ロシア製の地対空ミサイル「S400」の導入問題で米国と対立するトルコが、今度はEUの反対を押し切り、キプロス沖合の地中海東部で天然ガス田掘削に踏み切った。これにより、欧州連合(EU)との間で新たな火種を抱えた。
問題の根源にはキプロス島の南北分裂がある。ギリシャ系とトルコ系住民が住む同島は1974年にトルコ軍が一部を占領。島北部の北キプロス・トルコ共和国は、トルコだけが国家承認した。一方でトルコはキプロスを認めず、EEZの44%が自国領と主張している。
EUがガス田開発を巡って警戒するのは、S400の導入問題と同様に、トルコとロシアの接近が背景にあるためだ。
ウクライナ問題でロシアと緊張関係にあるEUは、エネルギー面でのロシア依存を低下させたいのが本音だ。一方、トルコと確執があるエジプトなど関係国は今年1月に「東地中海ガスフォーラム」を設立した。
エジプトの経済評論家ムハンマド・アブドラウーフ氏は「エルドアン氏は国内で問題に直面すると、『外敵』をつくって強いリーダー像を演出するのが得意だ。だが、欧米との対立は経済への悪影響が大きすぎる。いずれ譲歩せざるを得ないだろう」とみている。