GTBコンサルティング 平賀 正志(中小企業診断士) -11ページ目


新年度が始まりました。
人事異動やら、ご家庭での進学・進級など、まだまだ落ち着かない日が続いているかもしれません。しかし、世間では我々が無視できないことが粛々と進んでいます。

その一つが「助成金・補助金」というものです。
これは中小企業支援だけでなく、どんなことにでも存在します。

そして、この春の中小企業向けのそれは、どれがどれだかわからないくらい、非常に多くなっています。
我々支援者側でも十分に把握ができないほどに多いと言っても過言ではありません。日本の現政権の施策により、かなりのバラマキとなっているのではないかと思います。

もちろんそれは良いチャンスでもある(融資など頼まなくとも一時的な資金が手に入りますから)のですが、私自身としては負の側面も非常に多いと見ております。

その理由は、

1、自力での資金調達の能力・事業収益力見極めの能力が損なわれること。
つまり、日々行う事業とはある意味無関係に資金が流入してしまいます。ということは、経営者自身が、どこからどこまでは、内部留保(=事業で得た利益を貯めたもの)による投資なのか、もしくは助成金・補助金によるものなのか、を厳しく見極める必要があるのです。それをしなくては、事業の収益力を見誤るという、とても危険な状態に陥ります。ですが、私の見解としては、その収益力を正確に判断できる中小事業者の方々はそんなに多くないと思っています。ゆえに両刃の剣でもあるのです。

2、本業以外の仕事が非常に増えること。
この助成金・補助金の申請のためには、非常に多くのペーパーワークをはじめとする間接的作業(=直接利益を産まない、かつ本業とは無関係の)が多くなります。もちろん、そういう間接的作業により、自社・自店の経営や事業展開の見直しができるというメリットがあることも確かです。ですが、申請したからといって必ず助成金・補助金を受けることができるというものでもありません。大抵のそれは、非常に高い競争を掻い潜らなくてはなりませんし、そのために投入するエネルギーをもし他へ向ければ、きっと何がしかは得られるだろう・・・というくらい労力が必要です。

3、行政や実施機関の意向に大きく左右されること。
たとえ事業者側で重要な事業だとしても、そしてそのために助成や補助が欲しいと思っても、お金を出す側の意図に沿うものでなければ、助成金や補助金が下りることはありません。行政や実施機関も、彼ら側の年間計画や行動指針(これらを広い意味で「政策」と呼んで良いでしょう)に沿って、どの事業者に支援をするかを考えています。皆様のような民間事業者の方々には、もちろん自由に事業を選んで、自由にそれを展開できます。しかし、この助成金・補助金というものは、為政者が「こういう地域づくりをしたい」「こういう産業をもっと発展させたい」などという明確な意図(単なる好き嫌いや為政者個人の私腹のため?と思わざるを得ないようなものも散見されますが)があり、そこに沿わない限りにおいては、申請は通らないのです。この点を理解するかしないかが、実は申請が通る通らないの非常に大きなポイントです。

4、麻薬のように「助成金漬け」になる恐れがあること。
一度助成金への申請が通ると、もちろんお金が入ってきます。そしてそれを使って事業を行い、仮にうまくいったとしましょう。そうすると今度は、行政や支援機関の側から「申請しませんか?」と声が掛かることが出てきます。もちろん、先に1で書きました収益力の判断が正確にできる方なら、それも結構でしょう。しかし、そういう状況であっても自分の事業収支以外のところからの資金であることには変わりはありません。つまりこれは「薬」なのです。食べ物を摂って自分の血肉にしたのではない。よってこれは一時的なものであると認識しなくてはならないのですが、それができずに、もしくはもう最初から助成金・補助金を収入の一部にカウントしてしまって、それらに頼り切る経営をしてしまう方が多くいらっしゃいます。麻薬と一緒で「依存性」「常習性」があるのです。一生これに頼り切るのでしょうか?日本という国がどこまで財務健全性を維持できるのかわかりませんが、私は今のような大盤振る舞いは、続かないと思います。しかし、気が付いた時には、もう手遅れで、ご自身でしっかりと事業収益を上げていく能力を失っている、などという例を私自身たくさん見てきています。


あんまりマイナスのことばかり書いていても仕方ありませんが、助成金・補助金というものは、こういう性格を持ったものなのだということはしっかりと頭に入れておいていただきたいと思います。
その上で、なおかつ、どうしてもチャレンジしたいことがあるので申請をする、ということであれば、それは結構なことです。

当方も、京都府のとある助成事業にかなり深く関わらせていただいていますので、その経験から上記のことを書かせていただきました。ぜひ参考になさってください。


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早くも2014年も4分の1が終わりました。
あっという間だったでしょうか、それとも長く感じられましたでしょうか。
どちらであったにせよ、皆様の「こうなって欲しい」という姿に近付けていることを心から望んでおります。


さて、明日から異動、という方もたくさんいらっしゃるものと思います。
頑張って築いてきた日々の仕事や成果をあっさりと明け渡して次のところへ移るのは、なかなか大変なことですし、それは当事者の方だけでなく、その方と協力関係を作ってきた、組織の外側の利害関係者にとっても同じことです。

私もまさにその渦中におりました。
私自身は異動などありませんが(一人自営業者ですからね)、一緒にお仕事させていただいていた中小企業支援機関のご担当者の方が一度に4人も異動されることになったからです。
その中には、直近1年お世話になった方もいますし、3年もお世話になった方もいます。

1年ご一緒させていただいた方には、かなり熱烈に、
3年の方には、丁寧にかつ奥深く、
アプローチして仕事させていただき、その成果もあってリピート支援指名を多くいただきました。

これが一瞬にして無になるのです。

ですが、もう先方の組織がそう決めてしまったのです。それに倣うしかありません。
また自分の強み弱みを、そして実績を訴えかけ、一から関係構築をし直します。嘆いていても置いていかれるだけです。

ですが、きっと変わることのメリットも何がしかあるはずです。今日時点ではそれが何なのか全くわかりませんけれど、それがやってきた時にしっかりと掴み取れるように準備をすればよいのだと思います。


またこんな言葉もあります(NHKラジオ『実践ビジネス英語』テキストより)。

When one door closes, another door opens; but we often look so long and so regretfully upon the closed door that we do not see the one which has opened for us.

Alexander Graham Bell
(US inventor)

「一つの扉が閉じて、別の扉が開く。しかし、しばしば我々は閉じてしまった扉をずっと、そして残念そうに見つめてしまい、新たに開いている扉を見ようとしない」

グラハム・ベル(電話の発明者)


まさにその通りでしょう。
閉じてしまって二度と元に戻らないものにしがみつくよりも、新たに開いた扉から見える世界に期待をし、何か行動を起こすべきなのです。

そういう気持ちで明日から、新しい年度を過ごしたいものです。
頑張っていきましょう!


ペタしてね

今月は、少し視点を大きくしてコラムを書いてみようと思います。
最後までお付き合いください。



「デフレ」について、です。

「デフレ脱却」と、どこぞの首相が声高に叫び続けていますが、

私は到底無理だと思っております。

 

以下、理由を述べていきたいと思います。

 



 

今は、モノが溢れています。

 

ということは、売りたければ沢山の競合の中から選んでもらわねばなりません。

 

では、どうやって他との差を付けましょうか?


果たして、目に見えてハッキリわかるほどの差があなたの製品にあるでしょうか?

高性能であったり、品質が優れていたり、と差は確かに存在します。



しかし「他と決定的に異なる」とまで言えるようなものでしょうか?

きっと違うと思います。


そうでなければ、あなた自身がモノを買う時に何を物差しにして買いますか?

 

きっと「価格」ではないでしょうか。

 


そして、確実に「より安いモノ」を求めているはずです。

だってコストダウンになるのですから。



これがモノ不足の世の中だったら、話は別です。

 

より良いモノを得るために、高いお金を出さないと手に入らないということなので。

 

しかし、今やそんなことは起こり得ない。


日本国内でモノ不足だったら、どこかしらからすぐにそのモノが輸入されます。

 そして、輸入モノは大抵日本国内で生産されたものよりも安いです。  


理由は、生産コスト、特に加工費=人件費が安いから。


(この点で、ユニクロの柳井氏が唱えていることは正しいです。

「民族や国籍に関係なく同一レベルの労働は同一賃金であるべき」

と彼は言っていますが…日本は単純作業であっても賃金が世界でも有数の高さ

…それでいて、その賃金では日本は生活が成り立たないと誰もが思っている

…給与が落ち着かない

そして、ますます輸入モノに市場を奪われていく、という悪循環)


で、安かったら、日本産だろうが外国産だろうが気にはしないでしょう、

口に入れるものでもない限りにおいては。

いや、食料品の大半ですら、日本は輸入しております。


こんな状態でインフレになるはずもありません。


(それでもインフレになる、インフレに持っていける、という方がいらしたら是非
ご意見ください)



こういう時代において、中小事業者の経営者様には、非常に苦しいにもかかわらず
逃れられないことが待ち受けています。
それは

「従業員の方々が頑張って働いてくれても、給料という形で報いることができない」

ということです。

どこぞの政府は「賃上げせよ」と失政のつけ(公共財・サービスの無駄な価格上昇)
を企業に回そうとしていますが、今の日本で賃上げは無理です。

先に書きました通り、コストは下けられてしまうものだからです。
人件費もコストである以上、簡単に上げるわけにはいきません。
上げてしまうと、事業所の経営が苦しくなります。
事業所の経営が悪化すれば、従業員の方々の雇用自体を保つのが困難に
なっていきます。

では、従業員の方々はどうするか?
生活防衛のために貯蓄をし、日常の出費額を抑えようとするはずです。
そうなると、ますます安いモノを市場に求めます。
で、市場は安いモノでなければ売れないので、さらに安く仕入れるようにする。

・・・そういうサイクルなのです。それが現代日本の置かれた姿です。
これが「デフレ脱却」は無理、と申し上げる理由です。
論拠というには拙いですが、人口が大幅に減る、世界全体でモノ不足になるくらい
の干ばつやその他問題が起こることでもなければ、日本でインフレにはもう
ならないと思います。



残念ですが、これに対してコンサルタントの出来ることは多くありません。
出来ることは、そういう世相であっても頑張って生き残ろう、自分達なりの
価値観を作って生きていこうとなさる方々のお手伝い、くらいのものです。

私自身、コンサルタントを生業としていて、業界全体が繁栄するなどと思った
ことはありません。自分達もまたデフレに巻き込まれて、耐え切れなければ
廃業するまででしょう。
そうならないようにするには・・・あえて詳しく書きませんが、まあ一つ一つの
仕事を丁寧にすることが大切だと思っておりますし、実際そうしています。


ですが、どれだけ苦しくても生き残っていかなくてはならないのです。
そういう気持ちをお持ちの方で、手を貸して欲しいと思われる場合は、
ぜひご連絡ください。一緒に頑張りましょう。


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