こんばんは。
ご覧頂きありがとうございます😊
本日も想像力と70年代クラヤミ・ホラーというテーマで
処刑軍団ザップ(1970)
(原題:I DRINK YOUR BLOOD)
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
★想像力と70年代クラヤミ・ホラーとは?
本シリーズは70年代に公開された、おどろおどろしいホラー映画を特集したもの!
60年代のカウンターカルチャーの終焉や環境汚染問題、核戦争の恐怖や校内暴力、そして政治不信などが吹き荒れていた70年代のホラーは、どこか病んだ感じがする鬱展開のホラー!
ですがエンターテイメント系ホラーとは異なり、鬱展開のホラーは観終わった後についまでも記憶の中に残るような、忘れられない作品でもあるのです…
本作では、そんな70年代に作られた暗闇系のホラー映画を特集させて頂きました🎃👻💀😆
「処刑軍団ザップ」という邦題から内容を想像すると、ザップという名称の処刑軍団が登場する作品だと考えるのが普通ですよね。
ですが本作の原題は「I DRINK YOUR BLOOD (私はあなたの血を飲む)」というものであり、ザップや処刑軍団という単語は使用されておらず、劇中にも処刑軍団ザップは登場しません
尚、そんな本作は次回ご紹介させて頂く予定の「ホラー喰っちまったダ!/やめられない、とまらない人肉バーベキュー」という邦題作品に寄せて「ホラー喰わされちまったダ!/やめられない、とまらない毒入りミートパイ」とでもつけるべき内容の作品となっているのです😆
やめられない、とまらない
毒入りミートパイ!
「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば、本作の解説は以下の通り。
…ヒョンなことから狂犬病?
いやいやいやいや。
「ひょんなこと」とは「予期しないこと」という意味ですが、本作で狂犬病になった若者たちは、それなりの理由があるのですが
そんな本作の冒頭の内容は以下の通り 。
① 本作の舞台は、かつて人口が40人しかいなかった過疎の町バレー・ヒル。
ダム建設のため、間もなく水の底に沈んでしまうバレーヒルに現在も住んでいるのは、老人の医師(ドック)と孫娘のシルヴィアと弟のピート、そしてベーカリーを経営しているミルドレッドの4人だけでした。
人口4000人→40人→4人となった
過疎の町バレー・ヒル。
② そんなバレー・ヒル近くの山中で、8人のヒッピーの男女が悪魔崇拝をしていました。彼らは一人の男性を除いて全員が流れ者であり、LSDでハイになってニワトリを殺害し、生き血を浴びて喜んでいましたが、そんな彼らの様子を木陰から覗き見ていたシルヴィアを発見し、集団で暴行してしまいます。
森の中、全裸で悪魔召喚のために
ニワトリの首を切断し
血を浴びる8人のヒッピーたち。
のぞき見をしていたシルヴィアを
追跡した全裸の男たちは
捕えた彼女に暴行を加えました!
③ 翌朝、ショック状態で森からフラフラ出て来たシルヴィアを発見したミルドレッドは、彼女をドックの元へ送り届けますが、孫娘が乱暴されている事を知ったミルドレッドは、犯人がダムの建設現場で働いている男たちではないか推察します。
酷い暴行を受けていたシルヴィア。
町に住んでいる男性は彼女の祖父だけ!
という事は犯人は、
ダムを建設している男たち!?
④ ですがその後、ミルドレッドの店にヒッピーたちや闖入した事によってシルヴィア暴行の真犯人が判明し、激怒したドックはピートを連れてヒッピーたちが占拠した空き家となったモーテルへと向かいますが、ヒッピーたちに反撃を受けたドックはLSDを吸引させられて昏倒し、祖父と姉に暴行を加えられたピートは、彼らへの復讐のために、密かに近隣に出没していた狂犬を射殺し、狂犬の血をミルドレッドの作ったミートパイに混入させてヒッピーたちに販売してしまったのです!
LSDでフラフラにされたドック。
姉と祖父を傷つけられたピートは
ヒッピーたちへの復讐を決意し
深夜、狂犬の血を採取したのです!!
さて、果たして狂犬の血が入ったミートパイを食べてしまったヒッピーたちは、一体どうなってしまったのでしょう?
それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。
祖父のカバンにあった注射器に
狂犬の血を入れたピートは
狂犬病ミートパイを作り出します。
前日の夜、ピートの祖父に暴行したのを
すっかり忘れて食事を買いに来て
毒入りミートパイを食べる事になる
能天気なヒッピーたちの明日はどっちだ!?
皆様がご覧になる楽しみを奪わないよう、これ以上詳細を書く事は差し控えさせて頂きますが、本作は1969年に起こった「シャロン・テート殺害事件」の一年後に公開された作品!
シャロン・テート殺人事件というのは、チャールズ・マンソンという男に率いられたヒッピーの集団が、女優のシャロン・テートが暮らしていた家に侵入し、彼女と友人を面白半分に惨殺したというショッキングな出来事であり、19960年代のヒッピー・ブームに止めを刺した出来事ではないかと言われています。
シャロン・テート事件の顛末については
「リブ・フリーキー ダイ・フリーキー」
という作品をご参照ください。
またシャロン事件をテーマにした作品としては
クエンティン・タランティーノ監督の
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
という名作もあります!
愛と平和の求道者だと考えられたヒッピーが、実際は麻薬漬けの頭で妄想で描いた世界を実現するために無垢の人に危害を加える狂気の集団として世間から認識された時、カウンターカルチャーが世界を席巻していた60年代の終焉が告げられ、以降ヒッピーは、世間から隔絶され世界に狂気をまき散らす存在としても語られるようになってしまったのです…
そう。
リベラルな平和思想の先に待つのは、秩序を失って暴力的になった人々が破壊と混乱を招く世界でしかないのです…
愛と平和のヒッピー・ムーブメントは
麻薬中毒、反社会、モラトリアム、
そして悪魔崇拝どのカルト化といった
負の側面も生み出していったのです…
私見ですが、ヒッピーたちのモラルなき生活の果てを描いたような本作は、我が世の春を謳歌していた60年代の若者たちに社会の厳しさを突き付けるような70年代のアメリカン・ニューシネマの魁となるような作品であり、登場する8人のヒッピーが、①降霊術を扱うネイティブ・アメリカンの男、②暴力的な黒人男性、③神秘主義者の東洋人女性、④LSD漬のダウナー系の白人少女、⑤花柄のヒッピーファッションを纏う未婚の妊婦、⑥スタイルだけがロックな白人男性、⑦フリーセックス大歓迎の白人女性、そして⑧何となく彼らについて来ていた白人男性という、全てのヒッピーのタイプを網羅するようなメンバーであり、彼等8人の死に様が、それぞれのタイプの末路を暗示しているような作品となっているのではないかと思うのですが、皆様はどう思われますでしょうか?
狂犬病となったヒッピーたちの
人生の末路は人それぞれ!
④LSD漬のダウナー系の白人少女は
助けてくれた老婆の手を無表情に切断!!
麻薬乱用はダメ。ゼッタイ。
ちなみに、ポスターの左下に
描かれている生首の主は、
⑧何となくついて来ていた白人男性。
途中で怖くなって逃げだした彼は
ヒッピーたちではなく
怒れる(狂える)群衆によって
斬首されるのです…
という訳で次回は
何喰っちまったんだい?
と言うテーマで
ホラー喰っちまったダ!
やめられない、とまらない人肉バーベキュー
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘
ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆
★おまけ★
併せて観たい日本未公開1970年代ホラー
「I EAT YOUR SKIN(1971)」
アメリカで「処刑軍団ザップ」と
同時上映だった本作は
元は1964年に作られた
「ZOMBIES」というタイトルの
未公開作品でしたが
「I DRINK YOUR BLOOD」と
同時上映するにあたり
「I EAT YOUR SKIN」
と改題したモノクロ作品なのです