新年度が始まりました。
人事異動やら、ご家庭での進学・進級など、まだまだ落ち着かない日が続いているかもしれません。しかし、世間では我々が無視できないことが粛々と進んでいます。
その一つが「助成金・補助金」というものです。
これは中小企業支援だけでなく、どんなことにでも存在します。
そして、この春の中小企業向けのそれは、どれがどれだかわからないくらい、非常に多くなっています。
我々支援者側でも十分に把握ができないほどに多いと言っても過言ではありません。日本の現政権の施策により、かなりのバラマキとなっているのではないかと思います。
もちろんそれは良いチャンスでもある(融資など頼まなくとも一時的な資金が手に入りますから)のですが、私自身としては負の側面も非常に多いと見ております。
その理由は、
1、自力での資金調達の能力・事業収益力見極めの能力が損なわれること。
つまり、日々行う事業とはある意味無関係に資金が流入してしまいます。ということは、経営者自身が、どこからどこまでは、内部留保(=事業で得た利益を貯めたもの)による投資なのか、もしくは助成金・補助金によるものなのか、を厳しく見極める必要があるのです。それをしなくては、事業の収益力を見誤るという、とても危険な状態に陥ります。ですが、私の見解としては、その収益力を正確に判断できる中小事業者の方々はそんなに多くないと思っています。ゆえに両刃の剣でもあるのです。
2、本業以外の仕事が非常に増えること。
この助成金・補助金の申請のためには、非常に多くのペーパーワークをはじめとする間接的作業(=直接利益を産まない、かつ本業とは無関係の)が多くなります。もちろん、そういう間接的作業により、自社・自店の経営や事業展開の見直しができるというメリットがあることも確かです。ですが、申請したからといって必ず助成金・補助金を受けることができるというものでもありません。大抵のそれは、非常に高い競争を掻い潜らなくてはなりませんし、そのために投入するエネルギーをもし他へ向ければ、きっと何がしかは得られるだろう・・・というくらい労力が必要です。
3、行政や実施機関の意向に大きく左右されること。
たとえ事業者側で重要な事業だとしても、そしてそのために助成や補助が欲しいと思っても、お金を出す側の意図に沿うものでなければ、助成金や補助金が下りることはありません。行政や実施機関も、彼ら側の年間計画や行動指針(これらを広い意味で「政策」と呼んで良いでしょう)に沿って、どの事業者に支援をするかを考えています。皆様のような民間事業者の方々には、もちろん自由に事業を選んで、自由にそれを展開できます。しかし、この助成金・補助金というものは、為政者が「こういう地域づくりをしたい」「こういう産業をもっと発展させたい」などという明確な意図(単なる好き嫌いや為政者個人の私腹のため?と思わざるを得ないようなものも散見されますが)があり、そこに沿わない限りにおいては、申請は通らないのです。この点を理解するかしないかが、実は申請が通る通らないの非常に大きなポイントです。
4、麻薬のように「助成金漬け」になる恐れがあること。
一度助成金への申請が通ると、もちろんお金が入ってきます。そしてそれを使って事業を行い、仮にうまくいったとしましょう。そうすると今度は、行政や支援機関の側から「申請しませんか?」と声が掛かることが出てきます。もちろん、先に1で書きました収益力の判断が正確にできる方なら、それも結構でしょう。しかし、そういう状況であっても自分の事業収支以外のところからの資金であることには変わりはありません。つまりこれは「薬」なのです。食べ物を摂って自分の血肉にしたのではない。よってこれは一時的なものであると認識しなくてはならないのですが、それができずに、もしくはもう最初から助成金・補助金を収入の一部にカウントしてしまって、それらに頼り切る経営をしてしまう方が多くいらっしゃいます。麻薬と一緒で「依存性」「常習性」があるのです。一生これに頼り切るのでしょうか?日本という国がどこまで財務健全性を維持できるのかわかりませんが、私は今のような大盤振る舞いは、続かないと思います。しかし、気が付いた時には、もう手遅れで、ご自身でしっかりと事業収益を上げていく能力を失っている、などという例を私自身たくさん見てきています。
あんまりマイナスのことばかり書いていても仕方ありませんが、助成金・補助金というものは、こういう性格を持ったものなのだということはしっかりと頭に入れておいていただきたいと思います。
その上で、なおかつ、どうしてもチャレンジしたいことがあるので申請をする、ということであれば、それは結構なことです。
当方も、京都府のとある助成事業にかなり深く関わらせていただいていますので、その経験から上記のことを書かせていただきました。ぜひ参考になさってください。
