くと、これがよかったのです。

 「グルーヴ感」、それは「感覚」だから、頭で考えて聴く音楽ではなかったのですね。

 特に車で聴くとそれがよく分かりました。


 ブラック・クロウズは、サザンロックとブリティッシュ・ブルーズ・ロックを足しで2で割ったような感覚の音。

 ヴォーカルのクリス・ロビンソンは無類のレコードコレクターで、15,000枚ものレコードを所有しているのだとか。

 それだけ集めるのだから当然のごとく音楽は多岐に渡り、ブルーズを中心として、カントリー、ソウル、R&B、ゴスペルそしてもちろんロックなど、幅広い音楽を貪欲に聴き、それがバンドの音にも反映されています。

 

 しかしだからといってルーツそのままではなく、どの曲を聴いても少なくとも2つの音楽の要素を感じ取ることができ、ルーツ音楽を上手く消化吸収し昇華している楽しさがありますね。

 

 彼らの音楽にはある種の古臭さも感じますが、でも、1990年代は音楽の趣味が聴き手も演じても多様化して何でもアリになったことと、彼らの感覚自体は新しいものなので受け入れられたのでしょうね。


 音楽のせいかふてぶてしさのせいか(笑)、妙な大物感があるバンドですね。

 クリス・ロビンソンも、90年代以降に出てきたヴォーカリストでは随一ともいえるロックシンガーだと僕は思います。



 1曲目Twice As Hard、最初から粘ついていて、スロウでブルージーな曲だけど速い曲と同じように引きずり込まれる曲、つかみは上々。


 2曲目Jealous Againはこのアルバムで僕がいちばん好きな曲。

 曲の形状が割合ストレイトなロックンロールであるがために、彼らの「グルーヴ感」はタテノリだけのものとは違うことが実感できます。

 中間部のツインギターだけをバックに歌うクリスが英雄的にカッコいい。

 ともすればギターとリズムが合っていなくて外れそうなすれすれのところがなんともスリリング。

 

 3曲目Sister Luckはソウルバラード風の曲で、ローリング・ストーンズっぽいといえるかも。


 4曲目Could I've Been So Blindは再びアップテンポのロックンロール。

 僕はクリス・ロビンソンは素晴らしいシンガーだと思うけど、歌メロを作るのがあまり上手くないのが欠点かなと思う。

 想像するにこのバンドは、ギターなりピアノなりで誰かが「曲」を作ってそれを作り上げるのではなく、ジャムの中からいい「グルーヴ感」が出てきたところでそれを曲に発展させるというスタイルなのではないかと。

 歌メロもだから流れの中からなんとなく浮かんできたフックを発展させたもので、歌メロとして作ったのではない、だから歌としては印象が弱くなって「グルーヴ感」の中に埋もれてしまう。

 それを踏まえてこの曲を聴くと、サビ、というかタイトルの言葉の部分は歌としては迫ってくるものが希薄に感じます。


 5曲目Seeing Thingsは3拍子の朗々たるR&Bバラードで、ゴスペルの雰囲気も漂う感動的な曲。

 当時はまだゴスペルは音楽が好きな人だけが知っているものだったけど、今は誰もがゴスペルを知っている、時代は変わったなと思いますね(笑)。


 6曲目Hard To Handleは僕が最初に好きになったクロウズの曲。

 それはずばり、唯一、歌メロに引かれたからで、それもそのはずというかこれはカバー曲。

 オーティス・レディングも持ち歌にしていたもので、カバーであることを僕は後で知ったのですが、彼ら自身も「欠点」を意識していたのかあるいはレコード会社の要請か、歌メロがいいカバー曲を入れたのかもしれません。

 それにしても完全に自分たちのものにしているし、間奏のギターの応酬も何もかもカッコいい。

 

 7曲目Thick N' Thin、ここにきてアップテンポの曲が続きますが、冒頭に車の衝突音のSEが入っていて、車で聴くとちょっと慌てます(悪いジョークだと思います・・・)


 8曲目She Talks To Anglelsはアルバムのクライマックスともいえるカントリーの影響が濃いブルージーなバラード。

 歌メロがよくないと書いてきていますが、これはそんなこともない、普通にとてもいい歌です。

 アコースティック・ギターのリフも歌っていて自然と口をついて出てくる素晴らしい曲。


 9曲目Struttin' Bluesは僕がよく聴く普通のロックっぽい曲でなんだかほっとする。


 10曲目Stare It Could、アルバムの最後は盛り上がる曲で、8曲目のバラードがともすれば重過ぎたところで軽く終わるという流れもいいですね。

 しかし逆に8曲目の後だから、この2曲は、フックはいいけれど歌メロは流れてないな、と感じます。

 まあ、雰囲気や流れは壊れていないので、アルバムとしてはこれで満足なんだけど。



 ジャケットはオールドブルーズやソウルの香りが漂うもので、いい意味で古くさくてとってもいいですね。


 アルバムタイトルはエルモア・ジェイムスの曲からとられたのでしょうけど、ジェームス・ブラウンのSex Machineの中間部でもJBが"Shake your money maker"と歌うというか繰り返しつぶやくので、ブルーズとファンクへの二重のオマージュということなのでしょう。


 グループ名のBlack Crowesだけど、流行っていた頃に友だちが「カラスって黒いのが当たり前じゃないのか」と突っ込んでいました。

 そうですね、体に白い部分があるコクマルガラスのような種類もいるけど、基本はやっぱりカラスは黒いものでしょうね。

 でも彼らは、音楽においてはとっても大きな意味を持つ"Black"という言葉を入れて黒いことを強調したかったのだと思います。


 なんだかんだと文句をつけてきましたが、今はほんとうに大好きな1枚で、時々無性に聴きたくなる、それがなぜか昨夜でした。

 ブルージーで適度にハードなロックというのは、やっぱり僕の基本なんだなあ。



 そうそう思い出した、10年くらい前に家の近くに白いカラスがいたんです。

 ハシブトガラスの突然変異体で、自然界では白い個体は目立つのですぐにやられていなくなってしまうと言われていますが、その個体は敵が少ないカラスだからか、3年くらいに渡って見ることができました。

 一時期はよく現れる場所がだいたい分かっていたんだけど、今この記事を書いていて突然、白いカラスの写真を撮っていなかったことを激しく後悔しました(笑)。

2012年02月14日 guitarbird9091の投稿

MACHINE HEAD ディープ・パープル

テーマ:アーティスト D


自然と音楽の森-Feb14DeepPurpleMH


◎MACHINE HEAD

▼マシン・ヘッド

☆Deep Purple

★ディープ・パープル

released in 1972

CD-0201 2012/2/14

 5日ぶりの記事となりました。


 そんな今回はディープ・パープルの誰もが認める大名盤を取り上げますが、別に特に意図も何もなく、ただただ昨日なんとなく目に留まって聴いただけです。


 ディープ・パープルは、一応は好きなバンドで時々とたまにの間くらいの頻度で聴きますが、でも「思い入れ」とまで呼べるものはないかな、僕にはそんな存在です。

 パープルのこのアルバムであれば大好きで思い入れがたっぷりの人がたくさん記事を上げておられることでしょうね。 

 そんな中で僕のような人間が話すのはどうかなと自分でも思う反面、時にはそういう見方の記事があってもいいのかなとも思いました。


 本題の前に、僕の中での話ですが、「思い入れ」と「大好き」が微妙に違うということが、BLOGを始めてからここ数年で分かりました。

 その違いというか分かれ目となるのは、「冷静でいられるかどうか」ではないかと。

 思い入れがあるアーティストであれば僕はもう冷静ではいられません(笑)。

 

 思い入れが強ければ強いほど冷静さを失い、例えばポール・マッカートニーの新譜が先週出ましたが、僕はもう発売予定日の2日前くらから、いつどこで買おうかにはじまり、買いに行くのにどのルートを通って行くかなんてことまで考えていました。

 ただ、もう大人になったので、まだ2日前からで済んだんですよ、若い頃だとポールくらいなら1週間前からそうでした(笑)。


 思い入れというのは、そのアーティストのCDが出る情報に接するとそわそわしたり、特別盤も出るとなると買わずにいられなくなったり、持っているのに同じ中古CDを見つけると欲しくなったり、街角やラジオで不意に曲を聴いたりポスターを見たりするとうるうるしたりで、そのアーティストに触れると気持ちが揺れるということでしょう。

 

 ディープ・パープルはその点、常に冷静でいられます。

 でも、このアルバムは、僕が最初に買ったCD50枚に入るくらいに早くから聴いていて、もう20年以上の付き合い。

 大学1年の春休みの2月に、札幌のタワーレコードの初代の店舗で買いましたが、その時はとても期待していて、楽しみでわくわく、帰りのバスの中で待ち切れずに箱を開けて出して眺め、さらには、箱に書いてあった短い解説文を読んでいたのをなぜか今でもはっきりと覚えています。

 当時のタワレコでは、輸入盤のCDは、LPの高さで幅が1/3くらいの箱に入れて売られていましたね、懐かしい。

 これを買ったきっかけのひとつは、CDが出たからでしょうね、レコード時代にはディープ・パープルを買って聴こうとまでは思っていなかったから。
 本格的にCDの時代になった1980年代後半は、旧譜のCDは、商品としても、新譜と同じ魅力を放っていましたが、今考えると、それはそれでいい時代だったかもしれません。

 パープルは名前だけは小学生の頃から知っていたし、リッチー・ブラックモアが大好きな人は高校時代に同じクラスにいたりで、いつか聴きたいという気持ちは低レベルで続いていましたが、CDを見てその気持ちが一気に上りつめたのでしょう。

 ディープ・パープルのアルバムを聴いたのはこれが初めてで、曲も1曲しか知りませんでしたが、聴いてみると、「意外とハードじゃないんだ」と感じました。
 音の響きがまろやかで、ギターの音もザクザクと粗いよりはむしろ整った、ようするに「きれいな音」という感じがしたのを覚えています。

 ギターが主のバンドかと思っていたのですが、サウンド的にはキーボードがむしろ主導権を握っているのがそう感じさせたのかもしれない。

 またそれが日本でも受けたのかもしれない、とも思う。

 もうひとつ思ったのは、ディープ・パープルといえば当時は既に「懐古趣味」というか、70年代が懐かしい、その象徴みたいな存在でしたが、でも実際に音を聴くと、もっとノスタルジックな響きの音楽を想像していたのが、それもちょっと違いました。
 音楽自体がノスタルジックであることと、昔を懐かしむことは違うことも僕は学んだ気がします。
 まあ、それは当り前のことなのかもしれないですが。

 ともあれ僕はこのアルバムがとっても気に入り、その春休みは、ディープ・パープルのCDを他に2枚買って聴きまくっていました。

 

 ただし、僕の中でのディープ・パープル熱はその頃が頂点で、もっと突き詰めようと思うまでには至らず、上述のように「時々聴きたくなるバンド」として安定してしまいました。

 

 音楽ではよく「A派」対「B派」という話がされますね。

 中でもよくあるのが「ビートルズ派」対「ローリング・ストーンズ派」と「ディープ・パープル派」対「レッド・ツェッペリン派」の2つではないかと。

 

 僕は、特に初めて会った人などにくどくどと説明するのが面倒な時などは、前者では「ビートルズ派」、後者では「レッド・ツェッペリン派」と言うことにしています。

 パープルが僕の中でそこで安定してのは、おそらくそこにあるのでしょうね。

 

 ただし異論を唱えると、「A派」「B派」という話の文脈では、「A派の人はBの音楽が嫌い」ということになりがちだと思いますが、僕はそれは断じて違います。

 ビートルズは自分の基本だけど、ストーンズだって大好きでほとんど思い入れに近いものがあり、CDは80年代までのアルバムなら今でもよく聴くし、コンサートだって2回行ったことがあります
 レッド・ツェッペリンは僕にとってはビートルズの次に大切なバンドだけど、パープルだって普通に聴きます、嫌いではありません。

 例えば、ツェッペリンのあのアルバムよりはパープルのこのアルバムのほうが好き、というのもありますし。


 などと若い頃は考えて人と話す時には意地になって主張していたのですが、年をとるにつれて自分のすべてを人に見せなくてもいいんだと分かり、今は「ビートルズ派」「レッド・ツェッペリン派」を主張しています(笑)。

 ただ、「派」ではないからといって嫌いではないということだけは分かっていただきたいのです。


 

 1曲目:Highway Star、名曲中の名曲ですが、ごめんなさい、実は僕はこの曲が大好きというわけではないのです。

 バンドをやる人にはバイブルみたいな曲のようですが、バンドをやらない人間だからでしょうね。

 まあこんなこと言えてしまう時点でやっぱり「ツェッペリン派」なのでしょうけど(笑)。

 でも真面目な話、大好きなアーティストの有名な曲でもそれがあまり好きではないという曲は、僕の場合はだいたいどのアーティストにもありますが、それは一般的なことなのかな、どうだろう。

 ちなみにビートルズのそれは・・・言えません(笑)。


 2曲目Maybe I'm A Leoはイントロのギターリフが「字余り」のような感じで面白くて最初から心を掴まれました。

 説明が遅れましたが、Highway Starはこのアルバムを買う前からロックの歴史を振り返るテレビ番組などで見て聴いていたので唯一知っていた曲でしたが、アルバム1曲目がその曲で、そのイメージでずっと引っ張るのかと予想していたところそうではなく少し緩い曲になったのが最初は意外に感じました。

 3曲目Pictures Of Home、ドラマティックなギターリフに、またまた一発で心を掴まれました。
 虚しさの中で疾駆するという感じがすっかりお気に入りになり、最初に聴いた時、1曲目はともかく2曲目、3曲目と聴くに従って「予想外に」よくなっていったのを思い出します。


 4曲目Never Before、ダイナミックかつ切れがあるギターリフが好きで、リフにアルペジオを混ぜるのもカッコいい。


 5曲目がかのSmoke On The Waterですね、これはこのCDで初めて聴きましたが、かけたところ耳にしたことがある曲ではありました。

 こちらは大好きですが、あまりにもあまりにもな名曲なので、曲について僕が言うことはありません。
 と思ったけど、やっぱり大好きなので書きます(笑)。
 個人的には、フェイドアウトのラストで音が消え入る寸前に、イアン・ペイスのドラムスが乱打され、そのドラムスの音だけ大きく残るのがなぜか昔から妙に気に入っています。
 ペイスはまた、間奏の部分でシャッフルっぽくビートが走りだすのもいい。

 何を隠そう、僕はイアン・ペイスと誕生日が同じなのです。

 それを知ってからイアン・ペイスが大好きになり、さらにはポール・マッカートニーのRUN DEVIL RUNに参加したことでペイスには思い入れのようなものができました。

 僕はドラムスは演奏できないしだから聞きどころがよく分からないんだけど、彼のプレイは上手いんでしょうかね、そうですよねきっと。

 この曲はまた歌メロが「ド」の音で終わってなくて、だからいつまで経っても曲が終わらない、ループ状態に陥るのが面白いところです。
 そしてもひとつ、歌詞にフランク・ザッパ&ザ・マザーズやローリング・ストーンズのMOBILE音楽祭で有名なモントルーが出てきたりと、ロックの横のつながりを強く意識するようになった曲でもあります。
 エレクトリックギターを弾く人でこれ弾いたことがない人っているの!? という感じがしますが、もちろん僕も弾きましたよ(笑)。 

 なんて、結局は長く話してしまいました(笑)。


 6曲目Lazy、僕は歌メロ中心に聴いていた人間でしたが、このインスト中心の曲を、意外にも最初から気に入ったのでした。

 なぜかは不明だけど、クオリティが高くて飽きさせなかったのは確かでしょう。
 もしくは、大人になって歌メロ以外にも目や耳が行くようになったか。


 7曲目Space Truckin' 、この曲でノックアウトされました!!

 僕がいちばん好きなパープルの曲はこれですね。
 アルバムを聴き進めきて、アルバム自体が「予想外」に良かったところ、最後の最後にこんなカッコいい曲が待ってたなんて!
 歌メロがよく、展開も素晴らしい上に、全体にかげりがある。
 確かにロックンロールなんだけど、僕がそれまで耳にしたことがない「新しい」タイプのロックンロールに度肝を抜かれました。
 なんといっても、ギターリフがとにかくカッコいい!
 最初に聴いた次の瞬間にはもうギターを手に取っていました(笑)。
 3コーラス目に突然出てくる、リッチーのギターを叩くような激しいバッキングギターがまた最高にカッコいい。
 そのギターの音は左チャンネルから出てきますが、その時ふ思ってアルバムをヘッドフォンで聴き直すと、このアルバムは全編、右と左に違う音のギターが入っていて(多分ギターも違うと思う)、どの曲のソロはどっち、このバッキングはこっちとそれこそ縦横無尽に動き回るのに気づいた時には、もうそれこそほんとに鳥肌もの、脱帽しました。
 この曲は今でも一度聴くと繰り返し聴いてしまいますね。
 はい、左様、この曲に関しては僕も冷静ではいられないようですね(笑)。


 繰り返し、このアルバムは、ディープ・パープルは、もっと粗い(よい意味で)音楽だというイメージがあったのですが、このアルバムを聴き通すと、力任せではなくむしろきめ細かくて、なんだか洒落た感じがしたのが意外でした。

 でも、だから日本で受けたのかもしれないですね、ハードだけどしゃれている。

 概ね、粗いイメージの音楽は日本ではあまり高い人気にはならないですからね(笑)。


 しかしこのアルバムはほんとうにお気に入りで、昨夜一度だけ聴いて記事を書いて上げるつもりが、もう今日だけで3回目を聴いていますよ。

 たまらずにギターも持ち出し、今はそれを抱えながら記事を書き終わったところです(笑)。


 

2012年02月09日 guitarbird9091の投稿

A DIFFERENT KIND OF TRUTH ヴァン・ヘイレン

テーマ:新譜を聴き書き


自然と音楽の森-Feb09VanHalen2012


◎A DIFFERENT KIND OF TRUTH

▼ディファレント・カインド・オブ・トゥルース

☆Van Halen

★ヴァン・ヘイレン

released in 2012

CD-0200 2012/2/9

Van Halen-02


 ヴァン・ヘイレンの新譜が出ました。

 ポール・マッカートニーと同じ日本発売が昨日2月8日、やはりポールと同じく他からユニヴァーサルに移ってのリリースです。

 今週はユニヴァーサルの洋楽担当は忙しいでしょうね、でもうほうほかな(笑)。


 今回の売りはなんといっても「ダイアモンド・デイヴ」ことデヴィッド・リー・ロスがおよそ27年振りに復帰したことでしょうね。

 ヴァン・ヘイレンとしてのアルバムも14年振りに。


 新譜なのでもったいぶらずに結論から先に言うと、かなりいい、ヴァン・ヘイレンが好きであれば最高にいいです、期待値以上でした。

 

 僕が洋楽を聴き始めた頃はまだデイヴがバリバリに活躍していてこれから大ヒットを出すという頃でしたが、僕はかつてはVHはどちらかというと苦手でした。
 理由は簡単で、歌メロで聴かせる音楽じゃないから。

 でもヴォーカルがデイヴからサミー・ヘイガーに代わり、歌メロ路線に転換してから僕は逆に大好きになりました。

 ヴォーカリストが変わったバンドはよく「A派」「B派」という話をしますが、僕はVHに関してはサミー・ヘイガー派でした。

  

 デイヴ時代のアルバムは1stと5thと6th以外の3枚はリマスター盤が出た時に初めて聴いたのですが、その頃はもう30歳を過ぎていて以前よりは歌メロだけにこだわらなくなっていたので、そこで初めてデイヴ時代もいいと思うようになりました。

 今は好きです、普通に、かけているとい楽しいし気持ちがいいし、やっぱりこれだけの音楽を作ってきたのはすごい人たちだと思う。

 それはエドワード・ヴァン・ヘイレンのギターのみならず、音楽として総合的に見て。

  

 このアルバムは初期の勢いがあって、バカみたいに陽気で楽しく、かつ、圧倒的にすごい音楽がほぼ100%戻ってきていると感じました。

 期待値以上と感じたのはそこで、そういう音楽をやるんだろうなという予想はあったのですが、正直、ここまで戻り切っているのは予想を超えていました。

 知らない人に他のアルバムに混ぜて聴かせると、これは1980年頃に録音したと言って騙せると思います。

 なんて悪い冗談ですが、それくらい、その部分に対しては素直に敬意を表します。


 でもまあ、くどいようだけど、だから歌メロとして頭に残る曲はないといえばないんですけどね。

 逆にいえば、言葉の語呂の応酬で聴かせてしまうデヴィッド・リー・ロスという人はやはり稀代のヴォーカリストなんだなと思いました。
 CDを再生していきなり「たぁ・とぅ たぁ・とぅ」ですからね、もうそこで「おおうどうしたんだどうしたんだ」と心が入ってゆき、全曲そんな感じです。

 歌メロとしては残らないけど、逆にサビの言葉の応酬は嫌でも耳について離れないので、強烈な印象が残る音楽ではあります。


 今回感心したのは、というか今更ながら気づいたのは、というよりも漠然と思ってはいたことなのですが、VHはよく聴くとアメリカのエンターティメント的な音楽のいい要素を新しいハードな音で再現しているバンドであることでした。

 エンターティメントに徹しきっているのもよくて、音楽には特に意味なんかない、楽しければいいんだと。

 11曲目のStay Frostyはフォーク・ブルーズ風に始まってハードロックに展開する、僕が今回いちばん気に入った曲ですが、それが特にそう感じさせる部分です。


 ひとつ謎が。

 ベーシストのマイケル・アンソニーが脱退し、代わりのベーシストがエドワード・ヴァン・ヘイレンの息子のウォルフガング・ヴァン・ヘイレンに代わったのですが、マイケルのあの切れそうなくらいに異様な高音のコーラス風のコーラスが入っていることで、誰が歌っているんだろう。

 まさかそれだけマイケルを呼んだとか、ないだろうなあ。

 あのコーラスもバカみたいに陽気なVHの音楽を特徴づけるものであるだけに、新作でもそこは外せなかったのでしょうね。

 実際にそのコーラスがなければ僕もここまで戻り切ったとは感じなかったと思います。

 なお、マイケルはサミー・ヘイガー側について今はチキンフットで活躍していますね。

 

 なんてくどくどと書きましたが、ほんとうにいいですよ。

 少なくとも昔のヴァン・ヘイレンが好きで妙な色眼鏡で見ない人であれば文句なしにいいと思うでしょう。

 昔のヴァン・ヘイレンは後から好きになった僕のような人減でもすごくいいと思ったのだから。


 昔の人が昔のままやってようやく素直に(普通に、正当に)受け入れられる世の中になったのは、よかったのかもしれませんね。

 逆にいえば、14年前にデイヴが戻らなくてもよかったのかもしれない。

 「違ったかたちの真実」というのも、四半世紀に及ぶ紆余曲折をうまく表したタイトルだと思います。

 そして機関車のジャケット、まさに機関車のような重低音で攻めてくる、いいアートワークですね。


 最初に聴いて、あまりにも昔のままでほんとうに笑ってしまったくらいのアルバムです。

2012年02月07日 guitarbird9091の投稿

KISSES ON THE BOTTOM ポール・マッカートニー

テーマ:新譜を聴き書き


自然と音楽の森-Feb07PaulMcCartney1


◎KISSES ON THE BOTTOM

▼キス・オン・ザ・ボトム

☆Paul McCartney

★ポール・マッカートニー

released in 2012

CD-0199 2012/2/7

Paul McCartney-05


 ポール・マッカートニーの新譜が出ました!

 

 より正確にいえばこの記事が上がる時点では国内盤はまだ出ていなくて、2月8日が正式な発売日です。
まあでも、普通は前日に売ってますよね。

 

 ポール・マッカートニーは今年で70歳、そしてビートルズがレコードデビューして50年。
 このアルバムは、そんな音楽人生を振り返るかのように、2曲の自作を除き、いわゆるアメリカン・スタンダードを歌ったカバー曲集となっています。


 音楽はやっぱり、年相応というものがあるのかなって。
 日本では年をとると演歌を好きになると昔から言われるけど、そうした考えは国は関係なく人としてむしろ当たり前なのかな、と。
 もちろん若い頃からジャズやクラシックを聴く人もたくさんいるけど、僕自身も20代の頃よりはハード・ロック/ヘヴィ・メタル系を聴く頻度がうんと減り、一方でソウルが増えてきたことだし、傾向としてはおそらく逆の例の人は珍しいのではないかな。
 (若い頃からヘヴィメタルが嫌いな人は多そうだけど・・・)
 ポールだって人間だからやはり、古い時代の落ち着いた音楽に戻るというか進みたかったのかもしれません。


 ポールはしかし、曲単体ではほとんど初めからアメリカン・スタンダード的なものをやってきていました。
 ビートルズの1stでA Taste Of Honeyを歌っていますが、ミュージカルの曲であるそのような曲をロックの人間が取り上げたというのは当時は驚きと興味を持って迎えられたのだとか。
 2ndのTil There Was Youはもはやこれぞポールという味わいだし、64歳や銀のハンマーなどディキシーランド・スタイルの曲が得意、My Little Princessのように本格的にアメリカン・スタンダード風の曲だって既に作ったことがあります。
 だから、ポールのアメリカン・スタンダードというのは、意外ではまったくなくって、むしろ漸くという感じがしますね。


 ただし、カバー曲集を出したことで、不安があります。
 曲を作れなくなったのではないか、あるいは意欲がなくなったのでは。
 ボブ・ディランが60歳を超えて才能が枯れたと自ら告白したように、長くやって来ている人であれば大なり小なりそれは感じるのかな、といいつつ凡人の僕には彼ら天才の頭の中は分からないけど、一般論としてはそういうことはあるかもしれない。


 でも僕はこのアルバムを聴いて、もっと前向きにとらえました。
 ポールはこの先、こういうスタイルのオリジナルをやりたいのではないか、今回は肩慣らし的に一度古い曲をやってみて感触をつかみ、次のアルバムでオリジナルで勝負しよう、というのであればいいなあ。
 なんて根拠も何もないただの願望だけど、そう思いました。


 もうひとつ、ファンの人には申し訳ないけど、といいつつ僕こそがファンだから現実から目をそむけずに受け入れるとして言えば、ポールも60歳を過ぎてからとみに、力強く歌おうとしても声の衰えが隠せず、ちょっと悲しい思いをしていました。
 でも、このアルバムのようにあまり力を入れずにさらっと歌うのもなかなかいいし、この歌い方なら声の衰えは気にならないし、もちろんまだまだ魅力的な声だなと思ってほっとしました。
 というか逆に、だからアメリカン・スタンダードなのかもしれない、とも。

 なんせ100人の歌手の11位の人ですからね(笑)、歌で伝えることがそもそも好きな人なのだと納得できるし、こちらとしても身を委ねて聴くことができます。


 ダイアナ・クラールのバンドを迎えているのは、90年代後半からジャズ的な要素の強い音楽が増えてきて
すっかり定着したという時流に乗りたいのでしょうかね。
 ポールは昔から周りで行われていることをひとまずは自分もやってみないと気が済まない人だったので(笑)、その点では気持ちはまだまだ若くてほっとするものがあります。
 またそれがダイアナ・クラールであるのは、彼女の夫君であるエルヴィス・コステロとまだつながりがあるのかなと、それもうれしくなる部分ですね。
 ただし僕はいまだにコステロは苦手ですが・・・(笑)・・・
 それはともかく、ダイアナ・クラールのピアノがいいですね。
 僕は彼女は聴いたことがないのでこれが初めてだけど、ダイアナ・クラールも聴いてみたいと思いました。


 音楽的なことをみると、アメリカン・スタンダードについていまさら斬新な解釈の演奏というのもないと思う、イメージ通り。
 それがその人に合っているかどうかという問題だけで、ポールの場合は、やっぱりこういうことも自然にできるんだと何かほっとする、そんな全体像ですね。

 録音はニューヨークとロサンゼルスで行われていますが、曲によってはストリングスのアレンジが施されていて、そのストリングスはロンドン交響楽団が担当しています。
 もちろんというかストリングスのみ英国で録音されているわけですが、かのアビィ・ロード・スタジオで録音されていると明記されているのはやっぱり無条件でうれしくなりますね。


 僕は今日、国内盤SHM-CD盤と海外盤限定盤を買いましたが、後者には2曲のボーナストラックが収録されて16曲入りです。
 ひとまず通常の14曲で話すと、僕が知っていた曲はたった1曲しかありませんでした。
 そうですね、アメリカン・スタンダードはロッドなどで時々聴くけど、親しんできたというわけではないので当たり前でしょうけど、それにしても超有名な曲は敢えて外している感じがします。
 

 このアルバムのタイトルを最初に聞いて僕は、なんてタイトルをつけたんだろうと・・・
 ポールは時々下ネタ系のことを平気でいいますね。
 このタイトルはアルバム冒頭1曲目のI'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letterの歌詞から取られていることが聴いてみて分かったのですが、国内盤のライナーでは、そこが以下のように訳されています。
 「下の方にはキッスを」
 あまり直接的に書かないものですからね、日本人は。
 「お尻」ですよね、多分、足の裏ではなく・・・

 いや、心の底という意味でしょうね(笑)。
 それはともかく、僕くらいの世代なら、手紙を書くというタイトルは想像よりは経験で思うことが多いのだろうけど、今の若い人にはもはやあまり実感がないのかな、どうだろう。


 3曲目It's Only A Paper Moonはその唯一僕が知っていた曲。

 僕にとって最初のアメリカン・スタンダードを歌ったアルバムがナタリー・コールのUNFORGETTABLEでしたが、
その中でもこの曲は特に好きでしたね。

 この曲はそれ以前から知っていて、ナタリー・コールのそれで初めてその曲のCDを買って聴けたのがうれしかったのでした。
 余談ですがUNFORGETTABLEではポールがカバーしていたDon't Get Around Much Any Moreが入っていたのもうれしくて、そうか久しぶりにナタリー・コールも聴いてみたくなりました。


 8曲目My Valentineは2曲のオリジナルの1曲ですが、エリック・クラプトンがギターで参加しています。
 そのせいかイントロのギターでLaylaを彷彿とさせる旋律が入って、これは偶然かな、いやきっと違う、ポールの発案かな、エリックかな、とにかく昔からのファンには思わず笑みが漏れてしまう。
 AメロがメランコリックでBメロで少し明るくなるこの曲は、どう聴いてもアメリカン・スタンダードの世界という曲。
 エリックのギターはやっぱりいいですね。
 昔はポールとエリックは仲が良くなかったのかなと思っていたけど、ジョージ・ハリスンの追悼コンサートで一緒に演奏してから共演するようになったのはうれしいし、ジョージ絡みでいえば感慨深いものがありますね。


 エリック・クラプトンはもう1曲、12曲目のGet Around Another Foolにもギターで参加しています。
 こちらはエレクトリック・ギターで、ブックレットを見る前からギターの音でエリックだと一発で分かりました。
 この曲で面白いのは、歌い出しのポールの声がエリックに似ていて、それもポールが茶目っ気を出してわざとそうしたのかなって。

 いや、歌い出しだけではなく全体的にエリックの声に似ているかな。
 この曲名は、エリックと一緒にこれからこういう音楽をやって楽しんでいこうという意思表明、というのはうがち過ぎかな(笑)、
 でもポールとエリックがやるにはいい曲だと思いました。


 ポールは今回、ほとんどヴォーカルだけに専念していますが、エリックとの12曲目と次の13曲目The Inch Wormの2曲のみアコースティック・ギターも弾いています。
 12でエリックにミュージシャン魂を刺激されたのかな。
 この曲はミミズの歌でしょうかね、曲はそんな感じはしないけど、ミミズを研究していたチャールズ・ダーウィンを思い出しました。

 子どものコーラスが入っているのがいいアクセント。


 面白いのは11曲目Bye Bye Blackbird。
 先ほど知っていたのは1曲と書いたけど、これも曲は知っていました。
 ジョー・コッカーが1stで歌っていますが、でもジョーのそれとはあまりにも違うので気づきませんでした。
 もちろんビートルズ時代の自身の曲Blackbirdを想起させ、ポールの茶目っ気もかなりのものでそれは幾つになっても変わらない、そこが思わずほほえんでほっとする部分ですね。


 もう1曲、知らない曲だけど興味深いと思ったのは6曲目We Three (My Echo, My Shadow And Me)。
 歌詞の中に"moonlight"を繰り返す部分があるんだけど、それはビートルズとしては未発表曲だったけどBBCで世の中に出た曲でポールが作ったI'll Be On My Wayを想起させられ、歌詞の作り方などをポールは古い曲から学んだんだろうなって。


 知らなかった中では9曲目Alwaysは、かのWhite Christmasを書いたアーヴィン・バーリンの作曲で、もっといい曲をたくさん書いた人なのでしょうね。


 ポール自作のもう1曲は本編最後のOnly Our Hearts。
 こちらはスティーヴィー・ワンダーがハーモニカで客演。
 もちろんこれも一発で分かりましたが、自作曲に豪華なゲストをわざわざ迎えるのもポールらしいはったりがあっていいなあ。
 あ、もちろんほめてますからね。
 スティーヴィー・ワンダーのハーモニカは音色が艶やかで、人間性を深く感じる深い響きが特徴ですね。

 曲も最後らしくまたポールらしくじわっと盛り上がって暖かく家庭的な雰囲気でアルバムが終わります。


 輸入盤限定盤のボーナストラックにも触れますが、僕は実は、それこそがめあてだったので。

 15曲目Baby's Requestはポールのペンになる曲で、ウィングス時代のBACK TO THE EGGの最後の曲として収録されていた曲で、セルフカバーということになります。
 僕はこの曲がずっと大好きでもっと聴かれてほしかったのでこの曲を再演したのはもうほんとうにうれしい。
 だけどそれがボーナストラックというのがちょっと残念だな。
 ポールならスタンダードの中にねじ込むくらいはしそうだけど、でもやっぱりそこは最初ということで遠慮したのでしょうね。
 なにもそこで遠慮しなくても、と僕は思うのですが(笑)。
 それはともかくノスタルジックで家庭的なこの曲は、オリジナルより少し速いテンポで演奏されていますが、
おおよそオリジナルのイメージ通りなのは、ポールの作曲家としての自信のほどを感じます。
 ただし最後はジャズ的なパッセージで終わっていますが。


 16曲目My One And Only Loveを見てやっぱりポールらしいと。
 だって、最初と最後の単語だけをみるとMy Loveですからね、いたずら心と自信はいつまでも忘れない。
 この曲を選んだのは再婚したことと関係あるのかな、今はそういう気持ち、これからもそうであってほしい、ファンとしても。



 正直言えば、僕でも知っているような超有名な曲があと2曲くらいあるといいなというのが買って何度か聴いて思ったことです。
 ただ、ポールとしては、そんな身勝手なファンなぞどうでもよくて音楽が好きなすべての人に、もっといい音楽、自分が好きな音楽を知ってもらいたいという思いを込めて作ったのでしょうね。
 僕もそこに気づいて反省しているところです。


 僕の親戚が寿司屋さんをやっていて時々食べに行きますが、そこは有線でアメリカン・スタンダードやそれっぽい曲を流していて、だからポールのこれを聴くとなんだかおいしそうと思いました(笑)。
 もちろん、ゆっくりと音楽と向き合って聴き込むのもいいんだけど、空気のようにそこに流れていると気持ちいい、そんな音楽でもあります。
 ただ、これもまたただ、ですが、ポールはそもそもはもっと真剣に音楽を聴いてもらいたいという思いを持って、
ビートルズの数々の傑作をものにしてきた人だから、そんなポールがこうした音楽をやるようになったのは、つくづく、音楽と年齢の関係を感じざるを得ないですね。

 まあでも、無理して若くする必要もないし、逆にいえば、これからはむしろ若い人がこういう音楽に夢中になるかもしれない。
 あ、そうか、ポールはそれをもくろんでいるのかな(笑)。


 ともあれ、ポールが新作を届けてくれたのはうれしいですね。

 暫く聴くことができる、かけることができる、そんなCDです。

 音楽はタテにも横にもつながって広がっていく、そんなことも聴きながら思いました。


 
自然と音楽の森-Feb07PaulMcCartneyDeluxe

2012年02月05日 guitarbird9091の投稿

PEARL ジャニス・ジョプリン

テーマ:アーティスト J

自然と音楽の森-Feb05JanisJoplinPearl

◎PEARL

▼パール

☆Janis Joplin

★ジャニス・ジョプリン

released in 1971

CD-0198 2012/2/5


 ジャニス・ジョプリンのスタジオアルバムとして通しでは4枚目、最後のアルバム。


 1980年代、僕の世代では、ロックの伝説化が始まっていました。

 ロックがただの一時的な流行を超えて存在し始めた頃でしたが、1970年から1971年にかけて相次いで亡くなった「3人のJ」、ジャニス・ジョプリン、ジミ・ヘンドリックス、ジム・モリソンは、その中でもとりわけ光り輝く神話といえるほどの人たちでした。
 当時はそろそろロックが過去を振り返る頃になっていて、ノスタルジーとともに伝説化が進行していた、今にしてそう思います。
 そんな伝説化が進行する状況の中で洋楽好きの僕は育ちました。
 

 ジャニス・ジョプリンの遺作であるこのアルバムはだから、僕には、初めから伝説として存在していました。 
 僕はしかし、伝説化していた人やアルバムを聴いてもし良くないと感じてもそう言ってはいけないのかなと、構えていた部分がありました。

 でもこれ、僕が買ったCD最初の50枚に入るくらい早くに買ったのですが、聴くと素直に素晴らしいと感じました。

 当たり前のことで、素晴らしいから伝説になったのであって、伝説は決して作り上げられたものでもないということでしょう。
 その後に聴いた70年代の名盤はおしなべて素直に気に入ったものばかりでした。
 伝説だからといって押しつけられるものではなく、あくまでも自分の耳で聴いて感じればそれでいいのだと、ロックの伝説に対して僕は以降は構えずに楽しく聴けるようになりました。

 僕がこれを聴いて驚いたのは、ジャニス・ジョプリンという伝説のヴォーカリストが、意外にも、とっても親しみやすい人だったことです。
 無防備なほどに感情を露わにして歌う姿をテレビで見ていた僕は、彼女を恐い人なのかなと勝手に思っていたのですが、いざ聴くと、ユーモアもあって人間味あふれ、他のアーティストよりもむしろ身近に感じました。
 彼女にはかわいらしい面も多々感じられて、子どもの心を持ち続けていた人なのだろうなと。
 でもやっぱりヴォーカルは凄いですね、上手いというより凄い。

 唯一無二という言葉はまさに彼女のためにあるのでしょう。

 これがよかったのはもひとつ、ブルーズを基調としたロックであり、最初に予想していたよりはずっとハードな音だったことで、この系の音は僕のデフォルトなのかもしれません。
 

 さらにはこれ、演奏がとにかく上手いと思いました。
 このアルバムは当時新たに結成されたバンドフル・ティルト・ブギーが演奏していますが、音がしっかりと出ていて、節目節目をびしっと決めて曲が進み、こういうのを「タイトな演奏」というのだろうなと思いました。
 ビートルズやローリング・ストーンズが下手とはいわないけれど、この演奏は、僕がそれまで経験したことがないものだと感じました。
 ギターのジョン・ティルはセミアコ系のギターを使っていて、ブックレットにもギブソンのセミアコを持った写真がありますが、厚みよりは広がり系の太いギターの音も当時の僕には新鮮でした。

 このアルバムの録音中にジャニスは命を落としてしまったため、一部の曲は必ずしも望んだ姿ではないようですが、それでも当時の意欲とバンドのまとまり、時代の息吹が伝わってきます。
 そして今や、時代を超えたアルバムの1枚となりました。

 1曲目Move Over、ジャニス自身のペンによるパワフルな彼女の代名詞的1曲。
 曲自体はひねりがなくストレートなだけに募る思いは最高潮にまっすぐに伝わってきます。

 ヴォーカルラインをなぞるギターもカッコいい。

 時々鼻歌で歌うのですが、もちろん叫ぶ部分はそれなりに(笑)、この曲は「歌詞と歌い手の性の同一問題」で悩みますね。

 だって、"You know that I need a man"と、男性である僕が歌うと意味が違ってくる恐れがあるじゃないですか(笑)。
 でも、鼻歌で歌う時に"man"を"woman"に変えたところ、それもなんだか妙にリアルでこっ恥ずかしいんです。

 まあ、鼻歌は誰に向けて歌うものでもないのだから、僕はオリジナル通りに"man"で歌っています。

 "woman"にすると音節がひとつ増えるのは、意味以上に音楽的に違和感があるし。
 

 2曲目Cry Baby、「ジャッジャッジャッ」と音を切る印象的なイントロの音が止まり、ジャニスが声を絞り出して叫ぶ、この切り替えが絶妙で、この音を最初に聴いただけでこのアルバムが名盤だと分かりました。
 ゆったりとしたワルツにジャニスが吠えまくります。
 ところで、「クライベイビー」というギターのエフェクターでワウペダルの一種がありますが、僕がそれを知ったのはこの曲より後だったので、てっきり、その名前はこの曲のイメージからつけられたのだと思い込んでいました。
 それくらいジャニスのこの声はイメージぴったり、「ナチュラル・クライベイビー・ヴォイス」ですね(笑)。

 3曲目A Woman Left Lonely、ダン・ペンとスプーナー・オールダムのバラード、ずっと気持ちを張り詰め続けるのは大変なのかな、アルバムでいちばん落ち着いた大人しい曲。
 しっとりと歌おうとはしつつも、ジャニスはやはり感情的に歌っていきますが、この曲はソウルだといわれればそうかもしれません。


 4曲目Half Moon、軽快にホップしスウィングするカントリー調の曲。
 アルバムでいちばんのりがよくて体が自然と動く曲で、アルバムの流れに変化をつける点でも効果的な曲。
 これは歌人間の僕には珍しく(笑)、ギターやベースなど演奏部分により強く反応しました。

 5曲目Buried Alive In The Blues、ジャニスが後にヴォーカルを入れる予定だったインストゥルメンタル曲。
 彼女ならどんな歌メロを入れて叫んだのだろう。
 「生きながらブルースに葬られて」という曲をこの時期に録音していたと聞くだけでも悲しいですが、曲はむしろ底抜けに明るく楽しい曲、そうですよね、ユーモアだったんだから。
 歌がないことでバンドメンバーのジャニスへの愛情をより強く感じます。


 6曲目My Baby、「一発芸」の典型というか、Aメロで大人しくしていて、サビで大爆発、そのサビがとても素晴らしいという曲。

 彼女にはワルツの朗々とした曲が似合いますね。


 7曲目Me And Bobby McGee、ジャニス唯一のNo.1ヒット曲で元はクリス・クリストファソンの曲。
 この曲のサビではこう歌っています。

 「自由ってつまりは何も失うものがないってことなのよ」

 60年代後半から「自由」を謳歌する曲が増えましたが、でも、僕は、この曲を聴いて、「自由」って結局は誰にも分からなかったじゃないかな、と思ったりもしました。
 アメリカ音楽のよいエッセンスを凝縮してポップに楽しく聴かせてくれる曲。
 最後にリズムがジャズっぽくなって全体が弾けるところを天真爛漫に歌うジャニスには音楽的な勘の良さを感じます。
 最後の最後、まるで弦を擦るようなギターの音が起こって、半ば強制終了的に曲が終わるエンディングも見事。
 この曲は車で聴くとまた感動的、旅情を誘います。

 僕には特に大切な70年代の曲のひとつです。

 8曲目Mercedes Benz、デモだと思うのですが、ジャニスがアカペラで歌ってこんな曲をやりたいよってバンドに聴かせたんじゃないかな。
 和やかで明るく楽しいその場の雰囲気が伝わってきて、この曲はこのまま出たのがよかったと思い、演奏を加えなかった判断に拍手を送りたいです。
 歌っていくとテンポが速くなってずれていくのがまた楽しい。

 友達はポルシェに乗ってるから私はベンツが欲しいというまことに他愛のない曲だけど、ジャニスが歌うと許せてしまう。

 しかしブックレットを見ると、この曲は彼女の死のわずか3日前に録音されていることが分かって、あらためて、それはあまりにも突然訪れたことに驚かざるを得ません。

 9曲目Trust Me、ボビー・ウーマックの曲で彼自身もアコースティック・ギターで客演していますが、だからか、ギターの音が強調されていてきれいに響いてきます。
 愛した後に潮が引いてゆくような虚しさを感じる曲。
 前の曲とはあまりにも世界観が違うけど、それらすべてがジャニスという人となりだったのでしょうね。


 10曲目Get It While You Can、いよいよ最後ですね。

 このアルバムの曲名はみな人生訓のようですね。

 まあ歌というのはそういうものかもしれないけど、とりわけこのアルバムはそう感じます。
 「愛は生きているうちに」という邦題がつけられましたが、それは、当時のレコード会社の担当者の気持ちでしょうか。
 アルバムの最後は、彼女の明るいキャラクターからすると、気持ちしんみりしすぎかな、寂しくなってしまう曲。
 でもそれも、彼女の周りで携わってきた人たちの素直な思いなのかもしれません。


 

 このアルバムはほんとうに大好きで、時々思い出したようにむしょうに聴きたくなります。

 今日がそれでした、今朝のこと。

 山でエゾリスを見て写真を撮った後でなぜかMove Overが浮かんできました。

 歌詞を考えてもまったく何の関連もないのだけど、でも思い出してしまったのだからしょうがない(笑)。

 そのまま2曲目Cry Babyを口ずさみ、勢いで記事にしました。


 僕にはほんとうに大切な1枚です。

 僕は6月生まれで誕生石がパールだし、地元にある大好きな洋菓子店の名前がパール・モンドールだし(笑)。



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